みお

演技をすることを愛しています。他には読書、映画鑑賞、イラストを描くことが好きです。何か…

みお

演技をすることを愛しています。他には読書、映画鑑賞、イラストを描くことが好きです。何かを作ろうとする誰かの文章を読めることが喜びです。

記事一覧

それでも人生にイエスと言う

悪魔的なものがこの世にあるとしたら それを見たことがあると 確かに言える 子供の頃家中の床が ガラスの破片だらけになり 足の指を切ったこと わたしを愛した人が いつ…

みお
20時間前
8

尖ったもの柔らかいもの

わたしの中に両方ある。 尖ったもの柔らかいもの。 尖ったものはでもたまにしか出てこない。 昔芝居をしていた頃はよく出てきていた。 でもそれは芝居をしていたからでは…

みお
1日前
8

恋のようだ

生きることは清新で 匂い立つ恋のようだ。 台詞を覚え 本番の張りつめた空気の中で 発語する。 その瞬間にも似た 痛みに近いような 極限の賭け。 それが本当は 瞬間瞬間…

みお
4日前
9

諦める・信じる

ついこの間まで、芝居漬けだったのに もはや介護の仕事の問題で 頭がいっぱいである。 若い頃はやっぱり芝居が一番で 他の仕事は二の次だったのに 年を取ったということな…

みお
10日前
7

母のこと

どうしてなのか、わからないのだ。 演劇をやることのどこに 母の死を乗り越えられる理由があったのか。 わからないままだ。 勿論哀しくないわけではない。 思い出すことも…

みお
13日前
8

続ける、ということ

久しぶりの舞台復帰を終えて 今思うこと。 こんな苦しいことを 10年もやっていたのかー!っという 他人事のような驚き。 そんなにも好きだったか…という気づき。 ここ…

みお
2週間前
10

ひっぱられる

演劇には遠心力があるのだ。 しみじみそう思う。 一度触れてしまえば ぐるぐる回る銀河鉄道にでも乗ったかのように 降りることが難しくなる。 大体次の停車駅がどこなのか…

みお
2週間前
8

誰かの幸せが

誰かの幸せが幸せなのだと気づく。 そんな1日だった。 先週は自分の舞台の本番だったけれど 今日からは先輩たちの本番である。 新しい集団に出会って ほんとうにずっと…

みお
2週間前
10

なぜ生きるか

いつも思う。これは何なのだろうと。 芝居は祭りだ。あっという間に消える。 あんなに長い準備も苦しみも 公演が終われば跡形もない。 何のために、そこまでするのだろう。…

みお
3週間前
10

4分の3

トラウマを克服すること。 それが今回の目的だった。 完全に入っているはずの台詞が 出ないと思い込むこと。 ちゃんと出来ているシーンが 空間が歪んでいるかのように 突…

みお
3週間前
6

わたしに出来ること

準備がすべて終わって、あとは本番を待つばかりだ。 こんなに時間をかけさせてもらえたこと、はじめてかもしれない。 心が穏やかだ。 母は、悔やんではいないかと心配だっ…

みお
1か月前
9

言葉が語り始める

簡単だ、と思うことがあるのだ。 このまま大きく声を張り上げれば 感情に溺れて泣いてしまえば わかりやすく芝居らしくなるのだ、と。 わかっていて。 でも、それは作品の…

みお
1か月前
6

奪う側

オッペンハイマーの映画が好評だということだ。 ずっと原爆投下を悔やまない姿勢のアメリカの 態度の軟化が見てとれる、などという記事を いくつか読んだ。 ヒロシマ・ナガ…

みお
1か月前
4

祝祭

あなただけの、道の途上で。 あなただけに捧げる祝祭を。 わたしには呟くことしか出来ないけれど 踊ることも歌うことも かすかにしか出来ないけれど それでもあなたに向か…

みお
1か月前
7

役に似た言葉

演じるこころに似通った詩があったので 覚え書き。 大好きな井坂洋子さんの詩だ。 声 過度に 音楽をあびたあとは 麻痺した耳を休めたい インコの声が肩のあたりで まだい…

みお
1か月前
7

人間の責任

今回の作品で、大切にしたいことがある。 わたしが演じる役は 天皇制を現している、とも言われたり アメリカを指している、と言われたり 高度経済成長期を現している、と…

みお
1か月前
5
それでも人生にイエスと言う

それでも人生にイエスと言う

悪魔的なものがこの世にあるとしたら
それを見たことがあると
確かに言える

子供の頃家中の床が
ガラスの破片だらけになり
足の指を切ったこと

わたしを愛した人が
いつかわたしを埋めてしまう為の
穴を掘っていると
気づいたこと

どの瞬間も
わたしは上手く
悪魔を祓うことが出来なかったのだ

わたしは若く未熟で
まだ人生の指針が定まっていなかった

「優しさ」という名前の
可能性と隙を
まだ残しな

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尖ったもの柔らかいもの

尖ったもの柔らかいもの

わたしの中に両方ある。
尖ったもの柔らかいもの。

尖ったものはでもたまにしか出てこない。
昔芝居をしていた頃はよく出てきていた。
でもそれは芝居をしていたからではなく
歪のある環境にいたからだったと
今さら気づいたのだ。

わたしとは尖ったもので
だから人を傷つける。
だからそばに寄らないほうがいい。
そんな風に思っていた。

あの頃。
尖っていたのはわたしではなかった
のかもしれなかった。

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恋のようだ

恋のようだ

生きることは清新で
匂い立つ恋のようだ。

台詞を覚え
本番の張りつめた空気の中で
発語する。

その瞬間にも似た
痛みに近いような
極限の賭け。

それが本当は
瞬間瞬間、生きている
わたしたちの人生に
起きていることなのだ。

わたしはわたしを
何一つ知らない。
わたしは世界を
何一つ知らない。

わたしは恋人を、友人を、家族を
まだ何一つ知らない。
わたしは政治を歴史を、思想を生活を
まだ何

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諦める・信じる

諦める・信じる

ついこの間まで、芝居漬けだったのに
もはや介護の仕事の問題で
頭がいっぱいである。

若い頃はやっぱり芝居が一番で
他の仕事は二の次だったのに
年を取ったということなのだろう。

ずっと我慢してきたこと。
現場で常に問題になっていて
皆が頭を突き合わせても、どうにもならなくて
でもどうにかしようと
ずっともがいてきたこと。

それの所在をどうしたらいいのか
わからないのだ。

岐路に立っている。

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母のこと

母のこと

どうしてなのか、わからないのだ。
演劇をやることのどこに
母の死を乗り越えられる理由があったのか。
わからないままだ。

勿論哀しくないわけではない。
思い出すことも沢山ある。
でも公演の前と後では全く変わってしまった。
自分自身の心が。
それがはっきりとわかる。

何かを排出し
生まれ変わる。
そのような感覚が少しあったように思う。
古い皮膚が剥がれ落ちて
新しい桃色の薄い皮膚が張ってくるように

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続ける、ということ

続ける、ということ

久しぶりの舞台復帰を終えて
今思うこと。
こんな苦しいことを
10年もやっていたのかー!っという
他人事のような驚き。
そんなにも好きだったか…という気づき。

ここから、また演劇を続けることは
簡単ではない。
わたしはかつてプロの俳優だった頃
結婚しない、子供を持たない
宣言をしていた。
演劇というものが、他者を排除する
時に傷つける構造だということを
理解していたからだ。

わたしなら、女優の

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ひっぱられる

ひっぱられる

演劇には遠心力があるのだ。
しみじみそう思う。

一度触れてしまえば
ぐるぐる回る銀河鉄道にでも乗ったかのように
降りることが難しくなる。
大体次の停車駅がどこなのかさえ不明だ。

でもこの鉄道の友人となり
永い旅を続けていきたいと願うのならば
時刻表と路線図に
誰よりも精通しなくてはならない。

身を捧げ、鉄道そのものとなる
あるいはもはや、宇宙そのものとなる
そんな生き方は
わたしはもう選ばな

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誰かの幸せが

誰かの幸せが

誰かの幸せが幸せなのだと気づく。
そんな1日だった。

先週は自分の舞台の本番だったけれど
今日からは先輩たちの本番である。

新しい集団に出会って
ほんとうにずっと良くして頂いている。
皆さん優しく、謙虚で、ユーモラスだ。

自然と、何かお返ししたいと思う。
支えて頂いた分、支えたいと思う。

裏方として、お手伝いさせて頂く。
出演する俳優さんの緊張や悩みを
ほんの少しだけ感じる。
それでもカー

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なぜ生きるか

なぜ生きるか

いつも思う。これは何なのだろうと。
芝居は祭りだ。あっという間に消える。
あんなに長い準備も苦しみも
公演が終われば跡形もない。
何のために、そこまでするのだろう。
なぜ自分は俳優でありたいのだろう。

わたしは母が死んでからずっと
本来の自分ではなかった。
それは認めなくてはならない。
もう人生が半分終わったような気がしたし
それも仕方ないことだと思っていたのだ。

たった一度芝居をやっただけだ

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4分の3

4分の3

トラウマを克服すること。
それが今回の目的だった。

完全に入っているはずの台詞が
出ないと思い込むこと。
ちゃんと出来ているシーンが
空間が歪んでいるかのように
突然不安定なものに感じること。
ただ静かに観ているだけのお客様が
退屈しているように感じること。

そういう「弱い気持ち」
「自分を信じられない自分」を
克服したかった。

かつて、それに内側から押しつぶされ
外側からはいじめ抜かれて

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わたしに出来ること

わたしに出来ること

準備がすべて終わって、あとは本番を待つばかりだ。
こんなに時間をかけさせてもらえたこと、はじめてかもしれない。
心が穏やかだ。

母は、悔やんではいないかと心配だった。
道を誤ったのではないか。
もっと他に、助ける方法があったのではないかと。

芝居の稽古を通して、母は死んだのだとわかった。
悩んでも上手くいっても、もう話すことは出来ないこと。
母はもうこの世にはいないこと。
母といた時間は、すで

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言葉が語り始める

言葉が語り始める

簡単だ、と思うことがあるのだ。
このまま大きく声を張り上げれば
感情に溺れて泣いてしまえば
わかりやすく芝居らしくなるのだ、と。

わかっていて。
でも、それは作品の品格を落とすから
やめなさいと諭された過去を
懐かしく思い出す。

そこまでしなくても、お客様はわかる。
役者が思うより、お客様は聡明なものだ。
預ける芝居が大切だと
かつて尊敬していた人に教わった。

その約束を守っていると
世間的

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奪う側

奪う側

オッペンハイマーの映画が好評だということだ。
ずっと原爆投下を悔やまない姿勢のアメリカの
態度の軟化が見てとれる、などという記事を
いくつか読んだ。
ヒロシマ・ナガサキでも上映されたのだという。
日本の映画監督がこの作品に対して
アンサーになる映画を日本でぜひ作りたいと話していた。

どれもこれも、悪いことではないのだろう。
きっと…
何かの前進だと好意的に受け止めるべきなのだろう。

でも、わた

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祝祭

祝祭

あなただけの、道の途上で。
あなただけに捧げる祝祭を。

わたしには呟くことしか出来ないけれど
踊ることも歌うことも
かすかにしか出来ないけれど
それでもあなたに向かって
紡ぎ出した言葉の糸を
いま放射する。

生きていてくれて、ありがとう。
それじゃあね、またね。
またすぐに会えるよね。
優しさを勘違いしていて、ごめんね。
どんなことも一緒に、乗り越えられるよね。

明かりが入り
舞台に暗闇が降

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役に似た言葉

役に似た言葉

演じるこころに似通った詩があったので
覚え書き。
大好きな井坂洋子さんの詩だ。



過度に
音楽をあびたあとは
麻痺した耳を休めたい
インコの声が肩のあたりで
まだいきているの
と鳴く

あなたの怒声が聞こえ
深夜 だれかにささやかれる
私は雨によみがえった芝の色を
灰が動くようにして見ている

むかし誤って殺したインコのお墓は
とっくに霊がぬけ出て
それを見ることも
墓を想像することもむなし

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人間の責任

人間の責任

今回の作品で、大切にしたいことがある。

わたしが演じる役は
天皇制を現している、とも言われたり
アメリカを指している、と言われたり
高度経済成長期を現している、とも言われる。

つまるところ、善なる側
市民の側、古き良き日本の側ではない
ということが言える。

一生懸命、加害の側なのだと意識しながら
演じてきたが…今ひとつ
何かが足りなかった。

ふと、自分の家の本棚にある
緒形正人さんの「チッ

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