本ノ猪
読書から日常を変える
読書から日常を変える。
縁遠そうなので、話しやすいのかもしれない。 私はしばしば、友人・知人から失恋話を聞かされる。暗い声音で「話を聞いてほしい」と言われたときは、大抵失恋の話が待…
活字と無縁だった十代。まとまった文章を読む機会は、高校の「現代文」の授業に限られていた。 大学生になり、本を読んだり、講義を受けたりしている中で、度々「あれ…
皆さんは「最終講義」というものに足を運んだことがあるだろうか。 最終講義とは、大学を退職する教員による、最後の講義である。普段とは異なり公開講座になる場合が…
彼女は物を見るとき、目を細める癖があった。 知り合ったのは、大学一回生のとき。入学直後のオリエンテーションの時間に意気投合し、今でも時々連絡を取り合う程度の…
先日、知り合いの中学生(以下、Yくん)に漫画を勧める機会があった。十代の頃に読んでいたものを紹介してほしい、と。 漫画雑誌を買っては、クラスメイトと回し読みし…
日々大量に浴びすぎていて、あえて話題にもしないものに「ネット広告」がある。 ネットサービスの多くは、無料で利用できる代わりに、数秒間ネット広告を見るよう求め…
小学生時代、調べ学習の時間が割と好きだった。 教科書をベースに展開する通常の授業とは違って、自由度が高い。社会科科目が好きだったこともあり、それを自分好みに…
皆さんは、三浦綾子の『塩狩峠』をご存知だろうか。 私が本書の存在を知ったのは高校一年生のときで、実際に読むことになるのは大学二回生時である。 知ってから読…
SNSを眺めていると、定期的に「〇〇は不要である」(例えば、古文)と発言して、酔いしれる人が出てくる。当然のように、反対意見が噴出して、様々な必要論・不要論が飛…
最初その話を聞いたときは、めっちゃおもれえ、とシンプルに感心した。ただ、少し日数が経ち、改めて考えてみると、「いや、うーん……」と、純粋に感心もしていられなく…
最近、表紙の黒猫のイラストに惹かれて、レイ・ブラッドベリの『猫のパジャマ』を手に入れた。 その中に、「おれの敵はみんなくたばった」というユニークなタイトルの…
10代までに経験した数回の「転校」が、時々役に立つことがある。 友人・知人にアドバイスを求められたときが、特にそうだ。 ある時、歳下の友人からの相談を受けた…
清々しい朝を迎えたいならば、喫茶店でモーニングを食べるに限る。 通い慣れた店に行くもよし、新規開拓するもよし。夜、「明日の朝はモーニングから始めよう」と決め…
今振り返ると、なぜあれほど頑張れたのか、純粋に喜べたのか、判然としない物事がいくつもある。 その原因の中心には、その物事自体を疑わなかった、ということがある…
場所をとるから、という理由で電子書籍への移行がすすんでいる昨今、「全集本」ほどその流れに反する存在はない。 私はある時期まで、「全集本を買うなら、完品に限る…
今年も「春の古書大即売会」のシーズンがやってきた。京都市勧業館(みやこめっせ)にて、五日間にわたって開催されるこのイベントに、私は欠かさず参加している。 初…
2024年6月3日 20:00
縁遠そうなので、話しやすいのかもしれない。 私はしばしば、友人・知人から失恋話を聞かされる。暗い声音で「話を聞いてほしい」と言われたときは、大抵失恋の話が待ち受けている。 なぜ私に話すのか。失恋話を聞きながら、その理由を考える。冒頭に挙げたのが、考えられる一つの理由で、恋愛熟練者に話すとああだこうだ言われそうだから、いっそ無縁そうに見える人に話した方が、静かに聞いてくれそう……そんな感じだ
2024年6月1日 20:00
活字と無縁だった十代。まとまった文章を読む機会は、高校の「現代文」の授業に限られていた。 大学生になり、本を読んだり、講義を受けたりしている中で、度々「あれ? この話、知ってる」という感覚になる。そのときは大抵、「現代文」の授業から仕入れたものだった。 私の現代文の先生は、評論文を教える際、その執筆者がどういう主張を展開していたのか、本文の枠を超えて、割と詳しめに解説してくれていた。当時は
2024年5月30日 20:00
皆さんは「最終講義」というものに足を運んだことがあるだろうか。 最終講義とは、大学を退職する教員による、最後の講義である。普段とは異なり公開講座になる場合が多く、私もいくつか最終講義に参加してきた。 自身の専門性を活かしつつ、より普遍的なテーマについて語る。最終講義の内容としては、このパターンが一番多い。通常の講義で、生きるとは何か、学ぶとは何か、について語り出せば、鬱陶しがる受講者もいるだ
2024年5月28日 20:00
彼女は物を見るとき、目を細める癖があった。 知り合ったのは、大学一回生のとき。入学直後のオリエンテーションの時間に意気投合し、今でも時々連絡を取り合う程度の、軽やかな友人関係が続いている。 確かあれは大学一回生の初秋。まだ夏の暑さが残る公園で、「彼氏ができたんよ」と告げられた。友人関係から出発し、今後も変更の予定が皆無だったとはいえ、突然の報告に少し困惑する。特にかける言葉も見つからなかった
2024年5月26日 20:00
先日、知り合いの中学生(以下、Yくん)に漫画を勧める機会があった。十代の頃に読んでいたものを紹介してほしい、と。 漫画雑誌を買っては、クラスメイトと回し読みしていた学生時代を振り返りつつ、幾つか浮かんだタイトルをYくんに送る。* 数日後、紹介した中の一つを、十数巻分読んだというメッセージが届く。タイトルは、空知英秋『銀魂』。お勧めしたものの中でも、特に難なく楽しめるだろうという確信があ
2024年5月24日 20:00
日々大量に浴びすぎていて、あえて話題にもしないものに「ネット広告」がある。 ネットサービスの多くは、無料で利用できる代わりに、数秒間ネット広告を見るよう求めてくる。一つひとつ広告を真面目に見ていたら埒があかないので、いかに頭をシャットダウンして広告をスルーするか、その技術を磨いていく。 有料会員になれば広告から自由になれますよ、という謳い文句に惹かれるには、あまりに鍛錬の時間を持ちすぎた。そ
2024年5月22日 20:00
小学生時代、調べ学習の時間が割と好きだった。 教科書をベースに展開する通常の授業とは違って、自由度が高い。社会科科目が好きだったこともあり、それを自分好みに掘っていけるのを楽しんでいた。 調べ学習の時間だけは、気兼ねなく先生に質問ができたことも、大きい。明確な答えが決まっている問題については、解法を理解できていないことへの羞恥心から、質問ができなかった。が、調べ学習の場合は、ときにまだ答えが
2024年5月20日 20:00
皆さんは、三浦綾子の『塩狩峠』をご存知だろうか。 私が本書の存在を知ったのは高校一年生のときで、実際に読むことになるのは大学二回生時である。 知ってから読むまでに数年の時間を要したのは、単に私が『塩狩峠』に無関心だったからではない。私が明確な意思をもって、この本は読まない、と決め込んでしまったからである。* 『塩狩峠』を初めて知るのは、書店に置いてあるブックフェアの無料小冊子を通し
2024年5月18日 20:00
SNSを眺めていると、定期的に「〇〇は不要である」(例えば、古文)と発言して、酔いしれる人が出てくる。当然のように、反対意見が噴出して、様々な必要論・不要論が飛び交う。虚しいのは、それによって人の意見が反転することは、ほとんどないということだ。平行線を辿ったまま、一日、二日で盛り上がりの火は消える。* 上記のような光景を目にするたびに、読み返したくなる作品がある。明治20年代に文学で一時
2024年5月16日 20:00
最初その話を聞いたときは、めっちゃおもれえ、とシンプルに感心した。ただ、少し日数が経ち、改めて考えてみると、「いや、うーん……」と、純粋に感心もしていられなくなった。* 最近、友人を介して、今年から大学に通い始めた子と知り合いになった。一度、三人で回転寿司に足を運んだのだが、その子から聞ける話がまあ新鮮で面白い。 彼は高校一年の頃から、「大学に行くなら、哲学をやる」と決めて、日々の高校
2024年5月14日 20:00
最近、表紙の黒猫のイラストに惹かれて、レイ・ブラッドベリの『猫のパジャマ』を手に入れた。 その中に、「おれの敵はみんなくたばった」というユニークなタイトルの短篇が収録されている。 本作は、ある新聞に載った死亡記事から始まる。そこには、ティモシー・サリヴァンという人物が、癌により77歳で亡くなったことが書かれている。 その記事を目にした、ウォルター・グリップという男は、「ああ、なんてこった!
2024年5月12日 20:00
10代までに経験した数回の「転校」が、時々役に立つことがある。 友人・知人にアドバイスを求められたときが、特にそうだ。 ある時、歳下の友人からの相談を受けた。ざっくり内容をまとめれば、「今の人間関係の中で求められている自分の有り様が嫌になった。一度関係をリセットして、新しい自分になりたい」というものである。 その相談を、私は天津飯を頬張りながら聞いていたのだが、思わず口から吹き出しそうに
2024年5月10日 20:00
清々しい朝を迎えたいならば、喫茶店でモーニングを食べるに限る。 通い慣れた店に行くもよし、新規開拓するもよし。夜、「明日の朝はモーニングから始めよう」と決めて寝床に入るだけで、いつもよりぐっすり眠れる。* 喫茶店では、本を読む。持っていくのは、短篇集や詩集が多い。 トーストで程よくお腹を満たしたあと、コーヒーを啜りながらする読書は、格別だ。情報の定着力が高まる感覚もある。「この本、喫
2024年5月8日 20:00
今振り返ると、なぜあれほど頑張れたのか、純粋に喜べたのか、判然としない物事がいくつもある。 その原因の中心には、その物事自体を疑わなかった、ということがある。つまり、良いものである、と信じてやまなかったわけだ。* 上記の物事の具体例として、私が真っ先に思い浮かぶのは「皆勤賞」である。 皆さんは「皆勤賞」にこだわりがあっただろうか。私には、なぜか、あった。「学校」という空間そのものが嫌
2024年5月6日 20:00
場所をとるから、という理由で電子書籍への移行がすすんでいる昨今、「全集本」ほどその流れに反する存在はない。 私はある時期まで、「全集本を買うなら、完品に限る」という信念に囚われていた。つまりどういうことかというと、古本屋や古本まつりで全集本の端本を見かけても、買わない。全部で20巻ある全集なら、20巻一気に購入する、これがマスト……そんな風に考えていた。 そうではなくなった今となっては、こ
2024年5月4日 20:00
今年も「春の古書大即売会」のシーズンがやってきた。京都市勧業館(みやこめっせ)にて、五日間にわたって開催されるこのイベントに、私は欠かさず参加している。 初めて足を運んだときの感動は、未だに忘れられない。バラバラの地域に点在する古書店が一堂に介して、ある空間を「古本」で満たしてしまう。そのスケールに、ただただ圧倒された。* 初めて足を運ぶ友人・知人を案内するとき、たびたび質問されるこ