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作品のようなもの。

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ちょっとした短編小説のような作品を集めてみました。
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contradiction

contradiction

おしゃべり好きな少女の震える手。

無関心そうな少年からの素敵ですのひと言。

耳を赤くする彼女が纏うオーラ。

この世界に漂う不安を
敏感に感じとる心が
取り残されてしまう社会。

声なき声に鈍感な僕らは
雫を与えることができるだろうか。

僕は怖いんだ。

僕は怖いんだ。

言葉にすることが怖くて。
得体の知れない何かを喉元から感じて。
心が窮屈になって。

僕は感じたことを言葉にした。
誰も反応してくれなかった。
ただ沈黙の時間だけが流れていた。

苦しかった。

何かおかしなこと言ったかな...
間違ったこと言ったかな...
こんな些細なことばかり気にする自分が厭になる。

君が想像している程
人は人のことに興味ないから。
気にしすぎだよ。

遠くから聴こえる声に

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交差点

交差点

心に迫ってくるんだ。
寂しさ。不安。恐怖。

愛することが怖くて。
愛されることが怖くて。
信じることが怖くて。
信じられることが怖くて。

青くて脆いガラスのようだ。
触れたら一瞬で割れ
割れた破片で誰かを傷つける。

だから僕は、生きていくために
強くなりたいという想いを心に纏う必要がある。
感情に嘘をつく必要がある。

こんなことを考えながら
ひとり空を見上げる。涙が頬を伝う。

感情って何

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僕と君の物語

僕と君の物語

緑のマフラーをした君を
僕はずっと探していた。

君と出逢う前から。

僕は僕という存在を。
知られることが。理解されることが。
怖くて、怖くて、震えていた。
生きていくことさえ怖かった。不安だった。

その想いを内に秘めていることも知らず
君は僕に近づいた。

そして、苦しめた。

君は僕の中に眠る何かを知りたがった。
その何かを通して世界を見透していた。

なぜこんなにも僕の中に溶け出そうとす

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夜と。愛と。

夜と。愛と。

僕の心が小さく震えていた。
こんなにも穏やかな夜があるのか、と。

耳を澄ますと聴こえてくる波の音。

そして、君の声。

君の甘い声が。囁くような声が。
僕の身体に響き渡る。
穏やかな愛に包まれる。

君の声はずるいよ。ずるい....

感情の波に飲まれていた僕だったが
いつの間にか
君の声で優しく溶かされていた。

僕の中に眠る愛を
見つけだしてくれてありがとう。
気づかせてくれてありがとう。

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雨を描く。

雨を描く。

雨が降ったら私を想い出して欲しい。

彼女はその言葉を最後に、
僕の目の前から姿を消した。

雨がよく似合う人だった。
どれだけ幸せに満ち溢れている日でも、
いつも影を残して、
僕の心を少しずつ侵蝕していった。

愛って何だろう。
心の奥にしまった記憶を手繰るように
彼女はつぶやいていた。

僕は何も答えず、ただ聴いていた。
聴くことしかできなかったから。

大丈夫。と、
そっと唱える。

必ず逢

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美しき悪

美しき悪

目に映る世界がどれだけ美しくても
突然襲ってくる。悪魔の蕾が。

まるで僕の幸せを奪うかのようだ。

降り注ぐ光がどれだけ価値のあるものでも
心の在り様によって一瞬で闇に変わる。

僕の目から映し出される
モノ。カタチ。イロ。オト。コトバ。ウゴキ。

その全てが僕の姿。

海の底へゆっくりと沈み行く。
手を伸ばす。

僕は過去を生きながら。未来を生きながら。
今を生きる。

ぼくは、ぼくを探す。

ぼくは、ぼくを探す。

ぼくは人と関わることを辞めた。
人と関わらなければ「傷」は残らないから。

雨音が響き渡る図書室の片隅で、
ぼくはまたページを捲る。
このページの先にある光を探して。

いつからだろうか。
人を信じることを辞めたのは。
幼い頃に母を病気で亡くした。
母を亡くした悲しみで父はおかしくなった。
だからいつも家で一人ぼっちだった。
それが当たり前だった。

学校に通い始め、ぼくにとっての当たり前が、他の

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日常の音楽会。

日常の音楽会。

いつもより静かな一日を過ごしていた。
だからなのか、たくさんの音が私を迎えた。

雨の音。鳥がさえずる音。
心地よかった。
目を覚まさずにそのままでいたかった。

そんな中、暖かい音に包まれた。
キッチンで料理を作る音。湯を沸かす音。

耳を澄ますと聴こえてくる。おと。
日常の音楽会にまたきっと足を運ぶ。

温もりを感じて。

温もりを感じて。

空から舞い降りた一縷の光。泉。温もり。

白馬を連れた一人の少年に見守られながら、
小さな身体で大きな声を上げる。

周りに響き渡る、太鼓の音、手のひらを合わせる音、草履を引きずって懸命に歩く子どもの足音。
それら全てをかき消すかのように。

小さくも大きな声は、一本の木に届いていた。
空へと真っ直ぐに佇む一本の木。
風に揺られながら、淡くも力強い色を放って。

甘く温かな香り。握りしめる小さな手

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こ・と・ば

こ・と・ば

ある日のこと。
突然、少年は言葉を話せなくなった。いや、話さなくなったという方が正しいのかもしれない。

今まで、少年は言葉によって自分のことを守り続けてきたのだ。相手を傷つけないように、傷つけないように....と。

けれど、相手を傷つけないようにするというのは表向きの理由であって、本当はただ自分が傷つきたくないからだった。

僕なんか言葉を話せなければいい。
そうやって生きていた方が、周りにも

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光が散る。

光が散る。

ある夏休みのこと。

元素の不思議を探るために
上野の博物館へ出かけた。

たくさんの元素が描かれた下敷きを
手に持ちながら歩く。そしてまた歩く。

せっかくの上野。
どうしても動物園の場所まで行きたくて。

また歩く。

一人の少女の目の前に広がったのは
小さな小さな遊園地だった。

トンネルを抜けた先には、
眩ゆいほどの光の粒が舞っていたのだ。

そう、私の世界が一瞬にして消えたのだ。

冷たさと愛と。

冷たさと愛と。

僕はずっと自分のことを冷たい人間だと思っていた。人に近づこうともしない。近づかれても上辺だけの会話で終わってしまう。なのに、心のどこかで、いつも誰かを、居場所を、求めていた。そんな自分が嫌で嫌で仕方なかった。

誰かを傷つけること。誰かに傷つけられること。なんでこんな些細なことを気にしてしまうのだろうか。なんで..なんで..。考えれば考えるほど、自分の心の塊が大きくなるばかり。心の塊が爆発してしま

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言葉と心と色と。

言葉と心と色と。

言葉には色がある。心にも色がある。

一昨日の夜の心は淡いピンク色。
昨日の心は淡いオレンジ色。やがて紺色へ。

今日はどんな色が待っているだろうか。

心の色は言葉の雫によって絶えず変化する。

言葉って不思議だ。

お母さんのお腹の中にいるような、
何かに包まれた暖かい言葉。

息を吹きかけたら一瞬にして散ってしまう言葉。

纏っている炎があまりにも強すぎて、
誰にも受け取ってもらえない言葉。

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