寂羅漢

非/精神分析医。 人智の限界について、吟味しつつ生きる日々。 傍ら、筋力トレーニング…

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非/精神分析医。 人智の限界について、吟味しつつ生きる日々。 傍ら、筋力トレーニング歴は20年以上。 全国大会での入賞経験もあり。 エビデンスに基づいた、ベーシックかつ効果的なトレーニングを紹介。 誰でも、強くなれる。 強くなったその先に、ほんとうの弱さはある。

記事一覧

適切な疲労管理の第1歩!上手なトレーニングボリュームの増やし方、そして減らし方

筋力トレーニングの基本原理の一つに、「トレーニングの成果はボリュームに比例する」というものがあります。 基本的に、トレーニングは「たくさんやるほど効果が大きい」…

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6日前

ゴムバンド、チェーンを使用した「可変負荷トレーニング」は筋力向上にどれだけ有効か?~比較実験を手がかりにして~

バーベル種目の1RM、つまりMax重量を伸ばすための手法の一つに「可変負荷トレーニング」というものがあります。 英語では「Accommodate Resistance Training」といい、パ…

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2週間前
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ジャンプ力が上がるのはどっち?~カウンタームーブメントジャンプとドロップジャンプの比較実験から考える~

バスケやバレーなど、到達点の高さが求められる競技では、ジャンプ力は必須の能力です。 そのジャンプ力を向上させるにはどのような練習が最適か、ヒントになりそうな研究…

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3週間前

「ヘックスバー」は「バーベル」デッドリフトの上位互換か?~被験者内クロスオーバー実験から考える~

バーベルの基本的なエクササイズの一つに、デッドリフトがあります。 動作自体はとても単純です。 床に置いたバーベルを、持って立ち上がるだけ。 おそらくバーベルが発…

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1か月前

初・中級者向け 週2日/3週間 筋力プログラム「羅漢プロトコル」とは ~中上級者以上にも拡張できるよ~

この記事では海外の有名プログラムの紹介ではなく、わたくし「寂羅漢」の提案する筋力トレーニングプログラムの解説です。 自分のような競技レベルの者が「オリジナル」を…

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1か月前

筋力強化プログラムの大定番!~中級者向けCandito 6week Strength Programとは何か~

今回の記事も筋力トレーニングのプログラムについての紹介です。 今回は、Jonnie Canditoという方が考案した、6週間のプログラムです。 「ストレングス」とあるので筋力強…

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2か月前
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海外のトレーニング界隈で話題の「GZCLメソッド」とは?~巨大な「ピラミッド」を築くためのトレーニング法~

最近、GZCLという新しいトレーニングメソッドについて耳にすることが増えました。 といっても、国内ではまださほど話題になっていないようですが…… 今回は、それについ…

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2か月前

筋トレの素朴な疑問:「自重トレ」でマッチョになれますか? ~できること、できないこと、ハッキリ言います~

時々、こんな質問を受けます。 理由があってどうしてもジムには行きたくないのですが、自重トレーニングだけでマッチョになれますか? と。 筋トレ人気が高まり、いろん…

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寂羅漢
2か月前
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「筋肉増強外来」はいったい何を治してくれるのか?~ドーピングと医療行為の違いについて考える~

自分自身の、競技における「ドーピング」に対する基本的な考え方は、以前の記事で書きました。 ところが、最近では一部の病院で「筋肉増強外来」という部門が人気だと聞き…

寂羅漢
3か月前
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なぜトップ選手の練習を真似てはダメなのか?~トレーニング科学の考え方について学ぼう~

競技スポーツが「競争」である以上、必ず生まれるのが「勝者」と「敗者」です。 もちろん、人生を豊かにするための趣味として、他者との競争を志向せず、競技スポーツに取…

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3か月前
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10回3セットは本当に筋トレの最適解なのか?~比較実験から考察する~

筋トレ界の王道、というかまず初心者ならここから始めろ! と言われる10回3セット。 じつは、明確な根拠のない数字だったりします。 ただ、一応それなりにメリットも考え…

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3か月前
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なぜ世の中は思ったように「良く」ならないのか?~大谷翔平選手の慈善活動から思う事~

少し前に、メジャーリーガーの大谷選手が、日本の小学校にグローブを寄贈した、というニュースがありました。 全国の小学校全てに3つずつ配ったといいますから、それはも…

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3か月前
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大天才の「無知」⁉をどう考えるか~イチロー氏の指導について思うこと~

球界を引退後、日本の高校生の指導に力を入れているイチロー氏。 言わずと知れた、日本はおろかアメリカの球界史上にも燦然と輝く、正真正銘のレジェンドです。 最近また…

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3か月前
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CATなら、軽い負荷でもベンチプレスが強くなる!~スピードを制する者はパワーを制す~

強さってなんだろう筋力トレーニングをする人は、みな「強さ」を求めて日々努力していることでしょう。 でも、力の「強さ」を表す指標が2つあることはご存じでしょうか。 …

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3か月前
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スクワットとレッグプレス、優秀なのはどっち?~比較実験から考える~

マシンとフリーウェイト、どちらを行うべきか?というのは筋トレ界では定番のトピックです。 それぞれに特徴と利点があり、またデメリットも存在します。 従来から言われ…

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4か月前
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誰もが信じていた1RM推定がちょっといい加減だった件について~最新の研究によると~

今回、ネットで大人気のアンチエイジングブログの記事を受けて書きます。 ご存知の方も多いでしょう。 また筋トレをしているあなたなら、推定1RMという概念もご存じだと思…

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4か月前
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適切な疲労管理の第1歩!上手なトレーニングボリュームの増やし方、そして減らし方

適切な疲労管理の第1歩!上手なトレーニングボリュームの増やし方、そして減らし方

筋力トレーニングの基本原理の一つに、「トレーニングの成果はボリュームに比例する」というものがあります。

基本的に、トレーニングは「たくさんやるほど効果が大きい」ことが、近年のトレーニング科学の研究から分かっています。

この原理は、筋肥大においては特によくあてはまります。

1回よりは2回。
1セットよりは2セット。
週1日よりは2日。

できるだけ多くトレーニングした方が、得られる成果は大きい

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ゴムバンド、チェーンを使用した「可変負荷トレーニング」は筋力向上にどれだけ有効か?~比較実験を手がかりにして~

ゴムバンド、チェーンを使用した「可変負荷トレーニング」は筋力向上にどれだけ有効か?~比較実験を手がかりにして~

バーベル種目の1RM、つまりMax重量を伸ばすための手法の一つに「可変負荷トレーニング」というものがあります。

英語では「Accommodate Resistance Training」といい、パワーリフティングなどの分野では割と浸透している方法です。

簡単にいうと、バーベルに「ゴムバンド」や「鎖」を付加して挙上するトレーニング法です。

こんなスタイルのトレーニングですね。

私の記事でも、

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ジャンプ力が上がるのはどっち?~カウンタームーブメントジャンプとドロップジャンプの比較実験から考える~

ジャンプ力が上がるのはどっち?~カウンタームーブメントジャンプとドロップジャンプの比較実験から考える~

バスケやバレーなど、到達点の高さが求められる競技では、ジャンプ力は必須の能力です。

そのジャンプ力を向上させるにはどのような練習が最適か、ヒントになりそうな研究があったので紹介します。
2020年の研究です。

ひとことで言うと、

カウンタームーブメント ジャンプ(Counter Movement Jump)
ドロップ ジャンプ(Drop Jump)

を比較したものです。

カウンタームーブ

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「ヘックスバー」は「バーベル」デッドリフトの上位互換か?~被験者内クロスオーバー実験から考える~

「ヘックスバー」は「バーベル」デッドリフトの上位互換か?~被験者内クロスオーバー実験から考える~

バーベルの基本的なエクササイズの一つに、デッドリフトがあります。

動作自体はとても単純です。
床に置いたバーベルを、持って立ち上がるだけ。

おそらくバーベルが発明された頃(19世紀だと言われます)から存在するだろう、非常に基礎的な種目です。

スクワット、ベンチプレスと併せていわゆるBIG3と呼ばれる基本種目の1つであり、これ自体がそのままパワーリフティングという競技にもなっています。

代表

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初・中級者向け 週2日/3週間 筋力プログラム「羅漢プロトコル」とは ~中上級者以上にも拡張できるよ~

初・中級者向け 週2日/3週間 筋力プログラム「羅漢プロトコル」とは ~中上級者以上にも拡張できるよ~

この記事では海外の有名プログラムの紹介ではなく、わたくし「寂羅漢」の提案する筋力トレーニングプログラムの解説です。

自分のような競技レベルの者が「オリジナル」を標榜するのは、いささかおこがましいのですが……
ただ、プログラムそのもの優秀さにはかなり自信があります。

基本的に、遺伝的才能に優れた人ほど、プログラムはあまり必要ないか、あってもシンプルなもので済む傾向にあります。

その人自身が持っ

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筋力強化プログラムの大定番!~中級者向けCandito 6week Strength Programとは何か~

筋力強化プログラムの大定番!~中級者向けCandito 6week Strength Programとは何か~

今回の記事も筋力トレーニングのプログラムについての紹介です。
今回は、Jonnie Canditoという方が考案した、6週間のプログラムです。
「ストレングス」とあるので筋力強化、特にBig3の重量を伸ばしたい方向けのプログラムです。

ご本人は、パワーリフティングの83㎏級でトータル760㎏の記録を持っているとか。

トータルで750を超えるというと、だいたい

スクワット250㎏
ベンチプレス

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海外のトレーニング界隈で話題の「GZCLメソッド」とは?~巨大な「ピラミッド」を築くためのトレーニング法~

海外のトレーニング界隈で話題の「GZCLメソッド」とは?~巨大な「ピラミッド」を築くためのトレーニング法~

最近、GZCLという新しいトレーニングメソッドについて耳にすることが増えました。
といっても、国内ではまださほど話題になっていないようですが……

今回は、それについての紹介記事です。

まず、このメソッドというか考え方の生みの親についてです。
Cody Lefeverという方が考案しました。

GZCLのCLはこの方のイニシャルですね。
GZは、うーん、なんでしょうかね……

ちなみに、ご本人に

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筋トレの素朴な疑問:「自重トレ」でマッチョになれますか? ~できること、できないこと、ハッキリ言います~

筋トレの素朴な疑問:「自重トレ」でマッチョになれますか? ~できること、できないこと、ハッキリ言います~

時々、こんな質問を受けます。

理由があってどうしてもジムには行きたくないのですが、自重トレーニングだけでマッチョになれますか?

と。

筋トレ人気が高まり、いろんなタイプのジムが増えている昨今。
思い切って、どこかのジムに入ってしまった方がいいですよ、とは思うものの。

こういった考えの人も、一定数いるのは事実。
気持ちも分からないではありません。

最初に結論めいたことを言ってしまうと

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「筋肉増強外来」はいったい何を治してくれるのか?~ドーピングと医療行為の違いについて考える~

「筋肉増強外来」はいったい何を治してくれるのか?~ドーピングと医療行為の違いについて考える~

自分自身の、競技における「ドーピング」に対する基本的な考え方は、以前の記事で書きました。

ところが、最近では一部の病院で「筋肉増強外来」という部門が人気だと聞き、こうして新たな記事を書いています。

具体的な病院名についてはここでは触れません。
気になる方は検索エンジンで調べてみてください。

あるいは、こんな動画もあります。

ひとことでいってしまうと、その病院では、医療行為として「ドーピング

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なぜトップ選手の練習を真似てはダメなのか?~トレーニング科学の考え方について学ぼう~

なぜトップ選手の練習を真似てはダメなのか?~トレーニング科学の考え方について学ぼう~

競技スポーツが「競争」である以上、必ず生まれるのが「勝者」と「敗者」です。

もちろん、人生を豊かにするための趣味として、他者との競争を志向せず、競技スポーツに取り組んでいる人もいるでしょう。

しかし、プロであれアマチュアであれ、どんなレベルにおいても、それが競技である以上は、結果として勝者と敗者が生まれます。

たとえ一切経験のない初心者同士であっても、試合形式で競技を行えば、何らかの勝ち負け

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10回3セットは本当に筋トレの最適解なのか?~比較実験から考察する~

10回3セットは本当に筋トレの最適解なのか?~比較実験から考察する~

筋トレ界の王道、というかまず初心者ならここから始めろ!
と言われる10回3セット。

じつは、明確な根拠のない数字だったりします。

ただ、一応それなりにメリットも考えられます。

それほど高重量ではないので、フォームに多少不安があってもケガをしにくい

そこそこボリュームを稼げる

キリがいい、分かりやすい

などでしょうか。

別に確たる根拠があるわけじゃないけど、まあ無難かつ便利で覚えやすい

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なぜ世の中は思ったように「良く」ならないのか?~大谷翔平選手の慈善活動から思う事~

なぜ世の中は思ったように「良く」ならないのか?~大谷翔平選手の慈善活動から思う事~

少し前に、メジャーリーガーの大谷選手が、日本の小学校にグローブを寄贈した、というニュースがありました。

全国の小学校全てに3つずつ配ったといいますから、それはもう大変な数を用意したのでしょう。
「大谷さんありがとう!」と、日本全国のみんなが思ったに違いありません。

ただ、自分にはちょっとだけ思うところがありました。

もちろん今回の件が、大谷選手の「野球を普及させたい」という、純粋な善意から出

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大天才の「無知」⁉をどう考えるか~イチロー氏の指導について思うこと~

大天才の「無知」⁉をどう考えるか~イチロー氏の指導について思うこと~

球界を引退後、日本の高校生の指導に力を入れているイチロー氏。
言わずと知れた、日本はおろかアメリカの球界史上にも燦然と輝く、正真正銘のレジェンドです。

最近また、TVでイチロー氏の活動が特集されたようです。

ところが、その際に流れた高校生への指導について、トレーニング界隈では様々な賛否が寄せられているようです。

この記事では、そのことについて書きたいと思います。

https://twitt

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CATなら、軽い負荷でもベンチプレスが強くなる!~スピードを制する者はパワーを制す~

CATなら、軽い負荷でもベンチプレスが強くなる!~スピードを制する者はパワーを制す~

強さってなんだろう筋力トレーニングをする人は、みな「強さ」を求めて日々努力していることでしょう。
でも、力の「強さ」を表す指標が2つあることはご存じでしょうか。

それは、

ストレングス

パワー

の2つです。

ストレングス(Strength)とは、最大筋力のことです。
単純にいうと、1RMの重量だと思ってください。

たとえば、あなたはベンチプレスで何㎏挙げられるでしょうか。
その最大重量

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スクワットとレッグプレス、優秀なのはどっち?~比較実験から考える~

スクワットとレッグプレス、優秀なのはどっち?~比較実験から考える~

マシンとフリーウェイト、どちらを行うべきか?というのは筋トレ界では定番のトピックです。

それぞれに特徴と利点があり、またデメリットも存在します。

従来から言われているのは、次のような評価でしょうか。

フリーウェイト

(コンパウンド種目の場合)マシンよりもたくさんの筋肉を動員しやすい。
しかし、フォーム習得に時間と手間がかかり、またケガのリスクもそれなりにある。

マシン

ターゲットとなる

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誰もが信じていた1RM推定がちょっといい加減だった件について~最新の研究によると~

誰もが信じていた1RM推定がちょっといい加減だった件について~最新の研究によると~

今回、ネットで大人気のアンチエイジングブログの記事を受けて書きます。
ご存知の方も多いでしょう。

また筋トレをしているあなたなら、推定1RMという概念もご存じだと思います。

RMというのはRepetition Maximumの略で、「最大反復」という意味です。
だから1RMとは1回の最大反復ということで、要はMax重量です。

これを直接計測するのは大変だし怪我のリスクもあるし、ということで、

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