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読書

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傲慢な過去の恋愛

傲慢な過去の恋愛

 過去の私に問いただしたい。お前は傲慢になっていないか。

 当時付き合っていた恋人との関係を周りの友人は老夫婦みたいと表現した。確かに喧嘩もしないし、干渉もしない。感情をぶつけ合うこともなく、平和な関係だった。

 アルバイト終わりの深夜に車の中で言葉を交わす。買い物に行く訳でもなく、祭りに出かける訳でもなく、旅行に行く訳でもない。ただ会話をできることで満足していた。だけど次第に長年付き添ったよ

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滅びの前のシャングリラ

滅びの前のシャングリラ

 凪良ゆう著「流浪の月」の読後、なんの迷いもなく「滅びの前のシャングリラ」を購入していた。面白い本に出会うと、その著者の本をもっと読みたくなる。「滅びの前のシャングリラ」はまさにそれだった。

 この話を一行でまとめるとするのなら「世界が終わるからこそ理想が叶った話」だろうか。

 いつかに夢見ていたそれぞれの理想。それは理想のまま終わるはずだった。世界の終わりが決まるまでは。

 地球に隕石がぶ

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『流浪の月』を読んだ

『流浪の月』を読んだ

「でも多分、事実なんてない。出来事にはそれぞれの解釈があるだけだ」
「事実なんてどこにもない。みんな自分の好き勝手に解釈しているだけでしょう」
「事実と真実はちがう」
                           凪良ゆう 著『流浪の月』

 真実なんて、当事者しかわからない。当事者以外の人は自分の都合のいいように解釈をしてそれがあたかも真実であるかのように振る舞う。

 加害者への解釈。

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おかしなもの作れないでしょー幸福な食卓

おかしなもの作れないでしょー幸福な食卓

「家族のごはんっておかしなもの作れないでしょ」

 瀬尾まいこ著『幸福な食卓」の一節。訳あって一人暮らしをする母と主人公の佐和子の会話である。

 実家にいるときは母が作る料理はいつも似通って、飽き飽きしていた。思春期も重なって高校生の時にこんなことを母に言ってしまった。

「毎日同じようなものばかり食べて飽きる。レパートリーをもっと増やしてよ」

 でも、一人暮らしを始めて自炊をするようになった

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本とどう出会うか。

本とどう出会うか。

 本屋に行った。こういうご時世だから3ヶ月ぶりくらいになる。それに加えてお気に入りの本屋が閉店してからは本の購入は通販がメインになっていたことも相まってのことだ。

 通販で本を買うようになってから途中で読むのを辞めることはほとんどなくなった。その理由はクチコミから今、読みたい本か吟味するようになったからだ。

 そんな事前に情報を仕入れてから本を買うことが習慣化してしまったからか、本屋に行っても

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朝井リョウ著『正欲』ー備忘録ー

朝井リョウ著『正欲』ー備忘録ー

 朝井リョウ著『正欲』。本に出てくることをなぞっているだけになるかもしれないけど、備忘録として残しておく。内容を大雑把に表現するとしたら、大多数の中の少数。その少数の中に入りきれなかった少数についての話だろうか。

ここからはネタバレになってしまうかもしれないので読む予定のある方は注意を。

 性欲。三大欲求のひとつ。子孫を残すためのエネルギーになるもの。性行為につながる原動力。公にすることは憚れ

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伊坂幸太郎著『逆ソクラテス』の備忘録

伊坂幸太郎著『逆ソクラテス』の備忘録

短編5編からなる伊坂幸太郎著『逆ソクラテス』の備忘録

逆ソクラテス ー「僕は、そうは、思わない」ー 全てを知ったかのように振る舞う担任の先生の先入観をぶっ壊すお話。冒頭で出てくる野球選手がファインプレーをした後にテレビを消すところは読み終えてから意味がわかる。結局、担任の先生は変わっていなくて先入観を捨てきれていないように感じた。

 事実と感想。例えば、穴の空いた靴を履いている人がいるとする。

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