岡部えつ

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  • 岡部えつ|エッセイ|Essay

    岡部えつ(小説家)のエッセイです。不定期に更新中。

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    GIベビーであるベルさんと、拙著『母をさがす ― GIベビー、ベルさんの戦後』(亜紀書房)に関する記事です。

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    過去に雑誌や作品集などに掲載された短編を、加筆修正して掲載しています。 既刊の単行本一覧はこちら→ https://e-okb.com/

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『怖いトモダチ』に出会ってしまったら

社会生活に支障をきたす"性格"刊行早々にTBS『王様のブランチ』に取り上げてもらったこともあり(→そのときの様子はこちら)、重版も決まって嬉しいスタートとなった新刊…

岡部えつ
1か月前
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インスタで、自著を朗読

首都高を走る車の後部座席で、隣に座っていた姪がスマホを車窓の外に向けて撮影し始めた。 小学四年生の彼女は、最近インスタグラムのアカウントを持った。正確には親がと…

岡部えつ
3日前
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『母をさがす─GIベビー、ベルさんの戦後』出版イベントの収録をしました

4月14日(日)、『母をさがす──GIベビー、ベルさんの戦後』出版イベントを収録をいたしました。 ゲストは、GIベビーであるベルさんこと堤麗子さんと、彼女を長年支えて…

岡部えつ
12日前
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【質問を募集します】『母をさがす』出版記念イベントに向けて

『母をさがす——GIベビー、ベルさんの戦後』の、出版イベントを準備中です。 これは、2023年に立ち上げたクラウドファンディング・プロジェクト『戦争の落とし子【GIベビ…

岡部えつ
1か月前
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GIベビーのベルさん、まだ見ぬ兄に手紙を送る

2022年夏にお母さんさがしを始めてからおよそ一年半、先月『母をさがす ー GIベビー、ベルさんの戦後』が亜紀書房より刊行され、充足感に包まれて久方振りにまったりしたの…

岡部えつ
1か月前
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GIファザー探しのお手伝いをスタート

第二次世界大戦後の占領期、日本では多くの“混血児”が生まれた。俗に"GIベビー"と呼ばれた、日本人女性と進駐軍の米兵との間に生まれた子供たちである。 先月、彼らやそ…

岡部えつ
1か月前
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新刊『母をさがす ー GIベビー、ベルさんの戦後』

2月24日(土)、いよいよベルさんの本『母をさがす ー GIベビー、ベルさんの戦後』が世に出た。 その一週間前、わたしはベルさんの家にいた。クラウドファンディングのプ…

岡部えつ
2か月前
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新刊『怖いトモダチ』:TBSの王様のブランチに出演しました

昨日(2月24日土曜日)テレビに出た。TBSテレビの情報バラエティ番組、王様のブランチである。 テレビを捨ててしまって20年以上経つわたしでも知っているこの大長寿番組に…

岡部えつ
2か月前
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映画『Yokosuka 1953』のトークイベントに出演します

現在、横浜シネマリンで上映中のドキュメンタリー映画『Yokosuka 1953』。ベルさんと同じ、進駐軍のアメリカ兵と日本人女性の間に生まれたGIベビーであるバーバラさんの、…

岡部えつ
5か月前
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ハロウィーンと銃事件

ハロウィーン・ヒステリー 渋谷のハロウィーンは、今や日本だけでなく世界的にも有名で、外国からも多くの人がやって来るらしい。 わたしは一度も参加したことはないし、…

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岡部えつ
6か月前
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ベルさんが、NHKのドキュメンタリー番組に

ベルさんのお母さん探しの活動が、NHKのドキュメンタリー番組で取り上げられます。 9月17日(日)BS1/ 夜21:50〜夜22:39 BS1スペシャル「FIND MY LIFE〜戦後78年目のGIベ…

岡部えつ
7か月前
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日本随一の歓楽街、新宿と女たちの歴史

言わずと知れた日本随一の歓楽街、新宿。 ここを舞台にした日本の小説や映画が数知れないのは、この街に、作り手を魅了する何かがあるからでしょう。 かく言うわたしも、…

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岡部えつ
7か月前
9

戦争と女性

2つのニュース9月に入ってすぐ、二日続けて米兵が起こした事件がニュースサイトに掲載された。 1件目は『「友達の家だと思って入った」 民家侵入の疑いで米兵逮捕 沖縄…

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岡部えつ
7か月前
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GIベビー、ベルさんの物語(仮)

序章  アネッタ、麗子、ベル。その人には、三つの名前がある。  彼女が最初に認識した自分の名は、アネッタだった。物心ついてから18歳まで育ったカトリック教会系の児…

岡部えつ
11か月前
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『沈黙は共犯 闘う医師』を観た - ムクウェゲ医師の言葉とフェミニズム

 NHKのドキュメンタリー番組『こころの時代〜宗教・人生〜』の『アフリカの思想にふれる (1)「沈黙は共犯 闘う医師」』を観た。  アフリカのコンゴ共和国の紛争地域で、…

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岡部えつ
1年前
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掌編小説 『嫁入り人形』 (アンソロジー収録作品)

 仲のよい姉妹がおりました。二人には、末子の妹のように可愛がっている、市松人形がありました。  家は貧しく、姉妹は着物もお菓子もおもちゃも、分けあって使います。…

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岡部えつ
1年前
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『怖いトモダチ』に出会ってしまったら

『怖いトモダチ』に出会ってしまったら

社会生活に支障をきたす"性格"刊行早々にTBS『王様のブランチ』に取り上げてもらったこともあり(→そのときの様子はこちら)、重版も決まって嬉しいスタートとなった新刊『怖いトモダチ』(KADOKAWA)。この作品のモチーフである「自己愛性パーソナリティ障害」にまつわることを、小説から引用しながら書いてみようと思う。

自己愛性パーソナリティ障害は、いくつかあるパーソナリティ障害のうちのひとつだ。では

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インスタで、自著を朗読

インスタで、自著を朗読

首都高を走る車の後部座席で、隣に座っていた姪がスマホを車窓の外に向けて撮影し始めた。

小学四年生の彼女は、最近インスタグラムのアカウントを持った。正確には親がとってくれたアカウントを使っている形で、プロフィールにも父親が「わたしの娘が一緒に投稿してます」というような一文を載せて子供狙いの変態野郎どもからきっちりプロテクトしている。

そんなアカウントでも、以前から動画投稿をやりたがっていた姪は嬉

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『母をさがす─GIベビー、ベルさんの戦後』出版イベントの収録をしました

『母をさがす─GIベビー、ベルさんの戦後』出版イベントの収録をしました

4月14日(日)、『母をさがす──GIベビー、ベルさんの戦後』出版イベントを収録をいたしました。

ゲストは、GIベビーであるベルさんこと堤麗子さんと、彼女を長年支えてきた友人、水島文夫さんです。[二人のプロフィールはこちら]

海外からもご支援いただいたクラウドファンディングの返礼品として、ネット配信の形にしています。会場は都内某所、無観客で行いました。

 第一部 水島さんへインタビュー
 第

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【質問を募集します】『母をさがす』出版記念イベントに向けて

【質問を募集します】『母をさがす』出版記念イベントに向けて

『母をさがす——GIベビー、ベルさんの戦後』の、出版イベントを準備中です。

これは、2023年に立ち上げたクラウドファンディング・プロジェクト『戦争の落とし子【GIベビー】のベルさんを、アメリカで見つかった肉親に会わせたい』の返礼品のひとつ【出版記念イベント(オンライン)ご招待】のためのイベントですが、対象者以外の方にも有料で閲覧していただけるようにする予定です。

イベントでは、わたくし岡部え

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GIベビーのベルさん、まだ見ぬ兄に手紙を送る

GIベビーのベルさん、まだ見ぬ兄に手紙を送る

2022年夏にお母さんさがしを始めてからおよそ一年半、先月『母をさがす ー GIベビー、ベルさんの戦後』が亜紀書房より刊行され、充足感に包まれて久方振りにまったりしたのも束の間、さっそくベルさんから「お兄さんに連絡してみたい」と電話がありました。

本を読んでくださった方はご承知と思いますが、「お兄さん」とは、一昨年まで名前も知らなかったお父さんが、第二次世界大戦出征前に結婚していたときの息子、ベ

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GIファザー探しのお手伝いをスタート

GIファザー探しのお手伝いをスタート

第二次世界大戦後の占領期、日本では多くの“混血児”が生まれた。俗に"GIベビー"と呼ばれた、日本人女性と進駐軍の米兵との間に生まれた子供たちである。

先月、彼らやその子孫たちがGIである父親、祖父、またその家族たちを探す手伝いをするための、窓口サイトを開設した。

GIベビーである友人の肉親探しをした際に出会った、ボランティアグループの活動に感化されて立ち上げたものだ。

わたし自身にそのスキル

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新刊『母をさがす ー GIベビー、ベルさんの戦後』

新刊『母をさがす ー GIベビー、ベルさんの戦後』

2月24日(土)、いよいよベルさんの本『母をさがす ー GIベビー、ベルさんの戦後』が世に出た。

その一週間前、わたしはベルさんの家にいた。クラウドファンディングのプロジェクト『戦争の落とし子【GIベビー】のベルさんを、アメリカで見つかった肉親に会わせたい。』で支援してくださった方への返礼品「サイン本」を作るためである。

できたてほやほやの15冊を持って、亜紀書房の担当編集者もやって来た。重た

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新刊『怖いトモダチ』:TBSの王様のブランチに出演しました

新刊『怖いトモダチ』:TBSの王様のブランチに出演しました

昨日(2月24日土曜日)テレビに出た。TBSテレビの情報バラエティ番組、王様のブランチである。

テレビを捨ててしまって20年以上経つわたしでも知っているこの大長寿番組に、著作が取り上げられるのは3度目(1度目はTBSでドラマ化された『残花繚乱』、2度目はよく売れたのでランキングコーナーでも何度か取り上げてもらった『嘘を愛する女』。)だが、本人が出るのははじめてのことだった。てっきり今回も本だけが

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映画『Yokosuka 1953』のトークイベントに出演します

映画『Yokosuka 1953』のトークイベントに出演します

現在、横浜シネマリンで上映中のドキュメンタリー映画『Yokosuka 1953』。ベルさんと同じ、進駐軍のアメリカ兵と日本人女性の間に生まれたGIベビーであるバーバラさんの、お母さん探しを追ったドキュメンタリーです。

上映期間中の11月25日(土)、トークイベントに出演することになりました。
木川監督と、ベルさんの"最初の記憶"である「聖母愛児園」の工藤さんとともに、お話しさせていただきます。

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ハロウィーンと銃事件

ハロウィーンと銃事件

ハロウィーン・ヒステリー

渋谷のハロウィーンは、今や日本だけでなく世界的にも有名で、外国からも多くの人がやって来るらしい。

わたしは一度も参加したことはないし、その日に渋谷に行きたいと思ったこともないが、毎年報道されるニュースを通して、その暴力的とも言えるカオスの状況は知っている。主に地方からの若者や外国人観光客らが仮装して群れ歩き、路上で飲酒し、明確な目的もなく馬鹿騒ぎをする。あとには大量の

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ベルさんが、NHKのドキュメンタリー番組に

ベルさんが、NHKのドキュメンタリー番組に

ベルさんのお母さん探しの活動が、NHKのドキュメンタリー番組で取り上げられます。

9月17日(日)BS1/ 夜21:50〜夜22:39
BS1スペシャル「FIND MY LIFE〜戦後78年目のGIベビーたち〜」

これまでnoteに2本、関連記事を書いてきたので、詳しくはそれをぜひ読んでいただきたいのですが、わたしは今、GIベビーに関する本を書いています。

昨年の夏、十年来の友人であるベルさ

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日本随一の歓楽街、新宿と女たちの歴史

日本随一の歓楽街、新宿と女たちの歴史

言わずと知れた日本随一の歓楽街、新宿。
ここを舞台にした日本の小説や映画が数知れないのは、この街に、作り手を魅了する何かがあるからでしょう。

かく言うわたしも、かつて『新宿遊女奇譚』という、短編連作を出版しました。
これを世に出してくれた当時の出版社が、のちに大手のKADOKAWAに吸収されたこともあるのか、紙の本は売り切れても増刷なし、デジタル化もされていません。
(ああ、わたしがもっと人気の

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戦争と女性

戦争と女性

2つのニュース9月に入ってすぐ、二日続けて米兵が起こした事件がニュースサイトに掲載された。

1件目は『「友達の家だと思って入った」 民家侵入の疑いで米兵逮捕 沖縄』

2件目は『「酔っぱらい」米兵、現行犯逮捕 ビルの屋上に侵入容疑 那覇』。
同じ事件の後追い記事かと思って開いて読んでみると、まったく別の事件だった。

どちらも女性や子供のレイプ被害事件ではないとわかり、ほっとする。

悲しいこと

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GIベビー、ベルさんの物語(仮)

GIベビー、ベルさんの物語(仮)


序章
 アネッタ、麗子、ベル。その人には、三つの名前がある。

 彼女が最初に認識した自分の名は、アネッタだった。物心ついてから18歳まで育ったカトリック教会系の児童養護施設で、シスターたちから呼ばれていた洗礼名だ。

「小学校に上がるまで、自分はアネッタだと思ってて、他に名前があるなんて知らなかった」

 小学校に入学すると、ランドセルや学用品には「堤麗子」と書かれた。「麗子」は、おそらく彼女

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『沈黙は共犯 闘う医師』を観た - ムクウェゲ医師の言葉とフェミニズム

『沈黙は共犯 闘う医師』を観た - ムクウェゲ医師の言葉とフェミニズム

 NHKのドキュメンタリー番組『こころの時代〜宗教・人生〜』の『アフリカの思想にふれる (1)「沈黙は共犯 闘う医師」』を観た。
 アフリカのコンゴ共和国の紛争地域で、性暴力の被害に遭った女性たちの治療を続けている医師、デニ・ムクウェゲさんを扱った番組である。彼は、コンゴでは人、家族、コミュニティーを一気に破壊する"兵器"として、レイプが組織的に行われていると、世界に訴え続けてもいる。
性欲の捌け

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掌編小説 『嫁入り人形』 (アンソロジー収録作品)

掌編小説 『嫁入り人形』 (アンソロジー収録作品)

 仲のよい姉妹がおりました。二人には、末子の妹のように可愛がっている、市松人形がありました。
 家は貧しく、姉妹は着物もお菓子もおもちゃも、分けあって使います。人形も、姉が髪を梳いてやれば、妹がおべべを着替えさす。妹が歌を歌ってやれば、姉が絵本を読んでやる。そうやって、仲良く世話をしておりました。二人には、人形が笑ったり泣いたりする声が、ちゃんと聞こえていたのです。

 あるとき、母親が二人を呼ん

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