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Ching-O)))の映画雑記

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ミシガン州川口市在住。あなたの隣人の親愛なるキチガイ、Ching-Oの人生を弄んできた色々な映画についての雑記をここに一堂に集めました。人の頭の中を覗く悪い趣味があるあなたのため… もっと読む
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【映画雑記】『ドッペルゲンガー』観ました。

【映画雑記】『ドッペルゲンガー』観ました。

黒沢清監督の『ドッペルゲンガー』(2003)を観ました。

 実は黒沢清作品にあまり馴染みがなく、観たことがあるのは他に『回路』と『CURE』だけ。しかもその2本がどちらもすこぶる震え上がった映画なので、今回も冒頭の不穏な出だしからビクビクしながら観ていました。抱えるプロジェクトの重圧に懊悩する主人公(演じるは役所広司さん)の前についに現れるドッペルゲンガー。しかし、それが現れて以降はスリラーとコ

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【映画雑記】『パルス』観ました。

【映画雑記】『パルス』観ました。

『パルス』(2006 アメリカ)観ました。

 原作となった黒沢清監督の『回路』を省略はあるもののわりと忠実になぞってて意外でした。しかし、ラストに向けて謎解きの説明がしつこく、そこで説明される設定が特にこれといって説得力もないというのが残念だった。あと、Jホラーのリメイクではあるが、表現まで取り入れる気はさらさらなかったようです。『ザ・リング』のサマラ(=貞子)同様にアタック感のある怖がらせ方を

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【映画雑記】『ロバート・アルトマンのイメージズ』観ました。

【映画雑記】『ロバート・アルトマンのイメージズ』観ました。

『ロバート・アルトマンのイメージズ』(1972 アメリカ)を観た。

スザンナ・ヨーク演じる作家が見ている風景、壊れた主観、綻びた時間の羅列で見せられる「イメージ」の連続が観るものに言いしれぬ不安/不穏を呼び起こす。自身の女性性への愛着と嫌悪が入り乱れて揺さぶられる様はポランスキーの『反撥』を彷彿とさせ、自身が抑圧する奔放さを全肯定するもう一人の自分が現れる様は先日観た黒沢清監督の『ドッペルゲンガ

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【映画雑記】『イグジステンズ』は素晴らしい変態SFです。

【映画雑記】『イグジステンズ』は素晴らしい変態SFです。

今年の映画初めはおウチで。

デヴィッド・クローネンバーグの『イグジステンズ』。

公開された頃以来20年ぶりの再見。

新作ゲーム「イグジステンズ」を巡って繰り広げられるゲーム開発者とその命を狙う現実主義者との攻防を描く。当時は現実と仮想を行き来したり、その境がふとした瞬間に曖昧になるなど先行した作品『マトリックス』との共通点が多々あったため、どうしても比較されてしまっていたように記憶する。CG

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【映画雑記】『かがみの孤城』観ました。

【映画雑記】『かがみの孤城』観ました。

昨年末、滑り込みで映画館へ行き『かがみの孤城』を観ました。

これは人と関わることに自信をなくして居場所をなくした子どもたちが、不思議な力で与えられた仮の居場所のなかで仲間を見つけ、次の居場所を選択していく物語です。主人公が不登校児ということで、どうしても自分のことから切り離せない事柄を扱っていたので没入して観てしまった。

とにかく子どもたちの寂しさに寄り添って背中をさすってくれるような優しさが

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【映画雑記】『すずめの戸締り』観ました。

【映画雑記】『すずめの戸締り』観ました。

昨年、公開一週間後くらいに『すずめの戸締まり』観ました。

CM、予告編のみで前情報は一切入れずに観に行ったので諸星大二郎的な民俗学テイストファンタジーなのかな程度の認識で観に行きました。物凄い勢いでちゃぶ台をひっくり返されました。これは震災文学の一つの到達点でした。

東日本大震災を「忘れてはいけない」と言われ続けても2011年3月11日、あのとき何が起きたのかはどんどん忘れられる。時間と無関心

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【映画雑記】映画「暴力脱獄」という福音。ルークという救世主。

【映画雑記】映画「暴力脱獄」という福音。ルークという救世主。

 久しぶりに「暴力脱獄」を観た。

 ポール・ニューマン主演の1967年のアメリカ映画。彼が演じるのはとある刑務所に器物損壊でぶち込まれた男。その名はルーク・ジャクソン。自分にとって、映画の中でこれ以上にカッコいい人はいないと断言する。

 ルークはとにかく挫けない。そして、刑務所の中で自分の境遇を惨めに感じている連中に福音をもたらす救世主として描かれていて、劇中には十字架やキリストを彷彿とさせる

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【映画雑記】映画「ジーザス・クライスト=スーパースター」を観ながら真夜中に思ったこと。

【映画雑記】映画「ジーザス・クライスト=スーパースター」を観ながら真夜中に思ったこと。

 夜中に1973年の映画「ジーザス・クライスト=スーパースター」をBGVに黒霧島のお湯割りを飲んでいた。言わずと知れたアンドリュー・ロイド・ウェバーとティム・ライスによるキリスト最後の7日間を描いた説明不要のクソ有名なミュージカルを映画化したものだ。

 キリスト最後の七日間と言えばいわゆる「受難劇」と表現されるやつだ。それまで数々の神通力で民衆を圧倒させ、超人的なカリスマ性を誇ったイエスが、エル

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【映画雑記】「フォーリング・ダウン」を観て慄く中年。

【映画雑記】「フォーリング・ダウン」を観て慄く中年。

「フォーリング・ダウン」を観た。

 真面目に生きてきた筈が悲惨な境遇に打ちのめされ、怒りが沸点を越えてしまった男と、人生の折り返し地点も過ぎて諦めの中でなんとか踏みとどまっている男の人生がぶつかった一日の話。

 前者(劇中では名前はなく仮称:Dフェンス)ははっきりと台詞で説明はされないが、離婚し、おそらくDVか何かで分かれた妻と娘に近づくことを禁じられている。おまけに失業者で不良債務者だ。彼の

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【映画雑記】「妖精たちの森」/見所が子どもではない前日譚

【映画雑記】「妖精たちの森」/見所が子どもではない前日譚

 俺の好きな1961年の古典ホラー映画「回転」の前日譚として作られた1971年のイギリス映画「妖精たちの森」を鑑賞。

 自分も読んだ町山智浩さんの本「トラウマ映画館」でも取り上げられていたらしいんだけど、覚えてない…。イギリスの片田舎の瀟洒な屋敷が舞台で、倒錯的な愛に耽る男女二人と、その二人の仲を「永遠に」とりもとうとする両親を亡くした兄妹の物語。「回転」で語られた過去を基に、想像力逞しくして作

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【映画雑記】「ヒルコ/妖怪ハンター」/私は14歳の夏を思い出した。

【映画雑記】「ヒルコ/妖怪ハンター」/私は14歳の夏を思い出した。

 塚本晋也監督による1991年の映画「ヒルコ/妖怪ハンター」を鑑賞。初見は中学生の時で、最後に観たのも相当前だと記憶する。

 原作は諸星大二郎の漫画「妖怪ハンター」シリーズ。他に映画化されたものでは2005年公開の「奇談」があります。

異端の考古学者、稗田礼二郎が様々な怪異と遭遇するスキモノにはたまらない傑作です。その原作では喪服のような黒服に長髪、物怖じしない姿勢など、手塚治虫のブラックジャ

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「メトロポリス」にはまった中学生。

「メトロポリス」にはまった中学生。

 深夜のテレビ放送でモロダー版の「メトロポリス」を観た。すっかりハマってしまった当時中学生の俺は、創元推理文庫に入ってた原作を読み、フレディの美声がこだまするサントラを聴きこみ、文庫のあとがきに記載されていた3時間を越える長大なオリジナル版への妄想を膨らませた。

 「メトロポリス」のカッコよさを誰かに伝えたいけど友達にはそんな趣味の人は誰もいなかったので、思い余って「宇宙船」の読者投稿欄に手紙を

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鳴りやまぬ警鐘/「メトロポリス」フリッツ・ラング&ジョルジオ・モロダー

鳴りやまぬ警鐘/「メトロポリス」フリッツ・ラング&ジョルジオ・モロダー

「メトロポリス」はご存知で? 
(戸田奈津子構文)

 1927年公開、近未来の超巨大都市を舞台に労働者と資本家の軋轢と、それによって起こる暴動を描いたSF作品であります。

 さらっと言いましたが、スケールの大きな階級闘争を真っ向から描いていて娯楽映画としては実に深刻なものだったりします。監督はドイツ映画の父、フリッツ・ラング。1927年といえば海外ではビートルズのメンバーは誰も生まれておらず、

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【映画雑記】「GODZILLA/ゴジラ」(1998)/作った本人が黒歴史認定、でも面白いよ。

【映画雑記】「GODZILLA/ゴジラ」(1998)/作った本人が黒歴史認定、でも面白いよ。

 20年ぶりくらいにローランド・エメリッヒ監督の「GODZILLA/ゴジラ」を観た。製作と脚本はディーン・デヴリン。90年代に青春を送った人間には好き嫌い問わず記憶される「インデペンデンス・デイ」のコンビです。

 当時は大きな両生類(字幕:戸田奈津子)で無性生殖をして、マグロ食って、ビル街を走り回るゴジラのキャラ変に違和感バリバリだったけど、庵野秀明が考案した段階を経た形態で成長する「シン・ゴジ

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