みき枝葉(小説・評論)

小説や評論を書きます。

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記事一覧

飛び降り短歌

墜ちていく黄色い穴は遠ざかる夜のとばりが吸いこまれてく

「こんな狂ったものをマジに取るなんてマジで狂ってんのか?」という風潮についての詩

ポリティカルコレクトネスを詰め込むだけ詰め込んだ頭でっかちは、とりあえずは重力の法則に順って一枚岩にヘッドバットかましてやれば良い。 さすれば皆、宇宙空間に放り…

火をつけた広辞苑を国会にぶん投げる

官僚による「なりすまし」です。本当にありがとうございました。 しかし、皆さん耳を疑え。 総務大臣的に、これはねつ造ではないのだ。 「統計委員長 国会に協力しない」…

人間の役

天気のいい日は電気をつけない だからいつもより暗い 元気のない日は陽気にふるまう だからいつもより明るい わたしは清廉で謙虚です 理不尽でも微笑みを絶やさず応対で…

ひっくり返ったカナブンよりも今年はひっくり返ったジーサンを見つけた数のほうが多い

 「今年の夏は、ひっくり返ったカナブン、見かけへんかったな」  道端でひっくり返っとったジーサンの腋を抱え、知らん女の人と2人で協力しながらジーサン抱え起こそう…

萌え絵をめぐり争う脳内思念体

「萌え絵が、女性そのものではなく脳内女性的思念体であり、見られる主体として理想化された、女性とはまったく違う存在なのだから、女性が自分自身の身体と同一視するのは…

平成30年台風第21号

台風でいろんなものが冗談みたいに飛んでおりました。窓ガラスの尽力により室内の平和は保たれましたが、外は悲惨。木や電柱が歪んで、フェンスがひしゃげております。関西…

彼女の話す外国語は日本語かもしれない

彼女の話す外国語は日本語かもしれない 彼女は電車の乗車口で彼氏らしき男にむかってお話してる 車輪が線路の継ぎ目で刻む歯切れのいい音 その音に遮られて彼女のお喋りは…

もうダメかもしれない

ねころんだ ねこ ねこんだ もうダメかもしれない シュレーディンガー博士は そう言った

もうダメかもしれない

ねころんだ ねこ ねこんだ もうダメかもしれない 詩人は頭を抱えて そう言った

続・巨乳を褒める

妊婦が優先座席に座っている。わたしはその前に立っている。彼女は突然わたしを見上げ、真剣な表情で鋭い視線を向けたと思ったら、それはしだけて柔らかい笑顔になった。 …

巨乳を褒める

いやなにをどう考えようとも、オッサンが女性の巨乳を褒めるというシチュエーションがわからんわ。100歩譲って、いや1000歩譲って、なんかなんでもええけどギャラリ…

感性が死んでいます

感性が死んでいます 文字の羅列の塊から目に飛こんでくる文字は文字のままで意味に変換されません 誰と話しても心ここに非ずで楽しくなく必要に応じて求められた言葉を機械…

ラジオから聞こえる漫才

ラジオから声が聞こえる。 「それでは、新鋭の漫才コンビの2人に登場していただきましょう、拍手でお出迎えください」感情を抑えた女の声。 拍手。2人の男の漫才が始まる…

ケサランパサラン

サクラのイメージがもう消えてしまった季節、白い綿毛が宙を漂うのを幼稚園の廊下で見かけた。ほかの園児たちが皆それを見て「ケサランパサランだ」とはしゃいでいたが、そ…

極論ポエム

きょうもきょうとて、極論から極論へ、行ったり来たりのアホみたいな議論があちらこちらでおこなわれています。脳内麻薬で働いてる気分に酔う自家発電を「エコだね」と時流…

飛び降り短歌

飛び降り短歌

墜ちていく黄色い穴は遠ざかる夜のとばりが吸いこまれてく

「こんな狂ったものをマジに取るなんてマジで狂ってんのか?」という風潮についての詩

「こんな狂ったものをマジに取るなんてマジで狂ってんのか?」という風潮についての詩

ポリティカルコレクトネスを詰め込むだけ詰め込んだ頭でっかちは、とりあえずは重力の法則に順って一枚岩にヘッドバットかましてやれば良い。
さすれば皆、宇宙空間に放り出されて窒息死する。そこからが本番。

宇宙空間における空中戦が始まった。地に足のつかないゼロ・グラヴィティですれ違う二人。頬を赤らめて、ロマンティックな信仰告白。それはきっと素敵な煽り愛。傷つけ合うのか傷の舐め合いなのか。見当もつかない文

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火をつけた広辞苑を国会にぶん投げる

火をつけた広辞苑を国会にぶん投げる

官僚による「なりすまし」です。本当にありがとうございました。
しかし、皆さん耳を疑え。
総務大臣的に、これはねつ造ではないのだ。

「統計委員長 国会に協力しない」 総務省、無断で文書作成(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201902/CK2019022602000147.html?fbclid=IwAR2G7pgBk9-

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人間の役

人間の役

天気のいい日は電気をつけない
だからいつもより暗い

元気のない日は陽気にふるまう
だからいつもより明るい

わたしは清廉で謙虚です
理不尽でも微笑みを絶やさず応対できます

よく気が利き
よく頷き
よく笑う
その役割に
なんの不満もありません
なんの疑問もありません

だから余計なお世話です
わたしはうまくやってます
わたしには必要ないことなんです
だからそんな顔しないで

今日は本当にありがと

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ひっくり返ったカナブンよりも今年はひっくり返ったジーサンを見つけた数のほうが多い

ひっくり返ったカナブンよりも今年はひっくり返ったジーサンを見つけた数のほうが多い

 「今年の夏は、ひっくり返ったカナブン、見かけへんかったな」

 道端でひっくり返っとったジーサンの腋を抱え、知らん女の人と2人で協力しながらジーサン抱え起こそうとしてるときに、ずっと、こんな感じのカナブンについての考えを、頭に思い浮かべとった。その、たぶん20後半くらいであろう女の人が、ジーサンの腰を支えてくれたので、わたしのほうは何か猫でも持ち上げる感じの、わりとひょいと軽い感じの、そこまで一

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萌え絵をめぐり争う脳内思念体

萌え絵をめぐり争う脳内思念体

「萌え絵が、女性そのものではなく脳内女性的思念体であり、見られる主体として理想化された、女性とはまったく違う存在なのだから、女性が自分自身の身体と同一視するのは筋違いである」

「いやいやその脳内女性的思念体とやらのモデルは一体なんだ? 女性自身だろう? 理想化だ? それは女性にこうあれという男性の欲望を肯定するものだ」

「こうあれなど言ってはいない。あくまで脳内女性的思念体として愛でている。そ

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平成30年台風第21号

平成30年台風第21号

台風でいろんなものが冗談みたいに飛んでおりました。窓ガラスの尽力により室内の平和は保たれましたが、外は悲惨。木や電柱が歪んで、フェンスがひしゃげております。関西をうっかり、間違えて洗濯機に突っこんでしまったような惨状でございます。すっかり心が縮んでしまいました。

暴風の蹂躙により方向が変わってしまった信号機や、標識が吹っ飛んでただただ佇むだけの曲がった棒を眺め、認知が歪んだような錯覚に陥っており

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彼女の話す外国語は日本語かもしれない

彼女の話す外国語は日本語かもしれない

彼女の話す外国語は日本語かもしれない
彼女は電車の乗車口で彼氏らしき男にむかってお話してる
車輪が線路の継ぎ目で刻む歯切れのいい音
その音に遮られて彼女のお喋りは途切れ途切れにわたしの耳に届く
穴だらけの彼女の音節はわたしの脳内補正で都合よく解釈されて
彼女の話す外国語は日本語なのかもしれない

海外の名作と言われている映画には
本当はぜんぜん違う意味の日本語字幕が付いてるんだよ
君の目は節穴で画

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続・巨乳を褒める

続・巨乳を褒める

妊婦が優先座席に座っている。わたしはその前に立っている。彼女は突然わたしを見上げ、真剣な表情で鋭い視線を向けたと思ったら、それはしだけて柔らかい笑顔になった。
「ねぇ、いま、また蹴った」
わたしは鼻から空気を漏らして、口角をあげるために頬に皺を作った。

先日『巨乳を褒める』というタイトルの短編小説を書いて、noteに発表した。どうにもタイトルが悪かったようで、閲覧数を確認するといまだ6人にしか読

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巨乳を褒める

巨乳を褒める

いやなにをどう考えようとも、オッサンが女性の巨乳を褒めるというシチュエーションがわからんわ。100歩譲って、いや1000歩譲って、なんかなんでもええけどギャラリーがおってやで、前もってそのオッサンが「君ええ巨乳やね」「すんません、上司にこんなこと言っていいのかわからないんですけど、アホなんですか? 」という感じのコミュニケーションを取りたいんですけど、って感じで、件の女性にお願いしていたとする。た

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感性が死んでいます

感性が死んでいます

感性が死んでいます
文字の羅列の塊から目に飛こんでくる文字は文字のままで意味に変換されません
誰と話しても心ここに非ずで楽しくなく必要に応じて求められた言葉を機械的に差し出します
笑顔
下唇が口のなかに巻き込まれ口角が広がっていくのが知覚できますが肝心の心はうんともすんともいいません

これから何をしようかと期待に胸を膨らませることもなく
将来への展望は欠片も存在せず
どうにも身体からはみ出した希

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ラジオから聞こえる漫才

ラジオから聞こえる漫才

ラジオから声が聞こえる。
「それでは、新鋭の漫才コンビの2人に登場していただきましょう、拍手でお出迎えください」感情を抑えた女の声。
拍手。2人の男の漫才が始まる。
「はいどーも。こうやって漫才させていただいてますけれどもね。いや、お客さん、今回ね、なんと、こちらの会場はラジオ中継されています」
「聞こえますかー! 声だけでなく姿形もお届けしたかったー! 」
微かな笑い声。
「言うなー! そういう

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ケサランパサラン

ケサランパサラン

サクラのイメージがもう消えてしまった季節、白い綿毛が宙を漂うのを幼稚園の廊下で見かけた。ほかの園児たちが皆それを見て「ケサランパサランだ」とはしゃいでいたが、それはかつてぼくが彼らに教えたことで、ぼく自身はもうその正体が野薊という植物の綿毛であることを知っていた。

年長組のぼくたちは、年少組の子たちの手をつないで、幼稚園から道路をこえてバス乗り場に行く。道路は車が通って危ないので、先生がいつも「

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極論ポエム

極論ポエム

きょうもきょうとて、極論から極論へ、行ったり来たりのアホみたいな議論があちらこちらでおこなわれています。脳内麻薬で働いてる気分に酔う自家発電を「エコだね」と時流にのって褒めそやすべきなのか。ナンセンスなその脳が順調に腐って発散された可燃性のガスへ火炎瓶を投げてアホんだらな輩をみんなまとめて木っ端みじんにすべきなのか。むしろこういう破滅的な議論を建設的にやるべきなのでは?

なるほどたぶんきっと彼ら

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