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放課後ランプ / 毎週ショートショートnote
旧校舎の引き戸をそっと開ける。
教室の中央には机を囲むように椅子が四つ。置いてあるランプに火を灯すとガラスを通した光が波のように揺れた。
「『放課後ランプ』のおまじない、本当に効くのかな。」
カナが不安そうに言う。
「絶対に効くよ。先輩もこのおまじないで両思いになったって。」
四人は椅子に座った。
「いい?みんなはカナの幸せを祈る。カナはランプに向かって告白するんだよ。」
「・・・好きです。」
「
真夜中万華鏡 / 毎週ショートショートnote
眠れない。
もう何日も落ち込んだ気分のまま昼も夜も過ぎて行く。
窓を開けると真っ暗な空。
月はなくても星が綺麗だ。
綺麗、なんて感情は残ってたんだと思うと少し笑った。引き出しから黒い下敷きを引っ張り出して丸めて筒にする。
そのまま星を覗いたら、真夜中万華鏡。
…になるかと思ったけどただの真っ暗闇。
そうか、万華鏡は中に鏡が入ってるんだっけ。
ため息をつきながら星を覗いていると、筒の向こうに白く美し
トラネキサム酸笑顔 / 毎週ショートショートnote
「トラネキサム酸?」
プレゼントした化粧水を見ながら首を傾げる。
「ふぅん。色白好きだもんねぇ。」
妻は肩につく長さの髪を指先で触りながら、ちらと僕を見る。
「見たの。色白ロングヘア、ワンピースの長身美女と映画館に入るとこ。」
深呼吸して冷静に、早口にならないように答える。
「あれは山崎だ。女装して外に出たいけど一人じゃ勇気が出ないからって頼まれたんだよ。」
スマホに入れたワンピース姿の山崎の写真
春ギター / 毎週ショートショートnote
缶ビールを一口。
窓辺に立てかけたギターと夜の花見。
白い月明かりに女の子らしいモノが何も無い部屋が浮かぶ。家具も服も黒ばっかで、可愛らしい色は外の桜くらいだ。色気の無い部屋が私らしくて少し笑った。
「夜ってさ、寂しいよね。」
真夜中にかけた電話は、私なりに誘い文句のつもりだったから、アイツが急いで来てくれてすごく嬉しかった。
「俺の古いやつだけど、やるよ。じゃあな。」
ギターを置いてサッと帰るア
オバケレインコート / 毎週ショートショートnote
話し声が聞こえて目が覚めた。
廊下を覗くと白くフワフワした物体がいくつも揺れている。よく見ようとドアに近づくと、ギィ。
慌てて壁にかけてあった空色のレインコートを頭からかぶり足が見えないようしゃがむ。
「君、すごく珍しいね。」
「空色にヒヨコ柄のオバケなんて初めて。」
部屋に入ってきたオバケの子供たちは僕のレインコートをつんつん引っ張る。
「どうやって色つけるの?」
「えぇと、ほら、うーんって強く
雑記 お遊びに乗ってみた
三羽 烏さんが↓こんな記事を乗せてまして、
ヒヨコ🐤さんが遊んでいたのです。
想像よりはるかに強そうなヒヨコ🐤さんに驚きながらも、私も乗っかって遊んでみました。
可愛いけど、ヒヨコさんの強そうな感じ羨ましいなぁ。本名…いや旧姓でやってみよ。
本名もちゃんと女子名なのに何故ミイラ?いやミイラだもの、包帯解いたら女子なのかも。
強そうかどうかは微妙だなぁ。
下記で名前を入れると「こんなか
命乞いする蜘蛛 / 毎週ショートショートnpo
「ちょっと、待ってください。」
蜘蛛はお釈迦様の指に足を絡ませた。
「お前の仲間を助けた男だぞ。気が向かないのか。」
蜘蛛は大きく頷いた。
「確かに一匹の蜘蛛を見逃しはしましたが一度きり。盗みや殺しを繰り返していた男ですよ?あそこにいる他の者達も同様。そんな中に私一匹が降りたらどうなりましょう。」
「おまえの糸を登ってくるであろうな。」
「えぇ、それも大勢で。そうなると私は罪深い人間の体重をかけら
桜回線 / 毎週ショートショートnote
「不要な方消します。」
一行きりのメールが届いた。差出人のアドレスには覚えが無いから、普通なら迷惑か詐欺だと捨ててしまう所だ。
けれど、今の私には魅力的な一行だった。
「お願いします。」
「ご利用ありがとう御座いました。」
一ヶ月後に届いたお礼のメールを見て、暴力とギャンブルで出来たような夫が行方不明になったのは、あの時返信したからなのかと驚いた。どうしよう。あいつの借金返済で手一杯の私にお金は
デジタルバレンタイン / 毎週ショートショートnote
チョコは渡せなかった。仲良く話すミナと彼が頭から離れないまま部屋にこもっていると、お兄ちゃんがまたリモコンを持って部屋にきた。
「今度のはタイムマシンだぞ。戻ってチョコ渡してこい。」
2月14日に設定して赤いボタンを押す。
ダリの絵みたいな時計がすごい勢いで左右を通り過ぎ、気がつくとお兄ちゃんがいない。
外に出てみるとミナっぽい顔の等身大レゴブロックが立っていた。
「110100…」
「え?何?」
行列のできるリモコン / 毎週ショートショートnote
今日は一日中ずーっとドキドキして、テストもうわの空だった。
放課後の渡り廊下。ミナに彼を呼び出してと頼んで、チョコレートを持って待っていた。
足音が聞こえてきた。
精一杯可愛い顔で振り向く。ん?
「先生?」
「ここにいたのか。最近頑張っていたのに今日のテスト全然出来てなかったから探してたんだぞ。心配事でもあるのか?」
告白の事で頭がいっぱいでした、なんて言えない。
どうしよう。先生の向こうに彼とミ
ツノがある東館 / 毎週ショートショートnote
「暴れ牛だ!」
あぁどうして今日は赤いスカートにしたのかしら、と自分を呪っても仕方ありません。
大きな暴れ牛を追いかけて大人たちが走ってきますが、想像より速い牛に追いつけそうになく、逃げろと叫ぶのがやっと。
暴れ牛の赤く充血した目は明らかにスカートを捉えていますが、足がすくんで動けません。
ドドド、と地響きと砂埃を立ててまっすぐ向かってくる暴れ牛。もう目の前です。
そうだ、これラップスカートだった
アメリカ製保健室 / 毎週ショートショートnote
保健室は今日も人だかりが出来ていた。
みんなフィンリー先生が目当てで、ケガはもちろん英語を教えて欲しいとか何とか理由をつけては保健室へとやってきていた。
「OK、傷にはサビオ貼るデスネ。」
「アタシ英語はアメリカ製よ。授業はクイーンズっしょ。」
美しい顔立ちに微妙な日本語がまた可愛い。危うくニヤケそうになるのを何とか抑える。
「ほら、授業始まるぞ。戻れ。」
「うるさい体育教師が来たー。」
文句を言
ドローン課長 / 毎週ショートショートnote
三日続けて酷い吹雪だった。
窓から白一色の景色を見ながら珈琲を飲む。こう酷い吹雪だと出社出来る人間も限られるし仕事の依頼も少ない。
「課長は今日も遅刻ですかね。」
雪で視界も悪く、除雪も行き届いていないから毎日渋滞だった。僕は近いし、先輩はすごく早く家を出ているらしい。
「今日は遅刻しないって連絡きてたよ。ドローン課長になるんだって。」
「何ですか、それ。」
「ドローンを先に出社させて遅刻は回避す
会費制の粉雪 / 毎週ショートショートnote
「雪の会費をお願いします。払ってもらわないと雪が降らなくなっちゃうの。」
玄関で燕尾服を着た小さな男の子が箱を抱えて立っていた。
「雪なんて要らないよ。雪掻きしたくない。」
男の子は黒い袖で顔を覆いシクシクと泣き出した。
「どうせ詐欺だろ。子供にこんな事させるなんて。」
しゃくりあげながら男の子は首を振る。
「詐欺じゃ無いもん。雪が降らないとみんなのお家が無くなっちゃうんだもん。」
「かまくらかよ