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部下(従業員)に経営者目線を求めるのは正しいのか? 経営者目線とは

こんばんは、アドバイザーのこうたです。

今回は、知人に「会社で経営者目線をしろ! と言われた」という相談を受けたので、記事を作成しました。




1.前提、本気で求めたらブラック

皆さん、『経営者目線』と言われて何を思い浮かべますか?

元経営者から言わせてもらうと、全部です。


経営者目線を求めるのであれば、当然企業の経営方針が大枠にあります。

しかし、実際に経営戦略に口出ししたら、「余計なことを言うな」と言うでしょう。

じゃあ好きな人材を雇わせてくれるのだろうか?

基本的に経営者は誰よりも給与が高く設定されるものですが、相応の給与に変えるわけでもないですよね?

それとも経営者に残業というシステムはありませんが、それを部下にも強要しようとしているのでしょうか?

そもそも、お金の動きを全て把握できなければ経営者目線で物事を考えられません。


情報や権限を与えず、給与も与えず、ただ責任と能力だけ求めるのは都合が良すぎます。

紐解けば、『経営者目線』とは、経営者の都合の良い言葉でしかないのです。




2.そもそも『経営者目線』が何かを理解しているのか?

企業の代表であれば、理解はしているでしょう。

しかし、部長や課長も部下に『経営者目線を持て』と言うことがあります。

経営者でもない管理職が、そもそも経営者を理解しているのでしょうか?

“先々を見据えること”とは、あらゆる状況や情報を集約させた分析です。

情報の範囲は立場によって異なりますが、それが経営者ともなればかなりの情報量が必要です。

そんな情報量を持っているわけがありません。



もし社長や役員から常に言われているがゆえに部下にも言っているのだとしたら、伝え方は変えたほうがいいと思います。

部長が経営者目線を意識するのはおかしくありません。

しかしそれは権限や情報を有しているのが前提なので、その認識を持つことで対応も変わっていくと思いますよ。




3.経営者目線の意識を持つことは大事

ここまでの解説で、そもそも『経営者目線』というワードが適切ではないことがお分かりいただけたかと思います。

普通に、“先々のことを考える意識を持て”と伝えればいいだけです。

もしくは、『経営者目線』というワードにこだわるのであれば、都合の良い使い方をしなければ問題ありません。

とはいえ、現在自身が抱えている全ての情報を以って、できる限り経営者に近い立場で思考することは無意味なのか?

もちろん、そんなことはありません。



例えば人を雇うのには相当の費用がかかります。

だいたいどのくらいかかるのかは調べれば分かりますし、推測することも可能でしょう。

面接をしている相手に、その費用を払う価値があるか?

将来どのような利益を生み出してくれて、給与や役職のステップアップをどう想定しておくといいか?

実際にそこまで考えて採用する必要はありませんけど、自分の中で考えてみることは無駄ではありません。




4.パナソニック創業者の松下幸之助さん

本記事でお伝えしたいことは以上ですが、『経営者目線』というワードで浮かぶのがパナソニック創業者の松下幸之助さん。

「社員は社員稼業の社長」

「自分は単なる会社の一社員ではなく、社員という独立した事業を営む主人公であり経営者である、自分は社員稼業の店主である」

これを極端に捉えると、「高い意識を持て!」と聞こえてしまいます。

仕事をする上で高い意識を持つのは当たり前ですが、それが経営者レベルの意識を持てと聞こえてしまうと、「給与も違うのに求めすぎじゃない?」と反感を買ってしまうわけですね。

ですが、実は解釈が違います。


「自身の有している(得られる)情報、コネクション、営業力、権限などをフル活用し、常に利益の最大化、もしくはリスクの最小化を図れ」
と伝えているのです。


組織を意識してしまうと、与えられた仕事をこなせばいい、上司の指示通りに動けばいいと、思考に制限がかかってしまいます。

しかし自分ができることを常に考えて行動すれば、想定されていた成果を常に越えられるということです。


私はどの記事でも、「思考を放棄するな」と言っています。

言われたことだけを実行して範囲外のことをしないというのは、思考の放棄と同じです。

ただ私の場合、実際に行動まではしなくていいと伝えていますが、松下幸之助さんは行動もしろとおっしゃっていますよね?




では、なぜ私は行動までは推奨しないのか?

それは暴走して手がつけられなくなるからです。


基本的に上司は、決められた業務を部下に指示することで、その結果を予想します。

失敗したとしてもカバーをするところまで思考しますし、成功すれば想定内ということになるわけです。

しかし、ここで予想を越える動きをされたらどうでしょう?

他の人に任せるつもりだった業務までこなしてしまったり、予想外の思考で想定していなかった失敗をしたり。

管理する者は、常に軌道修正を余儀なくされることになります。


高度な対応力、思考力が管理者に求められるわけですね。

ぶっちゃけ、現実的ではありません。


せめて全員が高度な思考をもって行動していれば、ある程度の対策は立てられるでしょう。

しかし、人のやる気や能力はバラバラです。

10人中5人が高度な思考を持ち、3人が普通で2人が劣っていれば、やはりコントロールは難しくなります。

5人に仕事を任せて、残り5人は雑用なんてこともできませんからね。


『全員が高い意識を持つ』という前提も現実的ではないのです。



では、理想を語るのであれば何がベストか?

高い意識をすでに持っている部下と、その意思を汲んだ上司が理解して協力することです。

部下は自分の範囲を越える場合でも、「こうしたほうがいいと思うんです」と上司に相談し、できる限りの権限や実行の許可を与えるなど。



元も子もないことを言いますが、“全員が”という前提がまず成り立ちません

経営者や管理者のミッションは、如何にして能力ややる気を“全員が”に近づけるかです。


まずは一歩ずつ。

先々のことを考える、つまりは常に思考する癖をつける

この徹底から意識することを推奨します。


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