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きみはいたほうがいいよ


エンドロールでこの曲を聴く為だけに、映画館に行った。

そんなことをするのはおそらく、後にも先にも、これっきりだと思う。



山口隆の声で



「君はいたほうがいいよ」



と叫んだMCの直後の、あのイントロ。

熱い。


まっすぐな曲調に非常に弱い上に、普段歌詞など入ってこないはずが、途中繰り返すこのフレーズだけは脳に直接響く。


このサンボマスターの新曲「Future is Yours」が映画の主題歌だということを知って、ぼくは

「この曲で入るエンドロールが見たい!」

という一心で、「クレヨンしんちゃん」の映画に入ることにした。


友人を誘うも「あまりに興味がない」と一蹴されて、泣く泣く1人。

家族連れと10代のカップルばかりで入る時ちょっと恥ずかしかった。



僕らの世代はクレしん映画で育った男はかなり多いが、僕の地元ではクレヨンしんちゃんはTVに映らなかったのであまり馴染みがなく、僕は映画もyoutubeの5分くらいの有名シーンくらいしか見たことがなかった。

クレヨンしんちゃんは、実は映画版の評価がすこぶる高く、よく泣けるらしい。

昔のドラえもんの映画もそんな話を聞くが、なんせ僕は家族モノに弱いので、いつか野原一家をちゃんと見てみたいなぁと思っていた。

とはいえ、子ども向けだなのでそんなに期待しないで、ちょっと贅沢な音楽鑑賞だと思って歌舞伎町に向かう。

結果、なかなかよかった。


映画の内容は書かないけど、
子が親の為に、親が子の為に、子どもが友達の為に体を張るところが普通に刺さって泣いてしまった。

ひとつひとつのコメディは子ども向けだけど、リズムが良くてクレしんっぽい緩急が効いている。

あまり詳しくないけど、よしもと新喜劇の構成と近いような気がする。


エンディングの入りは想像通りカッコ良かったけど、映画館の音が小さくて迫力がなかった。

それでも頭にこびりついたので、すぐに家に帰ってから脳内でリピートしながら30分ランニングをした。

有意義。





「君はいたほうがいいよ」




びっくりするくらい普通のことを言うけど、子どもが誰かの為に頑張っている姿はやっぱり勇気をもらえる。

僕は「健気」フェチで、子どもが親の為に健気に我慢したり、子どもが誰かの為に健気に尽くしたりすることにすごく弱い。

つまり、とっても一般的な涙腺をしている。



作中には、「ただ、いること」ができなくなった、疲れた大人が悪役に登場する。

その回想シーンだけ、急にドシリアスな社会風刺でびっくりするのだけど。

案の定そこでまた泣ける。


なんかめちゃくちゃ泣いてるな。






「きみはいたほうがいいよ」




そうたった1人の人に声をかけてもらえるだけで、どれだけの力になるかは、僕も知っている。

態度で、行動で、全身でそれを表してくれることで、その言葉は命をも救う。

その1に出会うまでが人生の勝負だ。

そこまでは、ちょっと踏ん張らないといけない。減っていく体力ゲージにハラハラして休憩しながら、それでも人を探して、人を頼って、人に会う為に進まなければいけない。

運は、動かずして降ってくることはないから。


頑張る。

頑張れ。

一緒に頑張ろう。





「きみは、いたほうがいいよ」






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