夏目純名

なつめじゅんなと読みます。でも、好きなように読んでいただいて構いません。主にオリジナル…

夏目純名

なつめじゅんなと読みます。でも、好きなように読んでいただいて構いません。主にオリジナルの小説を載せております。誤字脱字は1秒たりとも無駄にせずお知らせください。

記事一覧

#1

空は青くて澄んでいるのに、空の下の私たちは真っ黒に住んでいる。 その日は友達の応援に行った日だった。 ドリブルの音が鳴り響き、時々ザザッとシュートの音がする。 み…

夏目純名
2年前
3

半透明

雪が降りそうなくらい寒いこの季節は、小さなミスさえ大きくなってしまうので嫌いだ。 人肌が恋しくなるこの季節は嫌いだ。 電飾で電気代の無駄遣いをするこの季節は嫌いだ…

夏目純名
2年前
3

愛を知る時は今

だらだらと甘い香りに誘われて、 躊躇なく重なる唇に僕らは埋まっていた。 8月某日。 それはとても暑い日だった。 ポニーテールに揺れるピアスの彼女。 RPGで言えば、MP…

夏目純名
2年前
5

山菜採り

そのまた昔、眠れない男がいたと言う。 そいつは結構な長身で、毎晩ワラビを採りに森へ出掛けていた。森についた男は山菜をふんだんに使ってその場で調理をする。 ある日の…

夏目純名
2年前
2

あんたは何者なんだよ

なんでも好きになれてしまう。 辛い仕事も、嫌な先輩も。 好きなところを見つけ出すことが出来る。 便利な性格で助かる。 仕事はしんどくならないし、人間関係も苦労しない…

夏目純名
2年前
8

カフェ・オ・レが冷める前に

告白はタイミングが大事だと聞く。それとプロポーズも。 僕は自分にホットコーヒーを、彼女にカフェ・オ・レをいれた。 「無理に全部飲まなくていいから」 「じゃあ量減ら…

夏目純名
2年前
4

夏目は頭と格闘し。

「夏目先生の文章って稚拙で、面白くないんですよね」 誰にもこんなこと言われていないのに、脳内で聞こえた。手が震える。 「あ、もう書けないかも」 一瞬一瞬が文章に…

夏目純名
2年前
12

殴り書き

ガサツ部に入部した4月。 それから1年が経った。まだ慣れない。 数々の食べ物を腐らせ、冷蔵庫がカビの森と化している。そんな部室。 床に蓋を無くしたペットボトルたちが…

夏目純名
2年前
5

捨て猫

「起きた?」 真上から降る言葉に私は咄嗟に疑いのフィルターをかけた。 「誰」 「覚えてねえか」 そう言う彼はため息を零した後、続けた。 「拾った。捨て猫みてえに…

夏目純名
2年前
4
#1

#1

空は青くて澄んでいるのに、空の下の私たちは真っ黒に住んでいる。

その日は友達の応援に行った日だった。
ドリブルの音が鳴り響き、時々ザザッとシュートの音がする。
みんなが鼓舞し合う声もなんだか、かっこいいけど、やっぱりクソ熱いや。
ここにいるみんなはこんな熱い世界で青春をぶつけて闘ってるんだ。
何の為に頑張って、誰の為に、結果を追い求めてるんだろう。

「悔しいって感情が焦りを生み出して気持ち悪い

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半透明

半透明

雪が降りそうなくらい寒いこの季節は、小さなミスさえ大きくなってしまうので嫌いだ。
人肌が恋しくなるこの季節は嫌いだ。
電飾で電気代の無駄遣いをするこの季節は嫌いだ。息が白くなって幻想的に見えるこの季節は嫌いだ。
冷たいビールを片手にこの季節に反抗した。
公園でアルコールを摂取するこの時間は、浄化にあたる。
すぐ冷めるものは要らないので、恋は保温機能があるものがいい。
出来れば甘ったるいものより、栄

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愛を知る時は今

愛を知る時は今

だらだらと甘い香りに誘われて、
躊躇なく重なる唇に僕らは埋まっていた。

8月某日。
それはとても暑い日だった。

ポニーテールに揺れるピアスの彼女。

RPGで言えば、MPを大量消費するであろう言葉。僕はその日彼女に初めて使った。

「結婚してください」

飾りのない、気持ちが先走る。
普段あまり感じない間がとてつもなく長く感じる。

彼女は微笑みが溢れない程度のギリギリまで口角を上げて言った。

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山菜採り

山菜採り

そのまた昔、眠れない男がいたと言う。
そいつは結構な長身で、毎晩ワラビを採りに森へ出掛けていた。森についた男は山菜をふんだんに使ってその場で調理をする。
ある日の晩、その男は熊に遭遇した。
初めて、この男は静かに眠りにつくことができた。

あんたは何者なんだよ

あんたは何者なんだよ

なんでも好きになれてしまう。
辛い仕事も、嫌な先輩も。
好きなところを見つけ出すことが出来る。
便利な性格で助かる。
仕事はしんどくならないし、人間関係も苦労しない。愚痴もこぼさずに済む。

ただ、恋愛においてはこの性格は面倒だ。
恋愛対象で好きなのか、尊敬で好きなのか、愛なのか恋なのか、自分ではわからない。
「それってみんな好きってこと?」
「うん、なんか嫌いな人いないんだよね。この言動嫌だな、

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カフェ・オ・レが冷める前に

カフェ・オ・レが冷める前に

告白はタイミングが大事だと聞く。それとプロポーズも。

僕は自分にホットコーヒーを、彼女にカフェ・オ・レをいれた。
「無理に全部飲まなくていいから」
「じゃあ量減らしてくれてもいいのに」
「そしたら足りないって言うじゃん」
この会話が何度繰り返されたんだろうか。
何度、彼女が家に来て他愛もない会話で終わったのだろうか。何度後悔しただろうか。

思い返すといつも思う。今日こそは、と。
そんな事を考え

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夏目は頭と格闘し。

夏目は頭と格闘し。

「夏目先生の文章って稚拙で、面白くないんですよね」

誰にもこんなこと言われていないのに、脳内で聞こえた。手が震える。

「あ、もう書けないかも」

一瞬一瞬が文章になって、その結果自分の世界が広がっていて、降ってきたものをそのまま乗せていた。
それが否定されれば、私の世界がつまんないんだ。一生懸命文字に起こしたところで誰も読んでくれないし、面白くない。

もてはやされても、それが実力と伴っていな

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殴り書き

殴り書き

ガサツ部に入部した4月。
それから1年が経った。まだ慣れない。

数々の食べ物を腐らせ、冷蔵庫がカビの森と化している。そんな部室。
床に蓋を無くしたペットボトルたちが散乱し、先輩が購入したと話していたテーブルも壊れてそのままだ。
「あ、おはようございます」
引き気味に挨拶する部員は集まるとすぐに購買へ向かう。
「先輩、ここはなにする部活なんですか?」
新入生の女が僕に問いかけた。
ただ、僕もわかっ

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捨て猫

「起きた?」

真上から降る言葉に私は咄嗟に疑いのフィルターをかけた。

「誰」

「覚えてねえか」

そう言う彼はため息を零した後、続けた。
「拾った。捨て猫みてえにボロボロでか弱い女が泣いててほっとける訳ねえだろ」
「お前の過去も知らないし、どうしてそうなったかも聞かない」
彼はこちらに話しているにも関わらず、キッチンへと向かう。
「お前も来い。仮に辛い過去があったとしても、もう変えてあげらん

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