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ちゃんと書いたやつ

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かなりちゃんと書いたやつです。
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しょうもない話|RATAI

念のためアルファベットで書いてはみたが、要するに裸体のことである。

第一回目から何をとぼけたことを、とお思いの方もいらっしゃるかもしれないが、要介護系女子の生活は裸体と切っても切れない関係にあるのだ。というわけで記念すべき第一回は裸体に捧げておきたい。

人は服を着るのが好きだ。

裸で産み落とされたにも関わらず、生後間もなくして布に包まれるなど、人前に肌を晒すことなく年を重ねていく。生き物の

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しょうもない話|顔

しょうもない話|顔

顔があって驚いた。前回のセキララ裸体告白に続き、またしても何をと思われるかもしれないが、めくるめく要介護の世界では自分の顔を見る機会がほとんどないのである。

そもそも私の生活は、ベッドルーム・トイレ・お風呂、この三地点における必要最低限の行為のみで構成されている。これを要介護のBTO(ベッドルーム・トイレ・お風呂)トライアングルと名付けてみるとして、私は一日中BとTの間を行ったり来たりしている。

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分身

分身

私のもとにぬいぐるみのぴよちゃんがやってきたのは去年の6月頃のことだった。突然の奇病になって打ちひしがれている私のために家族が近くのショッピングセンターから買ってきてくれた。ぴよちゃんが来る前に何匹かのぬいぐるみがやってきたけど、抱き心地、触り心地、その両面を満たしていたのはぴよちゃんだけだった。私は毎日ぴよちゃんを抱いて過ごすようになった。寂しいから、だけの理由ではなくて、横向きに寝る時にクッシ

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フィッシュアンドチップスの日 〜イギリス料理のおもいで〜

フィッシュアンドチップスの日 〜イギリス料理のおもいで〜

今日の晩ごはんはフィッシュアンドチップスだった。いろいろと偶然が重なり、さらには私のわがままを聞いてもらった結果訪れた幸運である。幸運の女神はこういう思いがけない場面で突然微笑んでくるのだ。私は突然の微笑みに心躍らせながら買い出しから母が帰って来るのを待っていた。今日はフィッシュアンドチップスだ!

フィッシュアンドチップスとはイギリス好き的には言わずと知れたブリティッシュソウルフードで、どんな食

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アイスランドの朝焼けと、いつもの部屋の夕焼けと。

アイスランドの朝焼けと、いつもの部屋の夕焼けと。

世の中にはありとあらゆる楽しいものや綺麗なものが溢れているけど、空ほど面白いものはないと思う。ふと見上げた空の美しさにもハッとさせられるけど、「さあ空でも見るかな」と腰を据えて何十分もじっくり眺めると、これはもう何物にも変えがたい見応えがある。

雲は流れたり止まったりして姿形を変えて、太陽は少しずつ傾いていつの間にか朝は昼になり、昼は夕方になり、夕方は夜になっている。そのうち月が現れて、「今日は

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イギリス音楽体験記|ウォータールーの夕暮れ

イギリス音楽体験記|ウォータールーの夕暮れ

イギリス留学も終盤に差し掛かった頃のことである。半年住んだロンドンにもすっかり慣れた一方で、私は不完全燃焼に陥っていた。思えば冬の間中うつ状態で家に籠もりきりで何もしていない。学校はサボり倒したし、罪悪感で死にそうである。せめて最後に一花咲かせて帰りたい。故郷に錦を飾りたい! いやまあロンドンは故郷じゃないけど、とにかくこのままでは終われないという焦燥感があった。

そんな折に日本人の友達に教えて

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尻道楽

尻道楽

年を取ってくるとだいたい話題の中心は"シモ"の方に寄ってくる。"シモ"という大きな括りで表現すると分かりにくいが、私が語ろうとしているのは衛生面の方のシモの話である。つまり、尻のことだ。高齢者といえばシモ問題と言っても過言ではない。介護の現場ともなると、シモ問題の存在感はかなりのものであろう。人間、尻無くしては生きられないのだ。

私がもしも年相応(現在三十歳)のはつらつとした若い女性であれば、自

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セクシー老若介護|一糸まとわぬすっぽんぽん!全裸と私と、時々、オトン。

セクシー老若介護|一糸まとわぬすっぽんぽん!全裸と私と、時々、オトン。

30歳にもなって、父親にお風呂に入れてもらっている。まさかこの歳になって衛生面でまで父親の世話になるとは思ってもみなかった。3歳の頃の私が聞いたら笑うであろう。もっとも、3歳の頃の私にそこまでの理解能力があるとは到底思えないが、3歳児というのはだいたい、むやみに泣いているかむやみに笑っているかのどちらかだ。なので、むやみに笑う確率としては五分五分だろう。泣くか笑うかのルーレットだなんて、感情の振り

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ブラまっしぐら|ロンドンのおばさんとコインランドリー

ブラまっしぐら|ロンドンのおばさんとコインランドリー

ロンドンに住んでいた時のことである。私の下宿先には洗濯機が無かった。いや、正確には洗濯機自体は存在していたのだが(それも部屋の目の前にあるバスルームに)、同居する大家さん以外は使ってはいけないということで、私は仕方なくコインランドリーに通っていた。お風呂やトイレを使うたび、その場に鎮座する洗濯機が視界に入り、こんなにも近いのにこんなにも遠い…と、恨めしげな目をしていたが、それも今となっては良い思い

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