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【毎週ショートショートnote】レトルト三角関係
「本日の地球人生態学の授業では、三角関係を学びます」
先生が告げると、生徒たちから疑問の声が飛ぶ。「なにそれー」
「簡単に理解できるよう、今日はレトルト三角関係をもってきました」先生は教壇の下から数種類のパウチパックを取り出した。「このパックを加熱すると、中から三角関係が飛び出します」
先生はコンロで湯を沸かし、レトルト三角関係を温めはじめた。「そろそろですね」封を切ると、二人の女性地球人と一
【毎週ショートショートnote】洞窟の奥はお子様ランチ
数々のモンスターをなぎ倒し、ようやく目的地にたどり着いた。酸素ボンベをはずし、入口のドアを開く。
腹を空かせ楽しみに待っていると、メニューが運ばれてきた。
「こちら、アサリの酒蒸しでございます」
俺はあんぐりと口を開け、店員を睨みつけた。
「はぁ? 海の底まで来たってのに、アサリの酒蒸し? 【海の底はアサリの酒蒸し】? そんなもん浅瀬でやれよ!」
「と言われましても……」
「知らないの? 【
【毎週ショートショートnote】デジタルバレンタイン
もう悩まなくていい。チョコをあげるべきか否か、あげるならどんなチョコか。最新AIを搭載した「デジタルバレンタイン」が全て判定してくれる。
私は身の回りの男性たちの情報を入力する。上司には義理チョコ、同僚には友チョコ、父には新しいネクタイと結果が表示される。
キーボードを叩く手が止まる。私の頭には彼がいた。もし彼の名前を入力したらどんな判定がでるだろう。
何股もかけられていた。彼はスマホに私
金持ち教習所【毎週ショートショートnote】
夏休みを利用して運転免許をとりにきた。このためにバイトをして、学生にはちょっとした額のお金を貯めた。
教習初日。ウェルカムドリンクで迎えられた。ペルシャ絨毯の上を歩き、座学がおこなわれる教室へ。
「運転にもっとも必要なものはなにかわかりますか」
ごつい金の指輪をつけた教官が猫をなでながら訊ねる。
「注意力です」
「判断力です」
いくつかの答えが飛びかった。教官が優しい声音で正解を発表する。
ほんの一部スイカ【毎週ショートショートnote】
「スイカ食べたい」病床の祖父がそう言ったのは、窓の向こうに白い雪が舞う一月の半ばだった。病状からみるに、今夏、スイカが市場に出まわる頃に祖父はもう——。
地元の八百屋をしらみ潰しに回ったが、ない。県内中心部まで車を走らせることに。
デパートの中を歩いていると、幼少期の記憶が蘇った。ここに祖父と来たことがある。あれは今と同じくらいの季節。たっぷりとお年玉をくれたのに、祖父はおもちゃまで買ってくれ
スナイパーの意外な使い方【毎週ショートショートnote】
ライフルを入念に整備していると、ボスに呼ばれた。
「優秀な狙撃手である君に仕事を頼みたい」
私は頷く。
「わしの孫の運動会がある。最高の瞬間を写真に収めてほしい」
「……狙撃手の私が?」
「君の特技は何だね」
「もちろん狙撃です」
「違う。場所取りだ。敵を狙える最高の場所をよくわかっている。撃つだけなら誰でもできる。問題は引き金を引くまでだ」
不本意ながらも校庭へ。くじ引きで入場順が決まっ
生き写しバトル【毎週ショートショートnote】
ある日、A君が言った。
「世の中には自分と似た人が三人いるって言うだろ。同じ顔は四人までだ。なのにこのクラスには同じ顔が五人もいる。つまりこの中の一人は偽者」
「……偽って何? 似てるだけでみんな自分の顔だよ」
「偽者をあぶりだす」
「話、聞いてる?」
かくして同じ顔を持つ男五人の戦いが始まった。
「見抜く方法はこれだ」A君はスマホを出した。「顔認証。全員のスマホのロックを解除できれば本物。
塩人【毎週ショートショートnote】
私はかつて病気療養のため南国で暮らしていた。
病室からの景色に飽き、海辺を散策した。地元では見かけない木々の緑の奥に真っ青な海が広がっていた。
ある日、浅瀬を歩く妙な人物を見かけた。
足首まで海水に浸かったその男はふんどし一丁だった。彼が私に手招きするので砂浜におりる。「君、どこか悪い」ドキリとした。「服脱ぎ、そこ寝る」有無を言わせぬ口調が私を砂浜に寝かせた。
「腕、胸、腹、塩盛る。動くな