akisan

大学院で北朝鮮の政治を研究しています。趣味はディスカッションを作ることです。

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記事一覧

少しだけ離れた場所から東京をながめる

東京に住んで2年半になる。今住んでいるのは職場にも大学にも近い一石二鳥な場所だ。とても便利だ。しばらくは東京に住もうと思っている。 それでもこの都市に自分の望ま…

akisan
3週間前
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バカな自分を許してこれからもバカのまま

2024年2月から仕事に復帰した。七ヶ月ぶりに働いてみると実感する。人と人のつながりが社会を作り出しているのだと。 ビジネスの現場では、「あの人は大学時代の先輩だっ…

akisan
1か月前
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沈黙が正解の世界で

黙っておくことが正解な世の中だとつくづく感じる。日々変わりゆく「ポリコレ」の基準に適応し続けることなど不可能で、いつどこに地雷が埋まっているのかわからない。 可…

akisan
2か月前
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悲しくても「これも勉強」と開き直るのだ

生きていれば悲しいことがそれなりにある。具体的な出来事に反応した悲しみもあれば、なんとなく抽象的な悲しさもある。 さまざまな種類の悲しみを私は「これも勉強」と開…

akisan
3か月前
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【超短編】アジア国に魅せられて 1/1

就活は気の進まない儀式であった。梅雨の湿気でジメジメした大手町にリクルートスーツで歩く行為そのものをなるべく避けたかった。 人事担当者の「やりたいことは何ですか…

akisan
4か月前
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新年の辞

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。さっそく震災と航空機事故が立て続けに発生し、少なからぬ衝撃を受けました。自分の人生とそれら…

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4か月前
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北朝鮮政治修論執筆大反省大会

2023年12月8日に修士論文を提出した。この記事では修士論文の提出に曲がりなりにも成功した大学院生の「お気持ち」に依拠しながら、修論執筆を振り返ることにする。 **…

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5か月前
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論文と気ままな備忘録の狭間より

現在は来月提出の修士論文の作成に追われている。しかしこのプラットフォームの運営は「11月30日までに記事を書け」とお構いなく急かしてくる。 11月30日までに記事を投稿…

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6か月前
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友だちとの「深い話」はどうすればできる?

ある友人と代官山の蔦屋書店でおしゃべりをしていた。私にも代官山に入れる権利くらいはあるようだ。 その友人は「友だちとの『深い話』ってどうすればできるんですかね」…

akisan
6か月前
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私たちは「合理的」になぜ魅了されるのか?

合理的であることに対して批判的な文化人が増えてきたように思う。人間は弱い存在でしばしば感情に基づいて行動する。だから過度な合理性の追求には意味がない。そんな批判…

akisan
7か月前
13

「とにかく行動しろ!」と言う前に

これまで自分自身の日常の中で自明として受け入れていたことについて、ふと立ち止まって考えてみようとする時がある。それは友人が何気なくつぶやいたことをきっかけとする…

akisan
8か月前
13

排除しないとやさしくできない

排除のない世界ができるとよいなと、これまでぼんやり考えていた。私はいわゆるマイノリティと呼ばれる出自を持つ。そのため親以上の世代からは自分たちが経験してきた差別…

akisan
8か月前
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それでも北朝鮮をケアし続ける

私は日本と北朝鮮が国交正常化すればよいなと思っている。それは日本がかつての植民地との折り合いをつけ、新しい時代の地域秩序づくりを主導することを期待しているからだ…

akisan
9か月前
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残すべき記憶とは何か

新潟県は北朝鮮との関わり合いが非常に深い土地だ。横田めぐみさんをはじめとする複数の拉致事件が発生したのも新潟県。日朝の交流が活発だった時代、新潟と北朝鮮の間には…

akisan
11か月前
8

土曜の夜なんてみんなそんなもん

他の20代男性同様、生活力が皆無のオワコンな暮らしをしている。そろそろ夕飯でもと思い、ヨッコラセと冷蔵庫を開けた。案の定、オイコスとザバスしか入っていない。おかし…

akisan
11か月前
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あなたは愛国者ですか

*** サムネイル画像に映された二つの石の名は「さざれ石」である。日本国歌「君が代」の中で「いわおとなる」と歌われる「あの石」だ。「さざれ石」は、細かな石灰石が…

akisan
1年前
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少しだけ離れた場所から東京をながめる

少しだけ離れた場所から東京をながめる

東京に住んで2年半になる。今住んでいるのは職場にも大学にも近い一石二鳥な場所だ。とても便利だ。しばらくは東京に住もうと思っている。

それでもこの都市に自分の望ましい生が開かれているのかと言われれば、確信は持てない。特に誰かと時間を気にせずに気軽に座って話せる場所がない、というのが致命的だ。

「排除ベンチ」に象徴されるように、都市では治安維持の大義名分のために人が座る場所が排除されてきた。

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バカな自分を許してこれからもバカのまま

バカな自分を許してこれからもバカのまま

2024年2月から仕事に復帰した。七ヶ月ぶりに働いてみると実感する。人と人のつながりが社会を作り出しているのだと。

ビジネスの現場では、「あの人は大学時代の先輩だった」とか「ゼミで同じだった」とかで情報収集がスイスイ進む場面をよく見かける。

自らの過去は現在の自分の資源となる。会社の中で自分の目標を達成するために、自らのつながりを(常識の範囲内で)動員することは奨励される。だから「シマッタ。大

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沈黙が正解の世界で

沈黙が正解の世界で

黙っておくことが正解な世の中だとつくづく感じる。日々変わりゆく「ポリコレ」の基準に適応し続けることなど不可能で、いつどこに地雷が埋まっているのかわからない。

可視化された承認欲求を追い求めることは禁断の果実だ。デジタルな発言はタトゥー化し、私たちを永遠のヤンキーにさせる。地雷を踏めば最後、右左から縦横無尽に矢が打ち込まれてしまう。だからみんな「猫かわいい」くらいしか言えなくなる。

黙っておくこ

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悲しくても「これも勉強」と開き直るのだ

悲しくても「これも勉強」と開き直るのだ

生きていれば悲しいことがそれなりにある。具体的な出来事に反応した悲しみもあれば、なんとなく抽象的な悲しさもある。

さまざまな種類の悲しみを私は「これも勉強」と開き直ることで乗り越えてきた。その開き直りは悲しみの中に前向きな要素を見つけ出そうとする必死のあがきである。虚勢マシマシである。滑稽だ。滑稽だ。今回の文章もだいたい冗談である。

今週の月曜日から木曜日にかけて韓国の一人旅に出かける予定であ

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【超短編】アジア国に魅せられて 1/1

【超短編】アジア国に魅せられて 1/1

就活は気の進まない儀式であった。梅雨の湿気でジメジメした大手町にリクルートスーツで歩く行為そのものをなるべく避けたかった。

人事担当者の「やりたいことは何ですか」といった問いかけに対し、私を含む学生陣は貧弱な応答しか持ち合わせないことを見抜いていた。

しかし私が私の中にあるはずの「やりたいこと」を的確にえぐりだす手段や資源を持ち合わせぬことも確かであった。

シニカルな自分である。就活を通じて

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新年の辞

新年の辞

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。さっそく震災と航空機事故が立て続けに発生し、少なからぬ衝撃を受けました。自分の人生とそれらがどのように関連するのかもわからぬまま、情報獲得に躍起になり、精神衛生を乱しました。難しいものです。

一年の計は元旦にあり。多くの人が目標や計画を立てるお正月にこのような震災が起こることの皮肉さも痛感しました。自分ではどうしようもない偶然

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北朝鮮政治修論執筆大反省大会

北朝鮮政治修論執筆大反省大会

2023年12月8日に修士論文を提出した。この記事では修士論文の提出に曲がりなりにも成功した大学院生の「お気持ち」に依拠しながら、修論執筆を振り返ることにする。

***

私は2021年4月に大学院に入学した。しかし研究室に北朝鮮の内政を研究する学生がいないことを知った。困ったものだと思いながら、履修登録を済ませた。

修士一年は授業を中心とせざるを得ず、労働をする必要もあったため、自らの研究に

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論文と気ままな備忘録の狭間より

論文と気ままな備忘録の狭間より

現在は来月提出の修士論文の作成に追われている。しかしこのプラットフォームの運営は「11月30日までに記事を書け」とお構いなく急かしてくる。

11月30日までに記事を投稿すると18ヶ月連続となるらしい。何であれ続けることは素晴らしいことだ。そんな私の信念に漬け込んだ素晴らしいリマインドである。

そのリマインドは気ままに文章を書く感覚を思い出させた。日々の経験に反応しながら書くことを楽しみたい、と

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友だちとの「深い話」はどうすればできる?

友だちとの「深い話」はどうすればできる?

ある友人と代官山の蔦屋書店でおしゃべりをしていた。私にも代官山に入れる権利くらいはあるようだ。

その友人は「友だちとの『深い話』ってどうすればできるんですかね」と言った。

なるほど。「深い話」ができるほどの友人関係は自分の生を輝かせる偉大な人間関係に違いない。

彼は「『深い』話を通じて、友人と『深く』つながりたい」と願った。これは私のようなシニカルな人間すら抱く、ごく自然な感情であると思う。

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私たちは「合理的」になぜ魅了されるのか?

私たちは「合理的」になぜ魅了されるのか?

合理的であることに対して批判的な文化人が増えてきたように思う。人間は弱い存在でしばしば感情に基づいて行動する。だから過度な合理性の追求には意味がない。そんな批判だ。

またそこではしばしば「つながり」や「アート」といったものが称揚される。それらは「合理的」へのアンチツールとなっている。「一見無駄に見えるけど実は大切なこと」が文化人の心の拠り所になっているのだ。

それでもやはり私たちは合理的である

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「とにかく行動しろ!」と言う前に

「とにかく行動しろ!」と言う前に

これまで自分自身の日常の中で自明として受け入れていたことについて、ふと立ち止まって考えてみようとする時がある。それは友人が何気なくつぶやいたことをきっかけとするかもしれない。もしかしたら何かの書籍に問われることによってかもしれない。

そのような時に自分なりの思考を進めることができるか否かはおそらく人生の展開に大きな影響を及ぼす。なぜならば、思考を進めることそれ自体が自らを肯定することにつながるか

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排除しないとやさしくできない

排除しないとやさしくできない

排除のない世界ができるとよいなと、これまでぼんやり考えていた。私はいわゆるマイノリティと呼ばれる出自を持つ。そのため親以上の世代からは自分たちが経験してきた差別や排除の現実をよく聞かされていた。その反動で「排除(差別)のない世界を作る」ことを掲げることは耳ざわりもよく、自分の人生に「宿命」を持たせる上でも悪くないテーゼであった。

ちょうどその時、世の中では「これからの時代は対話が重要」と叫ばれて

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それでも北朝鮮をケアし続ける

それでも北朝鮮をケアし続ける

私は日本と北朝鮮が国交正常化すればよいなと思っている。それは日本がかつての植民地との折り合いをつけ、新しい時代の地域秩序づくりを主導することを期待しているからだ。

戦後の日本は朝鮮戦争を契機の一つとし高度成長を実現し、豊かな社会を作り上げた。曲がりなりにも現在世界3位の経済規模を誇る先進国であるならば、そろそろかつての植民地地域との折り合いをつけてよい頃合いかと思う。

それがたとえ核・ミサイル

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残すべき記憶とは何か

残すべき記憶とは何か

新潟県は北朝鮮との関わり合いが非常に深い土地だ。横田めぐみさんをはじめとする複数の拉致事件が発生したのも新潟県。日朝の交流が活発だった時代、新潟と北朝鮮の間には不定期ながら旅客・貨物船(『万景峰号』)も就航していた。

今年5月、私は新潟県を訪れた。今でも新潟県に濃厚に残っているであろう北朝鮮との関わり合いを巡ろうと考えたからだった。結果的に今回の訪問は「残すべき記憶とは何か」という壮大な問いを喚

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土曜の夜なんてみんなそんなもん

土曜の夜なんてみんなそんなもん

他の20代男性同様、生活力が皆無のオワコンな暮らしをしている。そろそろ夕飯でもと思い、ヨッコラセと冷蔵庫を開けた。案の定、オイコスとザバスしか入っていない。おかしい。一回閉めてもう一回開けても同じだった。冷蔵庫が人工タンパク質で埋め尽くされている。絶望的。

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土曜日の夕飯にUber Eatsを使うのもみじめなので、近くの魚屋に行って1200円のマグロのカタマリを買ってきた。店を出る時に、

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あなたは愛国者ですか

あなたは愛国者ですか

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サムネイル画像に映された二つの石の名は「さざれ石」である。日本国歌「君が代」の中で「いわおとなる」と歌われる「あの石」だ。「さざれ石」は、細かな石灰石が長い年月を経て雨水と触れ合い、ひとつの大きな岩の塊になったものである。悠久の時をかけて小石が積み重なり、大きな岩となるさまが日本国が持つ長い歴史の象徴とされている。だからこそ、「さざれ石」が新潟縣護國神社の境内にあることは偶然ではない。新

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