嫌なこと、相性の悪い人、過ぎた出来事、失敗、自分の欠点、それらと向き合うことはもちろん必要でもあるけれど、でも。 一日を、それだけに支配されているのはもったいない。もっと建設的なことがあるはず。 決して難しいことでなく、シンプルななにかが。

そこで、思いついたのが、「好きなことを並べたてる」こと。

子どものころ、絵を描く友だちの隣で、スケッチブックに好きな「もの」や「こと」を書き、真っ白な紙を絵ではなく言葉で埋めていたことを思い出した。

そうだ、嫌なことで頭をいっぱいにしていた時間を、好きなことで塗り替えよう。だって本当に、この世界には、好きな「もの」や「こと」があふれているのだから。 「好き」こそ、今の私なのだ。




道端で椅子にこしかけ柴犬を抱いたまま道行く人に挨拶をするおじいちゃん。人の言葉を話す九官鳥。 次々、知恵袋を披露するおしゃべりなタクシーの運転手さん。丸襟の白いブラウス。 海の底のような色の器。 千鳥柄の店。

こんなふうに今日も、好きなあれこれについて考えたり、少し通くから眺めたり、写真に収めたり、文字に書き出したりした。

泣きたいようなことがあった日も、眠る前、その日一日出会った好きを並べたてているうちに、いつのまにか夢の中にいられるのだから、「好き」は偉大。