記事一覧
バニーボーイズ【ショートショート】
本日、とある喫茶店でバニーボーイの会というものが行われた。その喫茶店には、八人のバニーボーイが集まった。この会の目的は、それぞれがバニーボーイとしての悩みを語り合い、お互いに慰め合おうというものだった。集まった六人は、見た目で特徴が分かったが、あとの二人はこれといって特徴はなかった。
そして、最初のバニーボーイが話し始めた。
「皆さんこんにちは。僕は、生まれつきバニーボーイとして育ちました。僕
ショッピングパニック【ショートショート】
今日私は、ショッピングモールへ六歳の息子と一緒に買い物に来ていた。息子の為に子供服の店へ行く。
「何か欲しいのある?」
「これが欲しい」
そう言って指差したのは、白いポロシャツだった。
「これ? 今着てるのと同じじゃない」
「じゃあこれ」
それは、緑の帽子だった。
「これも、今被ってるでしょ」
「じゃあ、何もいらないよ」
「そう。じゃあ、次はお母さんの買い物に付き合って」
そう言って、婦人
美女水【ショートショート】
私は、自分で言うのもなんだがブサイクだ。周りの美人の友人が羨ましい。今日もオフィスでは、美人の同僚がチヤホヤされている。
「今度一緒に食事しませんか?」
「映画一緒にどうですか?」
そんな言葉は言われたことがない。そんな私は、今日も仕事を終え帰路に着く。すると、見慣れないコンビニがあった。なんとなく惹かれ入ってみると、おすすめ商品というものがレジ前に置かれていた。
「美女水?」
私は思わず手
憑かれる【ショートショート】
「ただいまー」
旦那の声が聞こえる。旦那はたった今仕事から帰ってきた所だ。
「ごめんね。遅くなって。今からご飯作るよ」
私の旦那は、仕事をしている上に、家事までやってくれるのだ。おかげで私は、大助かりだ。
「何が食べたい?」
「うーん。麻婆豆腐とか」
旦那は冷蔵庫を覗いた。
「豆腐がないや。青椒肉絲でいい?」
「うん。いいよ」
そして、旦那は手際良く料理を始める。
シャーシャー
野菜を
月の幻【ショートショート】
いつものように朝目覚め、いつものように会社へ行く。今日もいつもと変わらない日になる、、はずだった。
会社へ向かうため、通勤ラッシュの混み合った時間に、駅で電車を待った。ベルと共に電車がやってきて乗客は電車へ乗っていった。しかし、一番前に並んでいた人が、何故か微動だにせず立ち尽くしていたのだ。僕は、おかしいと思いその客に声をかけた。だがその客は、無反応だった。
電車が出発するので僕は電車に乗っ
コトバク【ショートショート】
私は最近、うまく言葉が話せない。
「今日のお米なに?」
私は、お母さんに聞いた。
「ご飯のこと?」
「そうそう!」
こんな感じで、言いたい言葉が出てこないのだ。まだ私は若い。頭がボケ始めたわけではなさそうだ。
「まだ考えてないわ。それより早くしないと、遅刻するわよ」
お母さんに急かされ、私は学校へ向かった。
「およよ〜」
私は友達を見つけて、挨拶をした。
「なにその挨拶!」
「なんかうま
流星の真実【ショートショート】
「今夜はジャコビニ流星群が夜空を彩るでしょう」
テレビでキャスターが言った。かなこは母親に向かって言った。
「ねえ、今日キャンプしようよ」
「キャンプ? どうして?」
「ジャコビニ流星群が見えるからだよ」
「そっか。近くのキャンプ場を探してみましょうか」
こうして、この親子は夜にキャンプに行くことになった。調べると、家から徒歩一時間のところにキャンプ場があることがわかった。そのため、二人は上着
バーチャルハピネス【ショートストーリー】
何も良いことがない。私はつい最近、会社をクビになった。そして、そのせいで妻に別れを告げられた。まあ、理由はそれだけではないかもしれないが、主な原因はそれだろう。娘は、妻の方について行ったので、私は四十歳にして独り身になった。思えば人生、何も良いことがなかった。よくここまで生きてこれた。それだけで、自分を褒めてやりたい。
そんな私は誰もいない寂しい家で、スマートフォンで、ネットサーフィンをする。
健康生活【ショートショート】
ユキコは、毎日栄養バランスの取れた食事を心がけている。サラダに味噌汁、十六穀米。どれも健康のために行なっている。しかし、旦那のサブローはそんな飯は食えるかと言って、宅配ピザや牛丼など毎日食べたいものを食べている。そんな旦那は、運動もしない。食っちゃね食っちゃね不健康まっしぐらだ。
ユキコは最近、ヨガに通い始めた。ヨガに通うと、体中の血流が良くなるのだ。
「はい。次は大蛇の構えー」
インストラ
福息子【ショートショート】
「今日のご飯は、もやしとお米。あんたの病気が治れば、もっと美味いものが食べられるんだけどねえ」
ある夫婦の晩ごはんは、質素倹約だ。旦那が病気で満足に働くことができず、貧乏暮らしをしているのだ。
「すまんなあ。頑張って治して一生懸命働くよ」
旦那はそう言うが、病気が治る兆候はなかった。そんな中、妻はパートで家計を支えるのであった。
そんなある日、大変なことが起きた。妻に生理が来ないのだ。
「あ
左目の一族【掌編小説】
私の一族は、代々右目が見えない。なので私もお母さんもおばあちゃんも、右目が見えない。だから、私も子供を産めば当然その子は、右目が見えないのだ。だけど、私には今彼氏がいる。そして、後に結婚も考えている。私は彼氏に一族のことを伝えていない。なので、彼氏は私が右目が見えないことも知らない。そんな状況の中、私のお腹に子供ができた。その事を彼氏に伝えた。
「ほんとに?」
「うん」
「やったじゃん!」
「そ
ベビーQR【ショートショート】
立花産婦人科。その産婦人科では、今までに死亡事故は起きたことがない。そのほかの医療事故も一切起きたことがない。とても優れた産婦人科だ。その産婦人科で、たった今一人の女性が出産を控えていた。陣痛が激しく、分娩室へと運ばれていく。
分娩室へ入ると、夫がいた。
「みさこ! 頑張れよ!」
みさこは、必死に気張った。
「落ち着いて呼吸してください!」
助産師が言う。激しい痛みの中、徐々に顔が出てきた
夢人生プログラム【ショートストーリー】
25歳。俳優志望。それが俺のプロフィールだ。明日のスターを夢見て、今日も俺は演技のレッスンに通う。
「だめだめ! もっと感情を込めて!」
先生の厳しい指導が始まる。
「込めてるつもりなんですけど、、」
「つもりじゃだめだろ!」
「すいません、、」
この日も、厳しく怒られてレッスンは終わった。レッスンを終えると、スマホでオーディション情報をチェックする。
「このオーディション行ってみるか」
消えゆく町【ショートストーリー】
「遊ぼー!」
コウタの家へアユミがやってきた。
「いいぜ!」
コウタの家は、コウタの一人暮らし。でもそれは、アユミも同じ。ひとりぼっちの者どうし仲良くやっている。すると、コウタが言った。
「コウスケとケントも誘おうよ!」
これはいつもの流れで、毎日のようにこの四人は遊んでいる。四人ともまだ子供なのに、家では一人暮らしだ。それでも立派に暮らしている。
「コウスケ! 遊ぼう!」
コウタは、コウ
桜と呼んで【ショートストーリー】
とある大学の書道サークル。そのサークルは、近々学園祭を控えていた。そして、部屋で学園祭に出す出し物を決めていた。
「木下、司会やって」
健治が言った。
「分かったわよ。なんか案ある?」
木下桜が言った。
「そうだなあ。たこ焼き屋やりたい」
真美は言った。
「賛成! 健治はそれでいい?」
「いや、俺は言葉売りをやるよ」
「なにそれ」
「自分の中から湧き出た言葉を、書にして売るんだよ」
「いい