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ときをうたうもの 第陸話
「ぼくの夢は、世界一強い人になることです。そして世界せいふくをたくらむ悪いやつらをたおして、億万長者になります。おわり」
バカみたいな夢を抱えてんなぁと頬杖を突きながら聞いていた。そして周りと同じように拍手をする。子供の夢は現実的に叶えられるモノだけではない。物体になりたいと考えたり、有名人になりたいと考えたりもする。大人になれば、次第にそんな気持ちは羞恥心へと変わっていってしまうのだろう。ただ
ときをうたうもの 四話
「そこに脱いどけ。後で洗濯しておいてやるよ」
「ふざけてるのか。私は男装していたが、仮にも女だぞ」
「男装してたのは知ってる。初めて会ったときから丸わかりだった」
万古は衝撃的なことを言い放った。今まで初対面では見破られたことはなかった。口に出されてなかっただけかもしれないが。
私は万古宅にいた。あれから猫カフェに戻って、洗濯物を取りに行ったのだ。しかしチャッカリしているのか、洗濯物は櫻永たち
ときをうたうもの 第参話
幼い頃からそうだった。
「ルカ様。こちらがお似合いですよ」
そう言って使用人たちは、男物の着物を差し出した。私は着物を着ることに対して、何も不満はなかった。だから、大人しく従ってきた。
「ルカ様。貴方は次期当主の地位ですから、堂々としていなければなりません」
私は何より完璧を求められた。
「ルカ。分かってくれ。これはルカのためだ」
"私のため”。その言葉は私を縛り付けた。
生まれてきた