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Don't touch it
美術館の監視員。時給が異様に高かったので、志望動機はテンプレのまま、アプリの『応募する』ボタンをタッチした。まさか応募が通るとは思ってもいなかった。履歴書が不要なのは嬉しいが、スーツが必要とのことだったので、急いでスーツを用意した。
7月某日の早朝、コボナウイルスとやらで外出自粛が叫ばれ、休日の日中だというのに人通りは少ない。梅雨がまだ続き、蒸し蒸しする暑さが、容赦なくスーツの体に襲いくる。人目
呼吸で生を確かめながら
兄貴が東京の国立大学へ行った頃だっただろうか。酒に恐ろしく強い親父が泥酔し、えらく感情的になっている夜があった。酷く泣いていた夜があった。原因は覚えていないが、私のせいだったような気がする。私が兄貴とは違って成績悪く、パソコンやゲームばかりしていたからだろう。親父は説教すると共に、昔話を始めた……もう内容はほとんど覚えていないが、私の生まれたときの話をしていたのだけは、はっきりと覚えている。
生