奥谷洸平

詩人 日本語の文章を書きたくなりました。 詩、日常エッセイ 音楽以外のことをここでや…

奥谷洸平

詩人 日本語の文章を書きたくなりました。 詩、日常エッセイ 音楽以外のことをここでやります。 Kohei Okutani名義でミュージシャンをしています。 Instagram https://instagram.com/koheiokutani

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    自身の詩をまとめました。

記事一覧

また出会う

今年ももう半分が過ぎ去ろうとしている。 日々を懸命に過ごしてはいるが、どうしても取りこぼしてしまう一瞬一瞬が積み重なって、大きな無駄を溜め込んでしまっているよう…

奥谷洸平
2日前

非文

言いたいことなど何もなかった 伝えたいことなど何もなかった ただうちに沸々と湧いてくるその何かを ひとりごととして吐き出して 吐き出し続けたら途端不安になって もは…

奥谷洸平
1か月前

棲家

その倉庫には いくせんもの材料たちがぐるぐるまわる いつかまた持ち出される時までは 絡み合い、共鳴しながら その均衡を保っている いくつか形を作られたものも 別段本…

奥谷洸平
1か月前
1

ハードボイルド

くやしさがまた 体を巡る時 それは張り巡らされた赤い環状線の渋滞の 隙間を潜り抜けて 爪の裏側に行き着く また同時に頭にも到達したことに 気づくより早く 口へとはこば…

奥谷洸平
5か月前
2

行き止まり

追い詰められて、逃げ場がなくなったその刹那 隅に見つかる小さな穴から形を変えて抜け出す ダクトに吸い込まれる紫炎 あるいは渦になって流れ出る無形の川の水のように 自…

奥谷洸平
11か月前
1

潜水

一歩進んだら落ちてしまった ほんの一瞬のことで これまでのことも全て 失うような感覚と共に どういう風にものを考えていたのか すっかり分からなくなる 同じところをぐ…

奥谷洸平
1年前

罪人

何かに優れた人間では無い 世の中に何が出来る訳でも 人に何かを出来る人間ではない 己の理由などあるわけもない ここで綺麗さっぱり消えてしまうことが出来れば それが全…

奥谷洸平
1年前

歓声満つ

歓声満つ 話し声がかき消される中で 確かに伝わり また確かめ合うこのつながりに かつてしがみついていたものが 今は少し離れ、宙に浮き この酔いが覚める頃には この時を…

奥谷洸平
1年前
1

多面世界への通行

梅雨の狭間に 季節外れの肌寒さ しかし木々や花々は後戻りができず ちぐはぐな印象を与えながらも 時間によって変化したその体を震えながら晒す 形だけを ただ形だけをく…

奥谷洸平
1年前

とぐろを巻いている

何者になりたかったわけでもない かつて希望は求めずともあった だが知らぬ間に血眼になって、 這いつくばって探さねばならぬものになった そうして荒野の中で、 砂金の一…

奥谷洸平
1年前

扇風機

からからからから からからからからか 扇風機がまわる からからからからか ただその空気が滞ることだけが 唯一の空間の証明となるような 部屋がもつ温度を混ぜ返し 窓か…

奥谷洸平
1年前
2

前夜祭

そう、そうしていればいいのだ 考えなくてもいい 必要とされることさえしていれば そこそこの見返りは与えてやる 押し付けられた罪悪感と 何ものにもなれない無力感と 今…

奥谷洸平
1年前
2

明滅する光 ただ真っ直ぐに 遠くから地球の表層をなぞって 入り込む隙間をみつけだし 拡散して降り注ぐ 色とりどりのその光は 時にばらけてはまた混ざり 溶けて透き通った…

奥谷洸平
1年前

かたる 4

本当にいつも考えすぎなんじゃないかな? 間違ったことは言ってないけど 考えすぎるということは決してないんだよな 答えがない問題ばかりなんだから はっきり言ってあな…

奥谷洸平
2年前
2

かたる 3

昼下がりに詩を書くなんてね いったいどうしちゃったの? あんなに嫌っていた時間帯なのに わからないけど、 あまり変なルールを増やさないようにしないと って思って そ…

奥谷洸平
2年前
8

かたる 2

別にポーズで構わないでしょ と君はいう そんなことは分かってるけど と僕は不満げに答える 誰よりもまるで自分のことを分かっていないのに この世の事は自分だけが知って…

奥谷洸平
2年前
1

また出会う

今年ももう半分が過ぎ去ろうとしている。
日々を懸命に過ごしてはいるが、どうしても取りこぼしてしまう一瞬一瞬が積み重なって、大きな無駄を溜め込んでしまっているように感じる。

僕がもし芸術家でなかったら、と思うとやり切れない。この無駄があるとき急に、僕自身忘れた頃に光り輝くことがあるから、元来悲観的な僕もまだ自分を失わずにいられる。
つまり今、それなりに生きてきたこの30云年を、回り道して無駄の多い

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非文

言いたいことなど何もなかった
伝えたいことなど何もなかった
ただうちに沸々と湧いてくるその何かを
ひとりごととして吐き出して

吐き出し続けたら途端不安になって
もはや掬い上げるものがなくなった
でも掻き出しているうちに
胃は薄くなって破れていた

果たして痛みに耐えたのか、
動転して気づかなかったのかさえ定かではない
そこから溢れて溜まった血液をまた大事に集めて
平気なふりをして文字を書いた

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棲家

その倉庫には
いくせんもの材料たちがぐるぐるまわる
いつかまた持ち出される時までは
絡み合い、共鳴しながら
その均衡を保っている

いくつか形を作られたものも
別段本質は変わっておらず
その元素のままなのであるが
偶発的に生まれた意思が時に行く道を誤らせる

しかしその道もまた生きて帰りし道であり
どんなに逃げたつもりでも
私たちの体は釈迦の手の上
そっと掴まれてまた元の軌道に乗せられる

行くあ

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ハードボイルド

くやしさがまた
体を巡る時
それは張り巡らされた赤い環状線の渋滞の
隙間を潜り抜けて
爪の裏側に行き着く

また同時に頭にも到達したことに
気づくより早く
口へとはこばれる"かゆみ"
それを解消するために噛み締めた歯が
ぷつっと皮膚に小さい穴を開けて
どっと流れ出る赤い血は

精製されたばかりの金属の味
溶けるほどの熱を持っているかと思えば
冬の日のドアノブのようにひんやりもして
とらえどころがな

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行き止まり

追い詰められて、逃げ場がなくなったその刹那
隅に見つかる小さな穴から形を変えて抜け出す
ダクトに吸い込まれる紫炎
あるいは渦になって流れ出る無形の川の水のように
自身の形を崩し、全てを放棄して
ようやく逃げ出すことの出来た
その先に歩むべき新たな路地がある

その路地はまた異国の物品や
その人生を想像できない人々で埋め尽くされ
一角を抜ける頃には価値観が揺り動かされ
一寸世界を知った気になっている

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潜水

一歩進んだら落ちてしまった
ほんの一瞬のことで

これまでのことも全て
失うような感覚と共に
どういう風にものを考えていたのか
すっかり分からなくなる

同じところをぐるぐる回り
生産性から切り離された心と身体で
何も守るものはないと分かっていても
それでも底抜けに深い
そして暗く
光がない

闇に沈んでいく夢を見て
恐怖と混乱と絶望のために
汗だくで目醒めて
助けを求めて縋ろうと思っても
隣には

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罪人

何かに優れた人間では無い
世の中に何が出来る訳でも
人に何かを出来る人間ではない

己の理由などあるわけもない
ここで綺麗さっぱり消えてしまうことが出来れば
それが全てを解決するのだが
世の中の構造がそれを邪魔し
愚者が愚者の手と足を絡み合わせて
この地獄に縛り付けている

しかし世界に期待などなく
ましてや恨むことなどなく
ただこの息の出来ないほどの重圧の中で
消えてしまう方が楽だと思うその気持

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歓声満つ

歓声満つ
話し声がかき消される中で
確かに伝わり
また確かめ合うこのつながりに

かつてしがみついていたものが
今は少し離れ、宙に浮き
この酔いが覚める頃には
この時を懐かしむより先に
日常の繁忙に飲み込まれていくのであるが

それでも飲み、また飲み込まれ
夜の渦に足を踏み入れ
まだ長い、夜明けまでの電灯がわりに
また新たな杯を空けてゆく

多面世界への通行

梅雨の狭間に
季節外れの肌寒さ
しかし木々や花々は後戻りができず
ちぐはぐな印象を与えながらも
時間によって変化したその体を震えながら晒す

形だけを
ただ形だけをください
それでほとんどの場合問題なく
自分を保ち、人を騙して
心はそこになくても
私は私で成立するのだから

どうせ皆中身など見ていない
あるいはわかりやすく与えられたその一部
それを己の、あるいは他者の全てと錯覚し
二次元世界の窮屈

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とぐろを巻いている

何者になりたかったわけでもない
かつて希望は求めずともあった
だが知らぬ間に血眼になって、
這いつくばって探さねばならぬものになった
そうして荒野の中で、
砂金の一粒を探し求めるような心境で、
生きる糧を探すのだ

この先で落ちることがわかっている吊り橋の上を
生きた心地もせずに歩かねばならぬ
そうすると
もう死んでいるのも生きているのもわからぬ

終わりが見えている道を
永遠などないものを
必死

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扇風機

からからからから
からからからからか

扇風機がまわる
からからからからか

ただその空気が滞ることだけが
唯一の空間の証明となるような
部屋がもつ温度を混ぜ返し

窓から入った木の葉が舞い上がる
いやそれはただの埃で
あるいはその風を認識出来るのだと
誇示したい己の虚栄心から生まれた幻覚で

吹かれていることに気がつかずに
ある時はおもてに足を踏み出して

あぁ、やはり外の空気は美味いなと
この

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前夜祭

そう、そうしていればいいのだ
考えなくてもいい
必要とされることさえしていれば
そこそこの見返りは与えてやる

押し付けられた罪悪感と
何ものにもなれない無力感と
今見えるのは、
現実味のない虚構につくられた夢か
底なしの絶望か

僕に連なってきたこの血が
決して高貴であったことはないこの血が
それでもそれを拒むのだ
幼い頃、林の中で会話をした精霊たちが
今僕に
「進め」
と何度も語りかける

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明滅する光
ただ真っ直ぐに
遠くから地球の表層をなぞって
入り込む隙間をみつけだし
拡散して降り注ぐ

色とりどりのその光は
時にばらけてはまた混ざり
溶けて透き通ったかと思えば
自らの熱で少しずつまた焦げてゆく

僕を呼ぶ声がする
それずっと遠くからあったようだけれども
多くまぶしすぎる光がそれを追い越して
僕の視力を奪ってしまったものだから
それに気を取られて大騒ぎしていて
その声に気づかなか

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かたる 4

本当にいつも考えすぎなんじゃないかな?
間違ったことは言ってないけど

考えすぎるということは決してないんだよな
答えがない問題ばかりなんだから

はっきり言ってあなたが考えないといけないのは、
来月の生活費のことなんじゃないの

なに、偉大な芸術家はえてして金に困っていたものさ
時給1000円やそこらの仕事より価値あることをしないとね
僕の人生が終わる時に、誇って口にするのが、
安い賃金で必死に

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かたる 3

昼下がりに詩を書くなんてね
いったいどうしちゃったの?
あんなに嫌っていた時間帯なのに

わからないけど、
あまり変なルールを増やさないようにしないと
って思って
そうしてる間に気づけば息もできなくなってるからさ

制限の中にこそ芸術が、
なんて偉そうに言ってたのにね
そういうところ可愛いと思うよ

すぐに意見を変えるということもまた
僕のモットーにしてるからさ

レースのカーテンを通って
いくぶ

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かたる 2

別にポーズで構わないでしょ
と君はいう
そんなことは分かってるけど
と僕は不満げに答える

誰よりもまるで自分のことを分かっていないのに
この世の事は自分だけが知っているかのように
人が右と言えば左、黒と言えば白、
ほつれたサビキ釣りの糸のような精神で
ああだこうだと偉そうに語ってきた

やわらかくて弱々しい心は強い外殻をもとめる
言論と思想と、少しばかり人より斜めからものを見られる唯一の特技でも

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