Sounds of Sola

この星の、この国の、この街のどこかの片隅にいる誰かの小さな話。 ほぼフィクションの中…

Sounds of Sola

この星の、この国の、この街のどこかの片隅にいる誰かの小さな話。 ほぼフィクションの中に、真実を一粒だけ。 たまにエッセイ、書評なども。

記事一覧

心機一転

書けずにいたnote。 実は昔から書いていた本家とも言えるnoteが存在していて、そちらを更新するのがすこし、息苦しくなってきていました。 そこで、以前から細々と書いて…

Sounds of Sola
3か月前
4

光と影 【Book Review 『眩』】

“北斎“は今や海外でもポピュラーだけれど、その娘のお栄(葛飾応為)については、残された作品も少なければ、生没年も判然としない。 私が彼女を知ったのは、浮世絵好き…

Sounds of Sola
8か月前
3

海峡を渡る風

このところ、日々が過ぎるのがとても早い。 うっかりすると一週間単位で飛ぶように過ぎてゆく。 このnoteも早く書きたかったけれど、上手く構成が纏まりそうになくて1ヶ月…

Sounds of Sola
9か月前
1

緑の街

花道を元気に走る75歳を観に行った。 昨秋はコロナ回復後だったからか随分と背中が小さくなったように感じたけれど、今回はまた背筋も伸びて声もとても良く出ていたし、危…

Sounds of Sola
11か月前
1

今だから

訃報がまた、飛び込んで来た。 何だか眉唾と言われそうだけれど、誕生日のその日、この曲を聴きたくなってYouTubeで何度かリピートしていた。 その日に、逝ってしまったの…

白と黒

昨年末、フェリックス・ヴァロットンの展覧会へ足を運んだ。 その世界観がとても気に入り、普段はそんな事しないのに珍しく展示物のポストカードを購入した。 カード用の…

【novel】葉桜の頃

彼女はいつも屈託なく笑う。 それはもう楽しそうに、一点の曇りも無い、“零れ落ちる“と表現するのが似合う笑顔で。 外苑前の並木道に面したカフェは、いつも通り賑やか…

12

Sounds of Sola

心に浮かぶ風景は、必ずしも自分の日常とは地続きではない。 小さな話のひとつひとつは、私とは別の、この世界のどこかにいる誰かのもの。 だけどいつも書いているnoteに…

8

月の裏を夢みる

このくらいの季節、少し冷たくなった夜風に当たっていると聴きたくなる曲がある。 キリンジ『エイリアンズ』。 リリース直後より、数年経った頃のLiveの方が良い歌い方に…

坂道を上って

私はいま、九州のある都市にいる。 海と山に囲まれた、坂道のある街。 路面電車のある風景。 夜景を観るために坂道を歩きながら、 『今日着いてから、自転車見かけました…

時間厳守

今日、目についてスキしたnoteで、30年前のあの有名な"シンデレラエクスプレス"のCMの考察がされていた。 『現代人は待ち合わせで焦らない』 便利さと引き換えに現代人が…

香りの記憶

自分で言うのもなんだけれど、私はとても鼻が利く。 鼻が利くものにとって満員電車は苦行でしかないので、必ず自分の胸元に好きな香りをつけて、なるべく他の香りを認識し…

思考の原点

良く考える人だと言われる。 そうかもしれない。いつも何か引っかかることをつらつらと考えている。 原点は中1、12歳。 これだけははっきりと分かっている。 本を読んで…

心機一転

心機一転

書けずにいたnote。
実は昔から書いていた本家とも言えるnoteが存在していて、そちらを更新するのがすこし、息苦しくなってきていました。

そこで、以前から細々と書いていたこちらのもうひとつのnoteへ自分の気に入っている記事だけをコピーして、これからはこちらで書いていくことにしました。

投稿日は変更ができないので、こちらのnoteを始めるよりも前の日付のものや、あちらで書いたものなど入り混じ

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光と影 【Book Review 『眩』】

光と影 【Book Review 『眩』】

“北斎“は今や海外でもポピュラーだけれど、その娘のお栄(葛飾応為)については、残された作品も少なければ、生没年も判然としない。

私が彼女を知ったのは、浮世絵好きの同僚が『吉原格子先之図』のレプリカを見せてくれことがきっかけだった。
その絵のあまりの美しさに見惚れてしまい、直ぐに彼女が所蔵しているという杉浦日向子さんの『百日紅』を借りた。

『百日紅』のお栄はまだ嫁入り前で、兄弟子の魚屋北渓(初五

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海峡を渡る風

海峡を渡る風

このところ、日々が過ぎるのがとても早い。
うっかりすると一週間単位で飛ぶように過ぎてゆく。
このnoteも早く書きたかったけれど、上手く構成が纏まりそうになくて1ヶ月半も放置してしまった。

何十年も同じ背中を追い続けてきて、初めて“知らない土地までライブを観に行く“ということになった。
知らない土地へ行ってライブを聴くことは、少しだけ疎外感を味わう行為でもある。
地域ごとにノリ方や盛り上がり方が

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緑の街

緑の街

花道を元気に走る75歳を観に行った。
昨秋はコロナ回復後だったからか随分と背中が小さくなったように感じたけれど、今回はまた背筋も伸びて声もとても良く出ていたし、危なげなく3時間弱のステージをこなしていた。

遠目で良く見えなかったけれど、APCのデニム(多分)、白のスニーカー、Tシャツはネイビーの多分これもAPC→後半は白のツアーTにチェンジ。
スニーカーは以前はスピングルのを履いていたり、某海外

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今だから

訃報がまた、飛び込んで来た。
何だか眉唾と言われそうだけれど、誕生日のその日、この曲を聴きたくなってYouTubeで何度かリピートしていた。
その日に、逝ってしまったのだとは露ほども知らず。

未だにCD化もサブスクリプションも行われていないこの曲は、レコードから上手くYouTubeに上げて下さった方のものを聴くしか手立てがない。

1985年の国立競技場、『All Together Now』。

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白と黒

昨年末、フェリックス・ヴァロットンの展覧会へ足を運んだ。
その世界観がとても気に入り、普段はそんな事しないのに珍しく展示物のポストカードを購入した。

カード用のフレームも白と黒。
雰囲気に合わせてフレームも買い、サイズに合った額に収めて寝室に飾った。
気に入ったものは、いずれも愛情と駆け引き、人間の本性が見え隠れする、ヴァロットン得意の皮肉が籠められた作品。

ひとつは、「怠惰」。
ベッドの上、

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【novel】葉桜の頃

【novel】葉桜の頃

彼女はいつも屈託なく笑う。
それはもう楽しそうに、一点の曇りも無い、“零れ落ちる“と表現するのが似合う笑顔で。

外苑前の並木道に面したカフェは、いつも通り賑やかだった。
気持ちの良いお天気だからとテラスに席を取り、日焼けしないかと心配した僕に、
「日焼け止めしてるし。それに、空も葉っぱの緑も綺麗でしょう?」
と、こともなげに言って彼女は笑った。

一週間ぶりに会った彼女は、この数日に起こった出来

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Sounds of Sola

Sounds of Sola

心に浮かぶ風景は、必ずしも自分の日常とは地続きではない。

小さな話のひとつひとつは、私とは別の、この世界のどこかにいる誰かのもの。
だけどいつも書いているnoteに投稿するのは、なんだか恥ずかしくて。
誰にも言わずに、そっとしまっておきたくて。
書評やエッセイも、心おきなく投稿したくて。

そんな話を“創った“り”綴る”ために、本家とは別にここを開いてみました。
100%をフィクションにしたら、

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月の裏を夢みる

このくらいの季節、少し冷たくなった夜風に当たっていると聴きたくなる曲がある。

キリンジ『エイリアンズ』。
リリース直後より、数年経った頃のLiveの方が良い歌い方になっていると思うので、こちらを。
https://youtu.be/SGmSCtfMp8M

リリースされたのは、20年前のちょうど今頃。
よくラジオから流れていて、決まって聴くのは夜だったように記憶している。
その頃は新卒で入社した

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坂道を上って

私はいま、九州のある都市にいる。
海と山に囲まれた、坂道のある街。
路面電車のある風景。

夜景を観るために坂道を歩きながら、
『今日着いてから、自転車見かけましたか?』
と、案内してくれた年上の友人に訊かれて、そういえば1台も見ていないことに気付く。

坂が多過ぎて、この街の若者は自転車には乗らないという。
高校生くらいだと自転車通学がごく普通にありそうだけれど(かつて私もそうだった)、みんな自

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時間厳守

今日、目についてスキしたnoteで、30年前のあの有名な"シンデレラエクスプレス"のCMの考察がされていた。

『現代人は待ち合わせで焦らない』

便利さと引き換えに現代人が失ったものが沢山あるよね、と読みながら共感した。
携帯やPHSが普及するまで、待ち合わせ時間も場所も事前にしっかり確認しないと不安だったし、当日なにかトラブルがあったら会えない確率も、今よりずっと高かった。

もしかしたら、そ

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香りの記憶

自分で言うのもなんだけれど、私はとても鼻が利く。
鼻が利くものにとって満員電車は苦行でしかないので、必ず自分の胸元に好きな香りをつけて、なるべく他の香りを認識しないよう努めている。

昨日の昼、外出先から帰社する途中の雑踏の中で、20年振りに懐かしい匂いがした。
思わず振り返る。
今すれ違った誰かの中に、“彼”がいたのだろうか?
絶対にすれ違ったらすぐに分かる、という自信はない、20年も経っている

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思考の原点

良く考える人だと言われる。

そうかもしれない。いつも何か引っかかることをつらつらと考えている。
原点は中1、12歳。
これだけははっきりと分かっている。

本を読んでいたら、点いていたTVからコーヒーのCMが耳に飛び込んできた。
あまりに鮮烈な声だったから画面に目を向けて、佇んでコーヒーを飲む男性に釘付けになった。
CM曲を提供し、自らも画面に出ていたその人が、オフコースを解散してソロになったば

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