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第4回〜真夜中の雨音と僕が見た夢〜
夜の雨音は静かに、僕を眠りの淵へと誘う。
アスファルトを叩く軽い音や、走る車の音なんかに耳を澄ませてみると、なんだか落ち着かなかった気持ちも安らかになってくる。目を閉じると、幼少期に部屋から見下ろした、雨に濡れてキラキラ光る夜の環状線の姿がありありと浮かんでくるのだ—。
ある日の真夜中、僕は眠れずにいた。明け方に台風が直撃をする予報であった。テレビを点けると、台風情報と選挙速報が代わる代わ
第3回〜無意味な無限大〜
「おい、こうし。さっきから黙っちゃって何考えてんだよ。…なぁ?」
俺の人生はあの時に終わってたんだよな。いや、もっと前か。わかんねぇや—。
頭の中で考えていただけか、口に出して言ったのか、自分でも分からないくらいに俺は酔っていた。
俺はいつからか、この店で夜な夜な飲んでは過去を思い出し、過去に囚われていた。
人生のターニングポイントは高校2年生の頃にあったと思う。その転機の良し悪しは別
第2回〜あるのは果たして希望か〜
「アナタが家を出て行くと淋しくなるわねぇ。私の話し相手がいなくなっちゃうわ。」
母は父と離婚してから、彼女なりに息子2人を必死に育ててきた。父は時々この家へ顔を出し、3人に向かってあれこれ厳しい事を言って帰っていったので、僕はまるで子供3人で時間を過ごしてきた様な感覚を抱いている。ただそれは、息子たちが精神的な圧力に耐えられるように与えた緩衝材のような役割を、母が全うした結果だったのかもしれ
第1回〜あの頃見た夢は〜
「一生懸命やったし、どうやら評判のいい大学みたいだから、ここに決めようと思ってるんだ。それで入学金が…」
2月までの戦いを終えて、表情から安堵感が滲み出ている息子は、大学進学に向けての手続きの為に私の元へ訪れてきた。
「悠司は金のことになると丁寧だな、まったく。」
「だってお金ばっかりは今の自分じゃどうにも出来ないからね。それにほら。締切日が今週末なんだよ。」
差し出された振込用紙には確か
言葉にできない想いをつらつらと
僕は数年前、自由を勝ち取りたい一心で実家を出た。幼少期から大人になるまでプライバシーのない狭いマンションで暮らしていた僕は、漠然と一人暮らしを始めることが自由への繋がりだと思っていた。
満を辞して得た新生活で安らぎを感じたのも束の間、僕はお金や時間の制約に囚われてしまった。慣れない家事と向き合いながら浪費する時間、生きていく為だけに必要なお金。
実家で暮らしていた頃には感じなかった自由が過去に