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独身者の休日

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東京上空50フィートの未来 GINZA SKY WALK 2024

東京上空50フィートの未来 GINZA SKY WALK 2024

GINZA SKY WALK 2024

―――高速道路を歩いて、未来を感じる3日間。

そんなテーマのもと行われた《GINZA SKY WALK 2024》というイベントに参加した。

東京のまんなか、新橋から有楽町、銀座を抜けて京橋にいたる全長およそ2キロの高速道路「KK線」。

《GINZA SKY WALK》は、その「KK線」をゴールデンウィーク期間中の3日間限定で歩行者専用の道路として開

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思えば浅草は「塔」の街だった

思えば浅草は「塔」の街だった

横浜でIUのライブ、のはずが、チケット争奪戦に敗れ満身創痍のふたりはなぜか浅草にいた。

やっとのことで休暇を死守したふたりである。このままやられっぱなしというわけにはいかない。せめて、なにかおいしいものでも食べようではないか。まあ、そういうわけである。

多少の論理の飛躍は、この際気にしないことにする。

健康的で気取りのない、いかにも庶民のための

向かった先は「天藤(てんとう)」というお店。

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惹句 京都の朝はイノダコーヒの香りから

惹句 京都の朝はイノダコーヒの香りから

惹句という言葉がある。惹句。よい響きだなあ。

横文字にすればキャッチコピーということになるのだろうが、積極的にひとの心を捕らえにいくといったニュアンスが感じられるキャッチコピーに対し、惹句という言葉にはふんわり包み込むことでその気にさせるようなやわらかな感触がある。

――京都の朝はイノダコーヒの香りから

惹句と聞いてまっさきに思い出すのは、京都にある《イノダコーヒ》のあまりにも有名な謳い文句

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爆睡するマレー獏はどんな夢をみるのか 東京都美術館「動物園にて」

爆睡するマレー獏はどんな夢をみるのか 東京都美術館「動物園にて」

午前のうちに用事をひとつ済ませ、その足で上野をめざした。



着くころにはお腹もすいてきたので、深く考えないままひとりでも入りやすそうなスンドゥブの店に入る。

辛さを五段階の中から好みで選ぶという、メプチリ(辛い食べものが苦手なヘタレの意)にもやさしいシステム。

慎重を期して「2」を選んだにもかかわらず顔から汗が噴き出て弱った。

何を隠そう、チゲやスンドゥブなら家でもよく作る。

と言っ

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サンドイッチにみちびかれて 独身者の歩き方(休日編)

サンドイッチにみちびかれて 独身者の歩き方(休日編)

独身者の歩き方。はたしてそんなものがあるのかどうかは別として。

週末の午後の銀座でカフェ難民と化したのは、ついこのあいだのことだった。大人はおなじ轍は踏まない。

歩き方その1 早く出かけて早く戻る

そう自分に言い聞かせて家を出る。早めに出たつもりだったが、気づいたらすでに10時近くになっていた。ぜんぜん早くない。ダメな大人がここにいる。



三連休初日の地下鉄は混雑していた。みんな浮足立

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とある休日 本が大漁からの夜の動物園

とある休日 本が大漁からの夜の動物園

本が大漁。

机の上に、いま図書館で借りてきた本が5冊ある。ふだんだったら一度に2冊、せいぜい3冊といったところなのにいきなりの5冊、である。

じつは、この半月ほどのあいだにポチポチと予約していた順番待ちの本が、どういうわけかいっぺんに届いてしまったのだ。うれしいけれど困った。

ひょっとすると、思いがけず網にサンマがたくさんかかった漁師もこんな気分なのだろうか。大量ではなく、だから大漁。

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喜色是人生

喜色是人生

10月いっぱいで建て替えのため閉館する国立劇場でひさしぶりに落語を聴いた。

国立劇場といっても、“はなれ”のように敷地内にぽつんと建つ演芸場について言えば築年数は本館よりだいぶ浅い。なんだか壊してしまうのも惜しい気がするが、相変わらずのトイレの大渋滞を見るとやはりそろそろ改築のタイミングなのかもしれない。

ところで、国立演芸場というと舞台正面に掛けられた「喜色是人生」と書かれた額を思い出す。侍

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【休日と銀座】歩いて考え、考えてまた歩く

【休日と銀座】歩いて考え、考えてまた歩く

仕事は休み。ゴンチチのアルバム《PHYSICS》をBGMにパスタを茹でたら、パスタと同時に理想的な“休日の昼下がり”も仕上がった。

午後、地下鉄にのって銀座をめざす。

図書館で借りた『コーネルの箱』というふしぎな本を拾い読みしていたところ、“1947年1月24日にコーネルがやったこと”という文章が目にとまった。それによると、ジョセフ・コーネルもまたこんなふうに電車でクイーンズの自宅からマンハッ

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スパゲッティ日和

スパゲッティ日和

ボロネーゼではなくミートソース、パスタではなくスパゲッティ、そう謳っているような店がときどき無性に恋しくなる。

休日の予定が、急きょ欠席するわけにはいかない会議ができてしまいやむなく出勤した。こういうときは、ダラダラしていると余計な仕事につかまって泥沼にはまるのが目に見えている。そこでそそくさと帰り支度をし、銀座へとむかった。このまま帰るのもつまらないと思い有楽町で映画を観ることにしたのだ。

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幸福な記憶は地下鉄の出口にだって宿る

幸福な記憶は地下鉄の出口にだって宿る

午後から銀座に行く。

ふだん銀座に行くときは、行先にもよるが有楽町か日比谷で地下鉄を降りて歩くことが多い。

有楽町か日比谷の駅で下車した場合、どこから地上に出るかは特に決めていない。数えたわけではないが、すくなくとも3、40はありそうな出口のどれを利用するかはそれこそ行先による。

しかしきょうは、行き帰りとも「B1」と番号の振られた出口を使おうと銀座に向かう電車のなかで決めていた。ちょっとし

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日記 だれかの旅の話を聞く

日記 だれかの旅の話を聞く

荻窪で、前職(お店をやっていました)を通じて知り合った人たちと午後のひとときを共にする。

友人というのとはまた異なるが、共通の“好き”でつながった気のおけない仲間といった人たちだ。

そして、旅から戻ったばかりの一人から写真とともに旅先でのエピソードをもりもりと聞いた。興味深いエピソードが山盛りだったのだ。

みんながどうかは知らないが、僕は誰かから聞かされる旅の話が好きだ。

自分がじっさいに

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さっぱりとしたつきあいを好む友人

さっぱりとしたつきあいを好む友人

ことし初めての“秋”は日曜日にやってきた。数日前までの暑さと湿気が嘘のようだ。

長らく借りたままになっていた本を返すため、墨田川の河口ちかくの地下鉄駅で友人と待ち合わせる。

彼女からのメッセージには、焼き菓子を持っていきますと書かれていた。そこで僕は、あらかじめ水筒にコーヒーを入れて持っていく。

1980年代にはじまるウォーターフロント再開発もひと足先に片づいたこのエリアでは、水辺のあちらこ

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