フィルカル編集部

「分析哲学と文化をつなぐ」哲学誌。若手研究者が中心となって創っています。おかげさまで8…

フィルカル編集部

「分析哲学と文化をつなぐ」哲学誌。若手研究者が中心となって創っています。おかげさまで8周年を迎えます。ハイカルチャーからサブカルチャーまで、さまざまな文化を分析哲学のツールを使って分析。また、分析哲学を文化として見る視点も提供します。https://philcul.net/

記事一覧

スタンリー・カヴェル「言うことは意味することでなければならないか」/伊藤迅亮(訳)【フィルカルVol.9,No.1より】

本稿は、次の論文の前半部の訳である(後半部の訳はVol. 9, No. 3 に掲載予定)。 Stanley Cavell, “Must We Mean What We Say?” Inquiry: An Interdisciplinary Journa…

すぐれて哲学的な概念としての〈セカイ〉(荒畑靖宏)【フィルカルVol.9,No.1より】

はじめに私のいわゆる「こすり倒した」もちネタとして、次のような逸話がある。 もうかなり前、哲学を専門としない社会人が聴講生の大半を占める連続講義を受けもっていた…

著者自身による外国語論文紹介「企画趣旨」(森功次)【フィルカルVol.9,No.1より】

今号から新企画「著者自身による外国語論文紹介」をスタートする。これは、外国語で論文を書いた人にその論文内容およびその学術的背景などを紹介してもらう、という企画だ…

特集スタンリー・カヴェル「趣意文」(吉田廉)【フィルカルVol.9,No.1より】

スタンリー・カヴェルの主著『理性の呼び声』(The Claim of Reason)が刊行される。 ウィトゲンシュタイン研究から映画論まで、カヴェルは非常に多面的な仕事をする哲学者…

「分析的ヒューム研究」趣意文(高萩智也)【フィルカルVol.9,No.1より】

1 企画趣旨本企画は、18世紀スコットランドに生まれ育ったデイヴィッド・ヒューム(1711–1776)の哲学と、20世紀初頭に誕生して以来英語圏を中心として発展してきた分析…

上野修トークイベント「スピノザと〈 私 〉のありか」(『フィルカル』Vol.8, No.3 刊行記念イベント)イベント趣意

『フィルカル』Vol.8, No.3 刊行記念イベントとして、スピノザ研究者の上野修さん(大阪大学名誉教授)をお招きし、下記イベントを開催します。 【ご予約はこちらから→ ht…

鈴木英仁「性的モノ化とはなにか、(不正だとして)なぜ不正なのか」【試し読み版】

12月20日刊行予定の最新号より、鈴木英仁氏の「性的モノ化とはなにか、(不正だとして)なぜ不正なのか」『フィルカル』Vol.8, No.3, pp. 202–219の冒頭を試し読み版とし…

上野修「分析哲学とスピノザ?」【試し読み版】

12月20日刊行予定の最新号より、上野修(大阪大学名誉教授)による分析哲学とスピノザをめぐる論考を試し読み公開します。 1思わずタイトルにクエスチョンマークを付けて…

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【内容紹介】下山千遥「書評『質的研究アプローチの再検討:人文・社会科学からEBPsまで』(井頭昌彦 編著)」

8月31日に刊行予定のフィルカル最新号(Vol.8, No.2)には、下山千遥氏(京都大学)による、『質的研究アプローチの再検討:人文・社会科学からEBPsまで』(井頭昌彦 編著, …

【内容紹介】山野弘樹「VTuberはいかなる意味で二次元/三次元的な存在者なのか?」

フィルカルVol.8, No.2に掲載の論文「VTuberはいかなる意味で二次元/三次元的な存在者なのか?」の著者・山野弘樹さんが、この論文の紹介記事をnote用にご寄稿くださいま…

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【試し読み】「女性」で「多様」な哲学者たちの往復書簡(稲原美苗・坂本美理・竹内彩也花・槇野沙央理)

2023年8月31日に刊行される最新号掲載の特集シリーズ『哲学とセーファースペース』。 企画の神戸和佳子氏は、その趣意を次のように述べています。 ここでは、そのうちのひ…

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【試し読み】井出和希・菊池 遼「距離と異なる像」(特集:ELSIの流れのほとりにて)

『フィルカル』では、ELSI(Ethical, Legal, and Social Issues)つまり新たな技術が我々の社会に実装される際に生じる様々な問題について、すでに何度か取り上げてきまし…

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【試し読み】富山豊「自著解説『フッサール―志向性の哲学』」

最新号から、 富山豊「自著解説『フッサール―志向性の哲学』」『フィルカル』8(2), 340–346 の一部を抜粋して紹介します。 富山氏は、最新号刊行記念イベント「VTuberの…

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【試し読み】(ポルノ化した)社会の中のポルノの哲学(八重樫 徹)

2023年8月31日に刊行される『フィルカル』最新号の特集のひとつ、「アミア・スリニヴァサン『セックスする権利』を読む」。 『セックスする権利』は、2023年2月に、山田文…

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【試し読み】セックスされる能力(ひらりさ)—アミア・スリニヴァサン『セックスする権利』を読む

8月31日発売の『フィルカル』最新号の特集「アミア・スリニヴァサン『セックスする権利』を読む」。 『セックスする権利』は、2023年2月に、山田文訳、清水晶子解説で、…

【試し読み】山野弘樹「VTuberはいかなる意味で 二次元/三次元的な存在者なのか?」『フィルカル』Vol.8, No.2

『フィルカル』最新号(Vol.8,No.2)の刊行に合わせ、来たる2023年9月1日、トークイベント「VTuberの哲学:Vtuberとビデオゲームの世界」を開催します。 イベントでは、最…

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スタンリー・カヴェル「言うことは意味することでなければならないか」/伊藤迅亮(訳)【フィルカルVol.9,No.1より】

スタンリー・カヴェル「言うことは意味することでなければならないか」/伊藤迅亮(訳)【フィルカルVol.9,No.1より】

本稿は、次の論文の前半部の訳である(後半部の訳はVol. 9, No. 3 に掲載予定)。

Stanley Cavell, “Must We Mean What We Say?” Inquiry: An Interdisciplinary Journal of Philosophy, Vol. 1, No. 3 (1958), pp. 172–212.

邦訳にあたってはこの初版を底本としつつ、

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すぐれて哲学的な概念としての〈セカイ〉(荒畑靖宏)【フィルカルVol.9,No.1より】

すぐれて哲学的な概念としての〈セカイ〉(荒畑靖宏)【フィルカルVol.9,No.1より】

はじめに私のいわゆる「こすり倒した」もちネタとして、次のような逸話がある。
もうかなり前、哲学を専門としない社会人が聴講生の大半を占める連続講義を受けもっていたときのことである。
それは6日間連続の講義で、認識論や心の哲学におけるいろいろな問題や立場を入門的に紹介するというような内容だったと記憶している。
その最終日の最後に30分ほどの質問コーナーを設けたのだが、そこであるご婦人が次のような質問を

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著者自身による外国語論文紹介「企画趣旨」(森功次)【フィルカルVol.9,No.1より】

著者自身による外国語論文紹介「企画趣旨」(森功次)【フィルカルVol.9,No.1より】

今号から新企画「著者自身による外国語論文紹介」をスタートする。これは、外国語で論文を書いた人にその論文内容およびその学術的背景などを紹介してもらう、という企画だ。

いろいろと考え方はあると思うが、外国語での論文発表は学術研究のある意味での「最前線」に参加することだと言っていいだろう。そこでは日本にまだほとんど十分に紹介されていない議論が行われていたりするし、前提されている知識も異なるだろう。世界

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特集スタンリー・カヴェル「趣意文」(吉田廉)【フィルカルVol.9,No.1より】

特集スタンリー・カヴェル「趣意文」(吉田廉)【フィルカルVol.9,No.1より】

スタンリー・カヴェルの主著『理性の呼び声』(The Claim of Reason)が刊行される。
ウィトゲンシュタイン研究から映画論まで、カヴェルは非常に多面的な仕事をする哲学者である―荒畑靖宏「日常性への回帰と懐疑論の回帰」(齊藤元紀・増田靖彦[編]『21世紀の哲学をひらく』、2016年)が彼の哲学を全体として紹介している―が、その主著の翻訳はまさに「待望の翻訳」であろう。
後期ウィトゲンシュ

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「分析的ヒューム研究」趣意文(高萩智也)【フィルカルVol.9,No.1より】

「分析的ヒューム研究」趣意文(高萩智也)【フィルカルVol.9,No.1より】

1 企画趣旨本企画は、18世紀スコットランドに生まれ育ったデイヴィッド・ヒューム(1711–1776)の哲学と、20世紀初頭に誕生して以来英語圏を中心として発展してきた分析哲学とを横断的に論じることをねらったものである。
今回、この目的のために三人のヒューム哲学の研究者が集まって、それぞれ論文を書いている。
ここで簡単にではあるが、企画者である私(高萩)が代表して、本企画の趣旨を述べておく。

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上野修トークイベント「スピノザと〈 私 〉のありか」(『フィルカル』Vol.8, No.3 刊行記念イベント)イベント趣意

『フィルカル』Vol.8, No.3 刊行記念イベントとして、スピノザ研究者の上野修さん(大阪大学名誉教授)をお招きし、下記イベントを開催します。
【ご予約はこちらから→ https://bb240324a.peatix.com/

その内容を紹介する趣意文を公開します。

イベント趣意スピノザ的〈私〉をめぐる問い

「私は思う、ゆえに私は存在する」(『方法序説』)と書いたデカルトが〈私〉を発

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鈴木英仁「性的モノ化とはなにか、(不正だとして)なぜ不正なのか」【試し読み版】

鈴木英仁「性的モノ化とはなにか、(不正だとして)なぜ不正なのか」【試し読み版】

12月20日刊行予定の最新号より、鈴木英仁氏の「性的モノ化とはなにか、(不正だとして)なぜ不正なのか」『フィルカル』Vol.8, No.3, pp. 202–219の冒頭を試し読み版として公開します。

はじめに「性的モノ化 (sexual objectification)」は、第二派フェミニズムの理論的著作によって注目されることになったテクニカルな用語であったが、いまや学術領域に留まらず、フェミ

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上野修「分析哲学とスピノザ?」【試し読み版】

上野修「分析哲学とスピノザ?」【試し読み版】

12月20日刊行予定の最新号より、上野修(大阪大学名誉教授)による分析哲学とスピノザをめぐる論考を試し読み公開します。

1思わずタイトルにクエスチョンマークを付けてしまった。
あやしい、いかがわしいという意味ではない。これはいったい何の話であるか、という戸惑いの疑問符である。
というのも、たとえばカントやアリストテレス、あるいは昨今ではヘーゲルなら「分析哲学と〜」というふうに繋げても抵抗がないが

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【内容紹介】下山千遥「書評『質的研究アプローチの再検討:人文・社会科学からEBPsまで』(井頭昌彦 編著)」

8月31日に刊行予定のフィルカル最新号(Vol.8, No.2)には、下山千遥氏(京都大学)による、『質的研究アプローチの再検討:人文・社会科学からEBPsまで』(井頭昌彦 編著, 勁草書房, 2023)についての充実の書評が掲載されています。

このたび著者・下山氏本人が、この書評の紹介記事を、note用に寄稿してくれました。
ぜひご一読ください!

(フィルカル編集部)

ここでは、フィルカル

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【内容紹介】山野弘樹「VTuberはいかなる意味で二次元/三次元的な存在者なのか?」

【内容紹介】山野弘樹「VTuberはいかなる意味で二次元/三次元的な存在者なのか?」

フィルカルVol.8, No.2に掲載の論文「VTuberはいかなる意味で二次元/三次元的な存在者なのか?」の著者・山野弘樹さんが、この論文の紹介記事をnote用にご寄稿くださいました!

【論文の試し読みはこちらから】

こんにちは。
東京大学で哲学の研究をしている山野弘樹と申します。
2021年度から「VTuberの哲学」をテーマにした研究を行っております。

2022年8月に発刊された『フィ

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【試し読み】「女性」で「多様」な哲学者たちの往復書簡(稲原美苗・坂本美理・竹内彩也花・槇野沙央理)

2023年8月31日に刊行される最新号掲載の特集シリーズ『哲学とセーファースペース』。
企画の神戸和佳子氏は、その趣意を次のように述べています。

ここでは、そのうちのひとつ、

稲原美苗, 坂本美理, 竹内彩也花, 槇野沙央理. (2023). 「「女性」で「多様」な哲学者たちの往復書簡」『フィルカル』, 8(2), 160–190.

を紹介します。
本稿では、哲学研究者の稲原氏と3人の若手研

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【試し読み】井出和希・菊池 遼「距離と異なる像」(特集:ELSIの流れのほとりにて)

『フィルカル』では、ELSI(Ethical, Legal, and Social Issues)つまり新たな技術が我々の社会に実装される際に生じる様々な問題について、すでに何度か取り上げてきました。

前号に引き続き、「ELSIの流れのほとりにて」第二回をお届けします。
2020年4月、国内初の ELSIに関する学際的な研究・実践組織として発足した大阪大学社会技術共創研究センター(通称:ELSI

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【試し読み】富山豊「自著解説『フッサール―志向性の哲学』」

最新号から、
富山豊「自著解説『フッサール―志向性の哲学』」『フィルカル』8(2), 340–346
の一部を抜粋して紹介します。

富山氏は、最新号刊行記念イベント「VTuberの哲学」の登壇者の一人でもあります。

今回の記事のなかでは、近著『フッサール——志向性の哲学』(青土社、2023年)を著者みずから紹介してもらいました。
本書は、志向性というフッサール現象学の鍵概念を、簡潔な筆致で解き

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【試し読み】(ポルノ化した)社会の中のポルノの哲学(八重樫 徹)

2023年8月31日に刊行される『フィルカル』最新号の特集のひとつ、「アミア・スリニヴァサン『セックスする権利』を読む」。

『セックスする権利』は、2023年2月に、山田文訳、清水晶子解説で、勁草書房から刊行された、
世界的なフェミニストによる注目作の日本語訳。

この特集は、『分析フェミニズム基本論文集』の編訳者としても知られる木下頌子氏が「ぜひとも意見を伺ってみたい4名の方々」に声をかけたこ

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【試し読み】セックスされる能力(ひらりさ)—アミア・スリニヴァサン『セックスする権利』を読む

8月31日発売の『フィルカル』最新号の特集「アミア・スリニヴァサン『セックスする権利』を読む」。
『セックスする権利』は、2023年2月に、山田文訳、清水晶子解説で、勁草書房から刊行された、世界的なフェミニストによる注目作の日本語訳だ。

この特集は、『分析フェミニズム基本論文集』の編訳者としても知られる木下頌子氏が「ぜひとも意見を伺ってみたい4名の方々」に声をかけたことで実現した。

今回はその

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【試し読み】山野弘樹「VTuberはいかなる意味で 二次元/三次元的な存在者なのか?」『フィルカル』Vol.8, No.2

【試し読み】山野弘樹「VTuberはいかなる意味で 二次元/三次元的な存在者なのか?」『フィルカル』Vol.8, No.2

『フィルカル』最新号(Vol.8,No.2)の刊行に合わせ、来たる2023年9月1日、トークイベント「VTuberの哲学:Vtuberとビデオゲームの世界」を開催します。

イベントでは、最新号に掲載の論文「VTuberはいかなる意味で二次元/三次元的な存在者なのか?」(244–280頁)の著者、山野弘樹氏にご登壇いただきます。

ここでは、その論文の冒頭を抜粋して紹介します。

追記(2023/

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