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夢十夜。

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子供の頃から夢を目醒めてもよく覚えていました。最近また良く夢をみる。そんな世界を。
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変。

変。

 お昼はジェノベーゼパスタを食べた。残ってたスモークサーモンもつまみながら、そのままキッチンの椅子に座り食べ始めたら、犬のいつもの足音が聞こえたから「さてはまた人間が食べているものを確認に来たな」と思い、いつも通りに足元を見たけど姿がない…。あれ?とカウンターから犬のベッドを見たら…そこには丸まって寝る犬がいた。幻聴じゃないし確かに聞いたはずなのに。犬も幽体離脱して歩き回っていたりして。それか自身

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起きる。

起きる。

 「おいで おいで こっち こっち」

 「まって まってよ わたし わたしだよ」

 ブルーグレイの毛並のかたまりが、足早に去って行く。転がるように。

 必死にスカートの裾を踏まないよう掴んで、足元に注意しながら進んでも、あのコとの距離は縮まらない。また、この鬱蒼とした森の木陰に隠れてしまう。

 何処?

 沢から土壌の匂いを含んだ小風がふわりと吹き抜ける。深緑色の壁に囲まれた天を見上げて、

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鳥肌。

鳥肌。

 (あ、また…)

 ビル街の雑踏を歩いている途中で、あの視線に気付いていた。新宿副都心線、人々が足早に行き交う騒めきの中にあっても、こちらを見ているのが分かる。
何事もないように装いながら、全神経を集中して、周囲を探る。

(居ない…消えた…)

 「それって、生霊じゃない…?」
友人のひとりに打ち明けると、彼女は開口一番に、そう言ってマグカップを指差した。
 「ほら、見て…揺れるように波紋が微

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小賢しい。

小賢しい。

 今どきブラウン管テレビか…
東大の教授の部屋、汚い、書物が重なるタワーのようで、倒れて来そう怖い。
ビクビクしていたら、
画面から、博士が言う。
この人を見なさい。
この女性は離婚をしました。
さて、キミはどう思う?

 暫しインタビューされている声に耳を傾けていた。別れた理由をはっきりと言っているようで言っていない。【悪いのは全て相手で自分は全く悪くない】という所か。
どうでもいいじゃないです

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小雨とカップ焼きそば。

小雨とカップ焼きそば。

 向かい合って座るのも、今日が最後だろう。

 そんな予感はしてた。

 「もう、こうしてふたりで会うのは終わりにしようか…」

 こうして会うに理由はないものだ。でも、会わなくなるには、理由がある。全くの皮肉。

 店内の薄い影と外の強まる光が、ふたりを隔てるテーブルに反射して、思わず眩しさに目を閉じた。慌てて、

 「そうだね…」
そう言葉にしたら、背中がズンと重くなって、そのまま頭に石が落ち

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薄れる。

薄れる。

 眠る前の意識がぼやけて薄れてゆく。

 そんな瞬間が心地良い。
自分の存在が薄く薄れる。
 いつか死を迎える瞬間も、きっと似ているんだろう。
隣りでチワワがもの言いたげに、此方を見つめている。

 夢の中では何処にでも行けるよ。
 ドラえもん、ドアは要らない。

 でも、いつも何処か、全てが淡く発光していて現実ではないのだと分かってしまう。
薄れる。
悲しみも苦しみも全てが薄れてゆく。
薄れる。

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舞台裏。

舞台裏。

 彼女に似ていると言われたことがある。

 彼女とは仕事を通じて知り合い、同じ感覚を持つ仲間だと、すぐに分かった。沢山の言葉は要らない。簡潔な最小限の言葉のやり取りで、理解して満たされてしまう。人生でそんな人に出逢う確率はあまりにない。
内面が似てるから外見も似ているのかも知れない。そんなことを思う。

「あのさ、意外と地味だねって、言われるんだけど…」

「あ、わかる、分かる〜」

人生なんて光

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同じ空の下。

同じ空の下。

 会社のある人が失踪した…

 直後に思ったのは、「悩んでいたのかな?」という事で。誰にも本心は分からないでしょ。分かろうとしていないとも言えるが。

 「自宅を見に行ってみたら、着替えを持ち出して、銀行から20万円も引き出していたらしい」
ならば、最悪な事態にはならないということか。
終わらせようとしている人間ならば、洋服だって現金だって必要ないしね。
そうだよ。そうだ。生きようとしている。

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疎覚え。

疎覚え。

 カーテンから差込む明るさに意識が戻って、ゆらゆらと反射する光の屈折を薄っすら眺めながら、体ごとくるっと回転して、すぐ隣で眠る彼に抱きついた。
まだ瞼が重い。
え?…
ファインダーを覗きピントを合わせるカメラのように、はっきりと認識出来た彼は別人だった…。思わずカートゥーンのアニメのキャラクターのように飛び退いてベッドから床に落ちた。

 昨夜は、サンダルから見えるペディキュアが剥がれてる部分を見

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ケセラセラ。

ケセラセラ。

 夢では映像よりも、先に音声が流れて来ることがある。
しかも、自分が眠る姿を脳裏に映しながら始まるパターン。うとうと微睡む幸せな時間。読書の手を止めて流れるように潜在意識下に深く深く潜り込んでひとつの浮遊物になる。このまま起きたくない〜幽体離脱〜ってこんな感じかな?

 昨夜もそうだった。
また、其れは合図でもある。
良く夢を見る時は、とにかく日中も眠くて仕方ないことが多くて、隠れては欠伸をしてし

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足掻く。

足掻く。

 手を繋いでいた。ずっと繋いでいたかった。
(真っ暗なブラックホールのようなものが目前にみえる)
このままでは吸い込まれる。
彼はその手を一層強く握りしめた。怖い…ダメだ、ダメだ、わたしは一緒には行けない…

 「ふふ、分かってるよ」と悪戯そうに振り返って笑う彼の顔をみて、緊張が緩みホッとして笑った。あれから何十年も経って、もうあの頃のわたしではない。この世で果たす義務がある。家族も居る。
「分か

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今日の日はさようなら。

今日の日はさようなら。

 「違います…」

 車から降りた瞬間に、走り寄って来たカメラマンの一斉のフラッシュと勢いに押されながら、わたしはその言葉を繰り返していた。
付き合っていた相手が、たまたま有名人だっただけで、普通の恋愛と変わりなかった。何が違うのか。
うまく彼の事務所が交渉したのか、情報が漏れる事もなかった。

 それにしても、頭痛が酷い。
 
 暫くは、静かにして居なくてはならない。
透明人間になる。というか、

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つら、ヅラと。

つら、ヅラと。

 瑠璃色の建物って、初めて見たわ。光ってるし。
こんな裏路地の住宅街に、こんな店があるなんて、
知らなかった。あれ?何で鞄なんか持ってるのかしら?こんなの右手に持ってたから、だから手が痺れてるのね。ん?左手に握ってるパンフレットは何?
「貴方にも再び青春時代を!!」態とらしい笑顔の男性がビフォーアフターの姿を晒してる。

 カツラね、男性用カツラ、ハゲでもいいんじゃないの。ハゲじゃ、ダメなんですか

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冒険。

冒険。

 だから、ベランダに出る時は洋服を着なさいって、そんなの言われなくても分かってた。慌ててたし、ほんのちょっとの瞬間だよ。どーせ誰も見てないよ、なんてね、天気も良かったし、ダダっとね、サッとね、スリップ一枚の姿で、干してある洗濯物の中から、お目当ての物を掴んだの。あ、乾いてる、良かった〜
陽射しも反射して天気も良い。
そんな時、
視線を感じて上を見たら…
あ、このマンションって、上層階がちょっと奥に

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