渡邉有

読書が好きな40代です。ミステリー、ホラー、戦前の小説が大好きです。お気に入りの本の感…

渡邉有

読書が好きな40代です。ミステリー、ホラー、戦前の小説が大好きです。お気に入りの本の感想や自身で書いた小説などを投稿していきたいと思います。

マガジン

  • 小説 弦月

    創作大賞2023恋愛小説部門 中間選考通過作品です。時間軸を超えて過去と現在の熱情が交錯する物語。宿世の業と自由意志について書きました。

  • 短編小説アナザーワールド

    約1万文字の短編小説です。曖昧な関係性の向う側にある、もう一つの並行世界。

  • 小説 月に背いて

  • 掌編小説

    ワタナベワールド全開の掌編達です。

  • 読書感想文

    思うがまま感想を書き連ねています

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小説 月に背いて 1

 スマートフォンの着信音が鳴る。私は目を閉じて、彼の声の響きを聞いていた。それはまるで深い深い海の底にいるように、無機質で乾いた声だった。 「これから行ってもい…

渡邉有
2か月前
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雑記(本棚を買う、庭の花)

 本が増えてきたので本棚を買いました。納戸に置きました。  夫が組み立ててくれました。私一人じゃ絶対出来ません。男手があると本当にありがたいですね。  そういえ…

渡邉有
6日前
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仮面の告白 三島由紀夫

GWだからといってしこたま酒を飲み、とっても陽気にnoteを書いてます。5月は子供の日〜で酒が飲めるぞ。飲める飲める飲めるぞ〜酒が飲めるぞ〜!あ、まだ4月だった!! (…

渡邉有
11日前
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漫画 そうです、私が美容バカです

まんきつさんの漫画、「そうです、私が美容バカです」を読みました。 まんきつさんのお写真を拝見すると、本当に美しい方です。美魔女です。ご自身のアルコール依存症体験…

渡邉有
12日前
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泣くならひとり(創作)

 泣きたくなりトイレに駆け込むけれど、尿意はあるのにいっこうに尿は出ない。不思議なことに、涙を流すことと排尿は同時には出来ないのだ。同じ排泄にも関わらず。おそら…

渡邉有
2週間前
45

谷崎潤一郎 人魚の嘆き

この間ブックオフで110円で購入した谷崎潤一郎を読みました。 私は青空文庫ばかり読んでた時期がありまして、(今も読むんですけど) 「人魚の嘆き」と「魔術師」は青空文庫…

渡邉有
2週間前
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最近読んだ本の感想

「リピート」乾くるみさん  「イニシエーション・ラブ」が有名な乾くるみさん。知人から面白いと聞き、読んでみました。タイムリープミステリというものなのでしょうか。…

渡邉有
3週間前
55

雑記(自分の小説を読み返す)

コニシ木の子さんに記事を紹介していただきました。  本当にありがとうございます。なんのはなしです課通信員として、日々精進して参ります。今後も活動報告をしていきた…

渡邉有
3週間前
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ワタナベの研究

 タイトル通り、私のくだらない話でございます。ご興味ある方のみお読みください。  私は怖い話が大好きで、実話怪談のYouTubeをほぼ毎日聞いています。とても不謹慎な…

渡邉有
1か月前
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雑記(最近買った本②)

数日前、「文學界」を買いに近所の本屋へ行ったんですが売り切れでした。文學界新人賞受賞作品が読みたかったのですが。「ちぇっ」とか言いながらブックオフをはしご。色々…

渡邉有
1か月前
40

読書感想 福井晴敏 終戦のローレライ

フォローさせていただいている堀間善憲様のこちらの記事を拝読しまして、絶対に面白いに違いないと思い、中古本全4巻を購入しました。  映画化もされた、原稿用紙2800枚…

渡邉有
1か月前
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雑記(娘に叱られる)

諸事情ありまして、3月いっぱいでパートを辞めました。すごく働きやすい職場だったので勿体ないけど仕方あるまい。3ヶ月くらいしたらまた看護師として働ければいいなと思っ…

渡邉有
1か月前
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YOASOBI もしも命が描けたら

この曲のメロディーが妙に耳に残り、最近ずーっと聴いています。 旋律のイメージだけで小説が書けそうな素敵な曲だなあ…なんて思いながら歌詞をしっかり聞いてみると、い…

渡邉有
1か月前
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むかし私が会った犬

 私は看護学校卒業後、勤務先の病院の寮に入っていた。その寮は病院から線路を隔てた北側にあり、直線距離で言えば200メートルにも満たないのだが、踏切があるせいで通勤…

渡邉有
1か月前
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小説 月に背いて13(最終話)

「葉月」  井川くんが軽トラックの運転席から大声で私を呼んだ。 「これで荷物は全部だよな。もともと家具のある家だからたいした荷物じゃなかったな。わざわざ軽トラ借…

渡邉有
1か月前
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小説 月に背いて 12

 私達が海にたどり着いたのは17時過ぎだった。太陽は西へ落ちる直前で、辺りは夕闇に染まり始めていた。一面茜色の空には折り重なった薄雲がゆっくりと流れていた。  海…

渡邉有
1か月前
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小説 月に背いて 1

小説 月に背いて 1

 スマートフォンの着信音が鳴る。私は目を閉じて、彼の声の響きを聞いていた。それはまるで深い深い海の底にいるように、無機質で乾いた声だった。

「これから行ってもいいか?」と彼は言う。いいよと私は答える。

 彼が私の体の輪郭をなぞるたびに、このまま消えてしまいたくなる。私は見えない鎖で繋がれている。私の心はその鎖につながれたまま、どこまでも彼と歩調を共にしなければならない。触れている冷たい肌の感触

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雑記(本棚を買う、庭の花)

雑記(本棚を買う、庭の花)

 本が増えてきたので本棚を買いました。納戸に置きました。

 夫が組み立ててくれました。私一人じゃ絶対出来ません。男手があると本当にありがたいですね。

 そういえば独身の頃、勤務先の寮に入っていた時、ドン・キホーテで買った本棚を組み立てられなくて、途方に暮れたことがあったなあ…。たまたま暇していた友達と友達の彼氏が来てくれて、電動ドリルを使って組み立ててくれました。その彼氏は設備屋?に勤めていた

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仮面の告白 三島由紀夫

仮面の告白 三島由紀夫

GWだからといってしこたま酒を飲み、とっても陽気にnoteを書いてます。5月は子供の日〜で酒が飲めるぞ。飲める飲める飲めるぞ〜酒が飲めるぞ〜!あ、まだ4月だった!!

(フォロワーの皆様、本っ当にすみません…)

さてさて、三島由紀夫の「仮面の告白」を読み終わりました。今、「命売ります」を読んででいるところです。

大昔に「潮騒」と「金閣寺」を読んだきり、久しぶりに読む三島由紀夫でして。経歴につい

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漫画 そうです、私が美容バカです

漫画 そうです、私が美容バカです

まんきつさんの漫画、「そうです、私が美容バカです」を読みました。

まんきつさんのお写真を拝見すると、本当に美しい方です。美魔女です。ご自身のアルコール依存症体験を題材にした漫画、「アル中ワンダーランド」を以前読んで面白かったので、購入してみました。

 美容に目覚めたきっかけ(男にフラレたのは外見がいけなかったのだと思い込む)、
外見のコンプレックス、使用している美容グッズ、さらには美容整形の体

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泣くならひとり(創作)

泣くならひとり(創作)

 泣きたくなりトイレに駆け込むけれど、尿意はあるのにいっこうに尿は出ない。不思議なことに、涙を流すことと排尿は同時には出来ないのだ。同じ排泄にも関わらず。おそらく、泣くときは交感神経が優位になり、排尿する時は副交感神経が優位になるからだろう。自律神経はバランスが大切だから。いや、そんなことを考えていないで、早く涙を止めて、ここを出なければ。泣いていることがバレてしまう。泣いたところで慰めてももらえ

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谷崎潤一郎 人魚の嘆き

谷崎潤一郎 人魚の嘆き

この間ブックオフで110円で購入した谷崎潤一郎を読みました。

私は青空文庫ばかり読んでた時期がありまして、(今も読むんですけど)
「人魚の嘆き」と「魔術師」は青空文庫にはなかったなあ、読んだことないかも、と思いつい買ってしまったのです。

放蕩の限りを尽くして無気力になっている支那の貴公子が、オランダ人の人買いから買った人魚に恋をして逃げられるだけの話です。
こうして書くと、ただの滑稽無垢で意外

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最近読んだ本の感想

最近読んだ本の感想

「リピート」乾くるみさん

 「イニシエーション・ラブ」が有名な乾くるみさん。知人から面白いと聞き、読んでみました。タイムリープミステリというものなのでしょうか。ネタバレ厳禁系です。
しょっぱなから「絶対に何かどんでん返しがある」という予感に満ちているので、続きが気になって一気読みしてしまいました。物語の進行に合わせて少しずつ伏線が回収されていくのですが、中盤からは先の展開がうっすら読めてしまうよ

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雑記(自分の小説を読み返す)

雑記(自分の小説を読み返す)

コニシ木の子さんに記事を紹介していただきました。

 本当にありがとうございます。なんのはなしです課通信員として、日々精進して参ります。今後も活動報告をしていきたいと思います!

 さて、昨晩から謎の微熱が続いてまして、感冒症状もないのになんでだろう?と首をかしげております。でも私は疲れたりするとすぐ微熱が出るので、あんまり気にしてはいないんですけど。

 熱に浮かされると人間普段とは異なる行動を

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ワタナベの研究

ワタナベの研究

 タイトル通り、私のくだらない話でございます。ご興味ある方のみお読みください。

 私は怖い話が大好きで、実話怪談のYouTubeをほぼ毎日聞いています。とても不謹慎なのを承知の上で書きますが、心霊スポットを巡る動画も好きです。

 で、そういったYouTubeによく出てくる
田中俊行さんという呪物コレクターの男性がいるのですが、私はその人がわりと好きで、一度お会いしてみたいなあ…なんて思っていま

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雑記(最近買った本②)

雑記(最近買った本②)

数日前、「文學界」を買いに近所の本屋へ行ったんですが売り切れでした。文學界新人賞受賞作品が読みたかったのですが。「ちぇっ」とか言いながらブックオフをはしご。色々買ってしまいました。

 古い小説ばかりじゃなくて、現役作家さんの作品も読む!とか宣言しながら、結局こういうのを買ってしまうのです。

ていうか、こんなにたくさん読み切れるのだろうか。まあ別に腐るものじゃないし、いっか。

物が増えるのが嫌

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読書感想 福井晴敏 終戦のローレライ

読書感想 福井晴敏 終戦のローレライ

フォローさせていただいている堀間善憲様のこちらの記事を拝読しまして、絶対に面白いに違いないと思い、中古本全4巻を購入しました。

 映画化もされた、原稿用紙2800枚に及ぶ超大作です。小説は長編になればなるほど、「この部分、いる…?」という箇所が出てくると思うのですが、この小説に限っては無駄だと思える描写が一つもなく、一文字も取りこぼすことなく真剣に読みました。

 ストーリーはwikipedia

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雑記(娘に叱られる)

雑記(娘に叱られる)

諸事情ありまして、3月いっぱいでパートを辞めました。すごく働きやすい職場だったので勿体ないけど仕方あるまい。3ヶ月くらいしたらまた看護師として働ければいいなと思っています。

そんな折、中学生の娘に、
「小説書いてるんだったら、もっと拡散しなきゃ駄目だよ!!noteだけじゃなくてXもやらなきゃ!!」
と叱られました。小説投稿サイトじゃなくて??

娘にXのアカウントを作られそうになりましたが、「ち

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YOASOBI もしも命が描けたら

YOASOBI もしも命が描けたら

この曲のメロディーが妙に耳に残り、最近ずーっと聴いています。

旋律のイメージだけで小説が書けそうな素敵な曲だなあ…なんて思いながら歌詞をしっかり聞いてみると、いかにもワタナベが好きそうなストーリー性をはらんでいるんですね。ああびっくり。

同名の舞台のテーマソングのようです。なるほど納得。

 命を他人に分け与える能力を月から授かって、それを愛する人のために使うみたいな歌詞です。自分の命と引き換

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むかし私が会った犬

むかし私が会った犬

 私は看護学校卒業後、勤務先の病院の寮に入っていた。その寮は病院から線路を隔てた北側にあり、直線距離で言えば200メートルにも満たないのだが、踏切があるせいで通勤にはなにかと時間を要した。

 特に準夜(勤)が終わり深夜に寮に向かうと、必ずといっていいほど踏切で足止めを食らった。貨物列車が通るのだ。貨物列車はとにかく長い。長過ぎる。全長1kmは優に超えているに違いない。冷静に考えればそんなわけがな

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小説 月に背いて13(最終話)

小説 月に背いて13(最終話)

「葉月」

 井川くんが軽トラックの運転席から大声で私を呼んだ。

「これで荷物は全部だよな。もともと家具のある家だからたいした荷物じゃなかったな。わざわざ軽トラ借りなくても俺の車で十分だったかも」

「手伝ってくれてありがとう。本当に助かった」

 三月下旬になった。私は叔母の家からさらに職場へ近いアパートに引っ越すことにした。荷物を軽トラに積み込み、引っ越し先へ向かうところだった。

 生温か

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小説 月に背いて 12

小説 月に背いて 12

 私達が海にたどり着いたのは17時過ぎだった。太陽は西へ落ちる直前で、辺りは夕闇に染まり始めていた。一面茜色の空には折り重なった薄雲がゆっくりと流れていた。

 海水浴場の駐車場に車を停めて、私達は手を繋ぎながら砂浜まで歩いた。お互い何も話さなかった。身を切られるような寒さとともに耳を劈く大きな波音が肌を刺す。小さな貝殻を踏む感触を確かめるように歩を進め、波打ち際まで辿り着いた。誰もいない砂浜で恐

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