マガジンのカバー画像

創作物(詩)

25
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】詩篇2023

 2023年に書いた詩群。
 音楽ジャンルで言えばグラインドコアか?

「入会」
「公園」
「人格排除センター長はずるい」
「足の裏に」
「愛妻家」
「橋が落ちた」
「時計」
「応じても仕方のないピンポン芸を許すのは一心同体」

  入会

ハイエナに食わせる虫たちを両手いっぱいかき集めている若い女の腕を洗っているのは
蛇口の横でいつも水筒に口をつけている
囚人かつ夫人である友人 受け答えだけはわ

もっとみる

【詩】詩篇2022

 2022年に書いた詩群。

 「子らしき音」
 「出発」
 「月」
 「口裏」
 「残響炎」
 「田舎」
 「時間短縮」
 「洞穴」
 「人魚」
 「俺の分身が隣でむごく殺されるのを見せつけられるだけの人生を面白がって生きているだけの分身であるところの俺の隣でむごく殺されていくのを見せつけてくる分身の退屈そうな人生」
 「農舎」
 「事故詩」
 「恋」

  子らしき音


子の声を聞きつける

もっとみる

【詩】鉢

  鉢

金魚を監禁していることが
人生の楽しみのすべてのような
顔を晒して路上を歩く
通りすがりの小人たちが
車椅子の上を飛び跳ねながら
面白おかしく蹂躙している、
老体を

小綺麗な広告産業からつまみ出されて食うに困って
やむを得ず金魚を貪っている
好きな数字が「1888」であるような顔を
晒して路上を歩いている
シワにまみれた小人たちが
三輪車を捨てて車椅子に
乗り換えながら蹂躙している、

もっとみる

【詩】塩夏

  塩を揉み込んだ夏の日差しが
  勃起しながら遍在するのを
  黙って見過ごそう

干からびている湯船の底へと
次亜塩素酸ナトリウム
したたらせているチューブの先で
夏の気配が淀んでいる

 裸の背中をマッチで炙って
 太陽の下 さらし者にして
 火傷が日焼けに覆われ陵辱
 されるがままにまかせよう

見知らぬ誰かとサウナでおしゃべり
している気分を味わうつもりで
火事場で拾ったカセットテープを

もっとみる

【詩】廃屋

  廃屋

盛大に発表されていく廃屋の数を水増しするための年月が
まるで歴史的な日々のように
生存圏を通過する

まるで
情緒であるかのような
廃れ具合の多数性

年月が
真新しい廃屋の奥の
ゴキブリ捕りを腐らせようと
ささやかな善意を振りまいている

新しい自由

新しい害虫

個性豊かな国民たちに
あてがうための廃屋以外
歴史の重みを語るものなど何一つない
新しい国

【詩】日向

  日向

灰色のカーテンの向こう側には窓などないと誰もが薄々気づいている密室で
通気口が
夕方の外気を
陽光がわりに差し入れる

風通しの良すぎる密室

自分のことを広大な空だと思い込んでいる天井

「歩行者」たちは
誰にも見せたことのない美しい靴底を
まるで大地であるかのような
床にへばりつけている

饒舌な外気

せめてもの夕方らしさ

まがい物の陽光は
灰色に染まることを
何もかもに強いて

もっとみる

【詩】気候

  気候

よしんば人々を粉々にしていたからといって
俺が善良であることに変わりはない
わ行をうつむきながら復唱している釣り人から
せしめとった金で買ったゴム底の郵便船を
画鋲で穴だらけにしてから水に浮かべて客を呼んだからといって
少しも傷つかないことの最たるものこそが
この俺の善良さ
砂を弾いていく蜘蛛の踏みにじってきたむき出しのアスファルトを
思いながら踏みにじっていく俺の靴底の蜘蛛たちが

もっとみる

【詩】死ね

 1
汗水たらして働いたかいがあって立派な棺桶を買えたらしく
隣人が
良い気分で死んでいる
私のような良い隣人に恵まれたことを
感謝しても良いでしょう、と
胡散臭い口を広げて
吐き出した日々を思い出す
まるで「生前」であるかのような「思い出」であるかのような
遺書のような詩情を漂わせている隣人の棺桶に
蹂躙されてきた何者かの覗き趣味を正当化してくれそうな
花のような穴を
あげるかのように
空けよう

もっとみる

【詩】発作権

  発作権

頻繁であることを誇っている発作者を
指でつつきつくしてやる

時代に遅れることにかけては
ほかの追従を許さない
平凡極まるきりきり舞いを
まるで飼い犬踊りのように
夜中の市民社会で踊って
面白がられても
面白がられても
まだ足りないと見える、この盲者

「蛆虫の搾りたてた姿をさらされ
 空間たちが迷惑している
 蛆虫の後ろを殴って
 なおも恥じずに居座られて
 空間たちがあきれている

もっとみる

【詩】破水

  破水

知らない乞食が垂らした洟を
すくいあげまいと拒んでみろよ
少女の群れが巣に戻れずに
道にたむろする羽目になる

よお汚い涙を恥ずかしげもなく流しっぱなしで消えようとする厚化粧したガキみたいな真似をしてみろよ
もう他人じゃない乞食の良心次第でいつでも足止めさせて恩を着せてやろう

死なせたくなる
魅力をたたえた
顔をいくつでも
飲み込んでくれる
海のように深い
粘液を
すくいあげまいと拒

もっとみる

【詩】牛

  牛

 おう 放火魔が漏らした小便 破水に似ている 液漏れした乾電池に降り注げば どこからどこまで体液なのか 分からなくなってくれそうな 段取りの悪い排泄者の 苦し紛れの殺虫ごっこに ライターの火を近づけるのが 善意
 放火 犯行予告が好きなラジオを 乳頭に押し当てている 牛のような女の脳漿 体液に似た味がしている 堕ろされて間もない 経血
 将来、兵士になるはずだった精子が、コンクリートの隙

もっとみる

【詩】傘

  傘

日傘は揺れながら泳ぎ方を覚えようと
水浸しの空を恥ずかしげもなく揺れながら
泳いでいる 泳ぎ疲れる踊りの友を待たせながら
踊る
ふりかかる日の粉のような干しざおの隙間のような
面影をたたえながら友人のふりをしているような
空たちの涙さらいに踊りを 踊りを
踊りを 踊りを
見せつけながら
泳いでいる 内向きに
泳いでいる 日傘は 恥知らずにも
踊る そして 泳いでいる
泳ぎ方を覚えようとし

もっとみる