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日常の話

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最近読んだ本や見た映画など日常のことについてまとめています。
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語る「べき」ことはないが語られる状況にあるということ

語る「べき」ことはないが語られる状況にあるということ

言葉のキャッチボールをするのはたいていの場合、初対面の誰とでもできるが、それが自身の望む力加減や方向性かどうかは相手が限られてくる。思っていた反応がなかったり、何も言葉が届いていないと感じることもあれば、逆に相手の言葉がじぶんの耳からすり抜けて別のことに注意が向いてしまうことだってあるだろう。

それでも語ることを諦めず、向き合い続ける。そこに人間性が問われているのだと信じながら。



怒涛の

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分岐点といえるほど大それたものではないけれど、人生の選択肢の話。

分岐点といえるほど大それたものではないけれど、人生の選択肢の話。

冬が近づくと街もスーパーマーケットもクリスマス装飾に飾られて、あっという間に年の終わりを感じさせる冬。

あの人生の分岐点で、タイミングで、電車に乗って、あるいは飛行機に乗って、または徒歩であの場所まで行って、あの人たちに会いに行って、もしくは偶然会って。たくさんの選択肢を選び決め覚悟を取ってきたじぶんの、現在の立っている場所をいま振り返って考える。



例えば、「ヴァンショVin chaud

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気づかずに通り過ぎることだけは避けたい愛を書き連ねる

気づかずに通り過ぎることだけは避けたい愛を書き連ねる

・夏の早朝の透き通った空気

夏の朝はやく、5時でも6時でもいい。
まだ暑くなる前の透き通った空気、騒音のない静かな雰囲気、誰にも汚されていない時間帯。まだ鳥も人間も目が覚めていないような、世界中がまだ眠っているような、そんなぽっかり穴があいたような空間にただひとり、起きる。この世界をはじめるのはわたしだ、と高らかに宣言しても誰も聞いていないような、そんな見放された時間がとにかく好きだ。

・ヨー

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カナダの映画監督グザヴィエ・ドランが、すべてのはじまりだった。

カナダの映画監督グザヴィエ・ドランが、すべてのはじまりだった。

グザヴィエ・ドランが映画監督としての仕事から身を引く。

と、聞いたのは7月8日のことだった。

引退発表につながる、スペイン雑誌の取材で彼の言葉として引用された
「アートは役に立たない。映画に打ち込むのは時間の無駄です」という言葉は、わずかばかりの悪意をもってソーシャルメディアで広がり、彼自身の映画業界からの撤退をさらに大きく知らしめることになった(それは翻訳のあやで、実際は本人が詳しく自分の言

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たいしたことある日々のこと230730

たいしたことある日々のこと230730

暑苦しくて眠れない日々が続いていたのに、7月後半になると朝6〜7時なんか肌寒いほどの気温になり、半袖で外に出たら寒くて鳥肌がたってしまうようなプロヴァンスの日々。

暑さのピークは越えたのだろうか。でも日中は暴力的な日差しが続き、買い物に行く片道十分程度の移動を繰り返すだけでも腕も足もしっかりと黒くなっている。まるで焦げたバゲット(ごっつい全粒粉パン?)を4本、身体にぶら下げているよう。

そもそ

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どれだけ行きたい方向があっても風に乗らなければその場所に向かうことはできないという話

どれだけ行きたい方向があっても風に乗らなければその場所に向かうことはできないという話

フランス生活にもだいたい慣れて友だちもでき、なおかつ仕事もある程度落ち着き始め、ふと「新しいことを全然していないな」「なんだかルーティンだな」と感じるようになったので、がつんと壁を破るようなことを実践してみようと申し込んだウィンドサーフィンのスタージュ(集中レッスン)。

ウィンドサーフィンはフランス語ではPlanche à Voile という。帆のあるボード、という意味だ。日本だと湘南とか逗子・

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たいしたことある日々のこと230628

たいしたことある日々のこと230628

弁護士訪問の日のことである。

その事務所の廊下はまったく電気がついていなかった。探している部屋の扉に書いてある名前すらも携帯電話の光をつけなければわからないくらいだ。わたしたちはもしかすると騙されてしまったのだろうか、そんな不安が頭をよぎる。三階のそのフロアの端から端までを探しても見当たらず、一度地上階に戻る。そして住人だろうか、あるいはその質問をよく受けるのか、学生のような若い男の子が言った。

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たいしたことある日々のこと230428

たいしたことある日々のこと230428

「じぶんの目の前に見えている世界だけが、すべてではない」。

よく聞くありきたりな文言ではある。だがしかし、それを実際に腑に落ちる感覚として理解できるひとはどれだけいるのだろう。

そうだね、と納得をしながらも、本当に知らない世界に対しては「へえ」といった驚きや衝撃だけでなく、または憎しみや怒り・悲しみなどの得体の知れない感情が生まれることも同様にあるはずだ。そうすんなりと、知らない世界があるんだ

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たいしたことある日々のこと230407

たいしたことある日々のこと230407

いつだって書きたい出来事や些細な記録は沢山頭のなかに浮かぶ。

ささやかな感情の欠片は確かに世界に存在していて、それらはやかましく「どこかで表現してくれよ」と叫んだり喚いたりもしているのだけど、だからしょうがないかとぼやきつつ「わたし」が物理的に時間を作り手を動かし文字として落とし込む。
また、言葉にしたい思いは温泉のようにこんこんと溢れんばかりとめどなく湧き、なみなみと地平へ注がれ続け、そこにじ

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たいしたことある日々のこと221128

たいしたことある日々のこと221128

2022年の11月がそろそろ終わろうとする。

久しぶりに何かを書きたくなってnoteの下書きページを開いてみたら、投稿せずに終わった8月のとある書きかけの文章を見つけて、そこから過去の記憶をひとつひとつ紐解いてたどり寄せると2020年からの日々は、たいしたことがあることばかりだったと思い返し、今回のタイトルは「たいしたことある日々のこと」とすることにした。

そう、たいしたことばかり起きていた。

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断片的な思考の備忘録と、きらきらしていないほうのプロヴァンスの日常について

断片的な思考の備忘録と、きらきらしていないほうのプロヴァンスの日常について

フランスにいるといろんな国籍のカップルと話す機会に恵まれるのだけど、アルジェリアにルーツのある女性(ほぼ同い年)と話をした時、彼女の自覚的か無自覚か「男性を立てる」姿勢が言葉の節々に出ていたの、どこか昔の日本のようで、アラブ社会は父権的家族制が根強くあるんだよなあと改めて思い出した。

仕事は生活のためで別に好きでもないという彼女に「この先どんな仕事がしたい?」と聞くと、「わからない。何かの勉強を

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たいしたことない日々のこと220618

たいしたことない日々のこと220618

プロヴァンスはフランスの一部であるけれど、プロヴァンスがイコール・フランスそのものになるとは限らない。

いわゆる多くのひとが一般的に想像する「フランス」は「パリ」のイメージで、プロヴァンスははっきりいってそういうものとは真逆のような気すらする。オスマン様式のアパルトマンに囲まれた都市ではないし、メトロもエッフェル塔も凱旋門もない。エクス・アン・プロヴァンスなら高級感のある雰囲気は感じられるけれど

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たいしたことない日々のこと220608

たいしたことない日々のこと220608

先週末、折り紙のワークショップを近郊の街でやってきた。

ひとりで老若男女のフランス人を相手に、とはいえ主に小さい子どもが多くて2日間で50人以上折り紙を教えただろうか。2週間前にも同じようなイベントを実施したから、慣れていた部分もあったし今回はより静かな環境で、ゆったりと時間をとって実施できたのも良かった。総じて充実した週末。

そして、心に響くような言葉を抱えきれないほどもらったのだった。

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たいしたことない日々のこと220325

たいしたことない日々のこと220325

ほんとうは仕事が詰まっていてnoteで文章など書いている場合ではないのだけど、なんとなく書きたくなったのでそういう時は頭の中が言葉で満ち溢れてぽろぽろとこぼれてしまっている状態だから、書きたいことだけ書いてみよう。

まいにちのことを、振り返ろうとする試みの意義

10年以上続いた日記を書かなくなって、少しの罪悪感とすっきりした感覚と。ここ最近は振り返るのもなんだか無意味だなあという気持ちになって

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