砂漠渓

noteなるもので脳を刺激しています。 どうしても回想とかが多くなり、過去の人ですが、…

砂漠渓

noteなるもので脳を刺激しています。 どうしても回想とかが多くなり、過去の人ですが、気分はまだ青春です。

記事一覧

久しぶりに絵筆を取る

木道が戦場ヶ原の奥へと続いています。 湯滝から始まった湯川沿いに、上流へと歩きます。 靴音だけが自分を追っかけてきます。 白樺林を抜け、落葉松の林を抜けると、突然…

砂漠渓
2か月前
13

どこからか風鈴の音が聞こえてきた。

夏の日差しを避けて、路地裏に入った。 天の方から、かすかな音が聞こえてきた。 陽射しの中に消え入りそうな音である。 見上げると、すだれの横に風鈴が揺れていた。 チリ…

砂漠渓
8か月前
21

紫陽花の咲く頃

梅雨には紫陽花が良く似合う。濃い緑の葉先から、銀色の水玉が今にもこぼれそう。 権現堂の土手には、紫陽花が咲いていた。 空色のもの、藍より青い青色、ピンクにむらさき…

砂漠渓
11か月前
22

誘われたが、断った。

ある知人から、ジョギング同好会に誘われた。 その名も「たそがれクラブ」という。 この歳でジョギングなどすると、たそがれが日没になり「ハイさよならよ」となってしまう…

砂漠渓
1年前
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書き方にこだわらない、己流の書に挑戦。己書というそうだが金釘流になった。

砂漠渓
1年前
19

桜が散るころになると、やらなきゃいけない行事が来る。

別にむつかしいことではないが、厄介なことである。 そのために、人に見られても恥ずかしくない仕事をしなければいけない。 水彩画の小さなグループに参加しており、グル…

砂漠渓
1年前
20

※桜の木の下に、奇妙は老人が立っていた。

たそがれ時であった。 桜の木の下に、老人が立っていた。 老人は曲がった腰に両手をあてて、腰をのばしながら桜をふりあおいだ。 その時、「ゴリッ!」と、骨が泣いた・・…

砂漠渓
1年前
16

初冬の日の一日、ちいさな旅に出た。

そんなに遠くはない。 何度かその近くを訪ねているのに、なぜかまだ未訪問の土地だった。   行き先は、富士山麓の湧水のある忍野八海。 「海」といっても、八つの小さな湧…

砂漠渓
1年前
24

「自分だったら生きたいとは思わない」の深層

老人健診で病院に行く。自宅から歩いて5分ばかりのところにある中規模の病院である。  相変わらず地域の老人が多い。長椅子に座って順番を待っていると、すぐ前の椅子に…

砂漠渓
1年前
26

夢とロマンの横浜の港

ある絵のグループで、横浜へ行った。 久しぶりの横浜である。 桜木町駅前から、スキー場にあるようなゴンドラが汽車道の空中をゆったりと動いている。 前に来た時はなか…

砂漠渓
1年前
28

キジとシラサギとテントウ虫

自宅から自転車で10分ほどに、田んぼのある公園がある。 田んぼにはすでの水が張られ、一部は田植えが終わったところもあった。 日本の農業の原点のようなのどかな、ほの…

砂漠渓
2年前
24

ハーレムの美少女たちの冒険

アムステルダムから電車で20分ほどの町、ハーレムに滞在したときである。 早朝、ホテルの近くの水路を散歩していると、小さなボートに乗って3人の少女が遊んでいた。一人…

砂漠渓
2年前
17

天国への渡し船

遊歩道を抜けると、突然に視界が開けた。 そこは、天と地が裂けて、別世界が現れたかと思った。 海は、エメラルドグリーンとセルリアンブルーのグラデーション。 砂は、太…

砂漠渓
2年前
18

命との対面

最近、人の命について考えさせられたことがある。 知床半島の沖で、遊覧船が荒海で沈没、20数人の観光客が投げ出された。 数日過ぎても遺体の見つからない人も多い。 身内…

砂漠渓
2年前
19

海の顔

高校生の頃は、海といえば瀬戸内海だった。 (今住んでいるのは、海なし県だが) 潮の流れの速い場所以外は、波頭さえ見えないおだやかな海である。 (春の海 ひねもすの…

砂漠渓
2年前
14

剣岳追憶

眼前に黒い岩壁がそそり立つ。 息が上がり、汗が目に染みる。 引力に逆らって、身体を上方に持ち上げる。 見おろすと、断崖が谷底まで落ちている。 三点支持での一歩一歩は…

砂漠渓
2年前
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久しぶりに絵筆を取る

久しぶりに絵筆を取る

木道が戦場ヶ原の奥へと続いています。

湯滝から始まった湯川沿いに、上流へと歩きます。
靴音だけが自分を追っかけてきます。
白樺林を抜け、落葉松の林を抜けると、突然に湿原が現れます。
小田代ヶ原です。
男体山が悠然と座っています。

どこからか風鈴の音が聞こえてきた。

どこからか風鈴の音が聞こえてきた。

夏の日差しを避けて、路地裏に入った。
天の方から、かすかな音が聞こえてきた。
陽射しの中に消え入りそうな音である。
見上げると、すだれの横に風鈴が揺れていた。
チリン、チリンと・・・。
一瞬涼気を感じ、思わず微笑んだ。
久しぶりに聞く音色だ。

 わが家には風鈴はない。そのようなしゃれたもんはござんせん。
でも、子供のころにはあった。ふるさとの茅葺の軒下に、短冊がゆらゆらと揺れると、チリン、チリ

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紫陽花の咲く頃

紫陽花の咲く頃

梅雨には紫陽花が良く似合う。濃い緑の葉先から、銀色の水玉が今にもこぼれそう。
権現堂の土手には、紫陽花が咲いていた。
空色のもの、藍より青い青色、ピンクにむらさき、真っ白の花もある。
「七変化」とも言われている紫陽花だが、色は土壌の酸性度(ph)によって決まるという。
酸性の土地には青色、中性・アルカリ性の土壌なら薄紅色やピンクになる。
この色の変化の為か、花ことばのひとつに「移り気」なんて呼ばれ

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誘われたが、断った。

誘われたが、断った。

ある知人から、ジョギング同好会に誘われた。
その名も「たそがれクラブ」という。
この歳でジョギングなどすると、たそがれが日没になり「ハイさよならよ」となってしまうので、ていねいに断った。

しかし、まだ山には未練がある。
尾根とか岩場は無理でも、トレッキングならできると自負しているが、これはむなしい果たせぬ夢か・・・。

「たそがれクラブ」の名の由来は、たそがれ時にジョギングをするからだそうだ。

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桜が散るころになると、やらなきゃいけない行事が来る。

桜が散るころになると、やらなきゃいけない行事が来る。

別にむつかしいことではないが、厄介なことである。
そのために、人に見られても恥ずかしくない仕事をしなければいけない。

水彩画の小さなグループに参加しており、グループ展がある。
最近はみんなの技量が上がり、愚老の絵などさっぱり見栄えがしない。

それでも描くのは脳への刺激の為。
水彩画を描くことは、普段使わない右脳を鍛える効果があるそうである。
左脳は物事を論理的に処理するが、右脳はイメージ、直感

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※桜の木の下に、奇妙は老人が立っていた。

※桜の木の下に、奇妙は老人が立っていた。

たそがれ時であった。
桜の木の下に、老人が立っていた。
老人は曲がった腰に両手をあてて、腰をのばしながら桜をふりあおいだ。
その時、「ゴリッ!」と、骨が泣いた・・・
が、異常はなかった。
見上げた老人の視界いっぱいに、桜花が飛び込んでいることだろう。
白い色と海老色が入りまじり、モザイクのように光っているはず。
数片の花びらが落ちてきて老人の肩にとまった。
夕陽の色がいちだんと濃くなった。
「老人

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初冬の日の一日、ちいさな旅に出た。

初冬の日の一日、ちいさな旅に出た。

そんなに遠くはない。
何度かその近くを訪ねているのに、なぜかまだ未訪問の土地だった。
 
行き先は、富士山麓の湧水のある忍野八海。
「海」といっても、八つの小さな湧水群である。
かつては大きな湖だったそうだ。
平安時代の噴火で流れ出た溶岩により、この湧水群は形成された。

清らかな川の流れをたどると茅葺の民家が現れ、小さくはあるが信じられないような透明感の湧水池に出た。
富士山の地下で育まれ、伏

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「自分だったら生きたいとは思わない」の深層

「自分だったら生きたいとは思わない」の深層

老人健診で病院に行く。自宅から歩いて5分ばかりのところにある中規模の病院である。
 相変わらず地域の老人が多い。長椅子に座って順番を待っていると、すぐ前の椅子に高齢の老夫人がやって来た。一人では歩けないようだ。背中を丸めてヨタヨタとすり足をしている老婆の腕を、しっかりと支えている息子らしき男性がいた。その男性は頭も白く70歳位に見えた。長い人生を歩いた年老いた母親を、すでに初老になった息子がやさし

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夢とロマンの横浜の港

夢とロマンの横浜の港

ある絵のグループで、横浜へ行った。
久しぶりの横浜である。

桜木町駅前から、スキー場にあるようなゴンドラが汽車道の空中をゆったりと動いている。
前に来た時はなかったものだ。

港には、異国へのあこがれを満載した、飛鳥Ⅱ。
海の男たちを育てた大型帆船、日本丸。
その昔太平洋航路を往来した、氷川丸。

横浜の港には、夢とロマンがあった。

キジとシラサギとテントウ虫

キジとシラサギとテントウ虫

自宅から自転車で10分ほどに、田んぼのある公園がある。
田んぼにはすでの水が張られ、一部は田植えが終わったところもあった。

日本の農業の原点のようなのどかな、ほのぼのとした風景が広がっている。何を考えているのかシラサギが頭を上げて微動だにしない。
草むらではテントウ虫が密になって会食している。

その時だった、「ケーン・・・」とかん高い声が聞こえてきた。
明らかにキジだ。
どこにいるかと目を

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ハーレムの美少女たちの冒険

ハーレムの美少女たちの冒険

アムステルダムから電車で20分ほどの町、ハーレムに滞在したときである。

早朝、ホテルの近くの水路を散歩していると、小さなボートに乗って3人の少女が遊んでいた。一人の少女が立ち上がった時、小舟は激しく揺れた。瞬間、転覆するのではないかと、思わず「アッ!危ない」とつぶやいた。

近くに保護者らしき人はいない。内心「これで大丈夫なのかな」、と感じながらも、彼女たちの勇気には感心した。手を挙げると笑

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天国への渡し船

天国への渡し船

遊歩道を抜けると、突然に視界が開けた。

そこは、天と地が裂けて、別世界が現れたかと思った。
海は、エメラルドグリーンとセルリアンブルーのグラデーション。
砂は、太陽に反射した純白の白。
海面に浮かんでいる船は、天国への渡し船だ。
三途の川の渡し舟より、近代的で快適だった。
もっとも、まだ三途の川の舟には乗ったことがないが・・・
船底から、亜熱帯の海中が眺められる。

命との対面

命との対面

最近、人の命について考えさせられたことがある。
知床半島の沖で、遊覧船が荒海で沈没、20数人の観光客が投げ出された。
数日過ぎても遺体の見つからない人も多い。
身内の人は、悲嘆にくれながらも「まだどこかの岩陰で助けを求めている」はずだと信じている。
2~3年前、キャンプ場で行方不明になった女児の母親も「必ずどこかで元気に生きている」と信じている。
現実に直面している人の気持ちは、そうでない人には理

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海の顔

海の顔

高校生の頃は、海といえば瀬戸内海だった。
(今住んでいるのは、海なし県だが)
潮の流れの速い場所以外は、波頭さえ見えないおだやかな海である。
(春の海 ひねもすのたり のたりかな<与謝蕪村>・・・の様)

太平洋の波を見たときは驚いた。
沖合からすでに波頭が白く現れ、帯状になって押し寄せて来る。
のこぎりのような岩礁にタックルするかのごとくぶつかり、裂けて砕けて飛び散る。
(大海の磯もとどろによ

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剣岳追憶

剣岳追憶

眼前に黒い岩壁がそそり立つ。
息が上がり、汗が目に染みる。
引力に逆らって、身体を上方に持ち上げる。
見おろすと、断崖が谷底まで落ちている。
三点支持での一歩一歩はためらいがちだった。
ただ、心に「山頂はもうすぐだ」と言い聞かせているだけだった。
手をかけた岩の先に、ミヤマツメクサの小さな白い花。
いっときの安らぎが身内に流れた。

剣岳は2999mで、「岩の殿堂」と呼ばれている。1907年(明治

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