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言葉を失ったあとで 信田さよ子・上間陽子
対談形式の本で、感想を書くのは難しい。
でも、とてもいい本だった。
だから、がんばって書き残す。
数年前と比べて、「唯一絶対の正しさ」みたいなものとずいぶん距離を取れるようになった。
言葉を探しながら迷いながら、綺麗な言葉じゃなく等身大の言葉で、自分の思いを話す力が身についてきたのだと思う。
自分の思いを話すことについて、3年以上前に書いたメモを引用したい。言葉がとても堅苦しくて、論
心はどこへ消えた? 東畑開人
ついつい僕は、大きくて抽象的で、血の通わない文章を書いてしまうなあ。
東畑開人の「心はどこへ消えた?」は、そういう大きな話ではなく、具体的で個別の、カラフルなエピソードが詰め込まれたエッセイ集。
臨床心理士の筆者が、これまで出会ってきたクライエント(カウンセリングに来た人)について、事実を一部変えたり、創作したりして作られたエッセイがたくさん載っている。
しかし、あとがきにはこんなこ
手話通訳者になろう 木村晴美・岡典栄
手話に触れる機会が減って、でも何か繋がっておきたい気持ちがあって、買った本。
手話通訳ってどんな仕事?
そんな素朴な疑問に丁寧に答えてくれるのが、今回の本「手話通訳者になろう 木村晴美・岡典栄(白水社)」
著者の木村晴美氏は、ろうの世界では超有名人。実際の動画とかを見てほしいんだけど、ものすごく手話が上手い。上手いと評価するのもおこがましいぐらいの、丁寧で洗練された手話の人。
前半
「非モテ」からはじめる男性学 西井開
男友だちにおすすめしたい本ランキングを作るなら、トップ3に入る本。
とても読みやすく、丁寧。問題意識は、以前感想を書いた「さよなら、俺たち 桃山商事」とかなり近い。というか、本の帯文を桃山商事の清田隆之氏が書いている。
今回の本は「『非モテ』からはじめる男性学」(集英社新書)。
「非モテ」って何?と思う方も多いかもしれない。それは、モテないこと。タイトル通り男性視点で書かれているので、「恋
急に具合が悪くなる 宮野真生子・磯野真穂
先日読んだ「ダイエット幻想」の中で触れた「急に具合が悪くなる」
前の感想でダイエット幻想の後半部は宮野氏の影響で議論が薄まったんじゃないかと書いた。イメージで批判するのはよくないから、実際に読んでみた。宮野氏とのやり取りの影響はあるけれど、考え自体は磯野氏スタートのものだったと思う。議論の失速感は、どちらかというと紙面の問題だったのかなと。ダイエット幻想後半の部分を、本書では丁寧に扱っていた。
「差別はいけない」とみんな言うけれど 綿野恵太(3)
前々回、前回に引き続き、「『差別はいけない』とみんないうけれど。」の紹介をしていこう。
改めてこの本の目的を大筋を確認すると、現代において多くの人は「差別はいけない」と思っているけれど、なかなか差別は無くならない。むしろ、差別を無くそうと活動している人に対して何となくモヤモヤしたり、反発感を覚えたりすることもある。そこには差別されている少数の弱者が優遇され、大多数の人たちが割りを食っているよう
「差別はいけない」とみんな言うけれど。 綿野恵太(2)
前回の「差別はいけない」とみんないうけれど。の紹介の続き。
まず前回の振り返りから。本書のテーマは、「『差別をなくそうとする人』に反対する考え方を理解すること」だった。
その際のポイントは、ほとんどの人が「差別は良くない」と思っているのに、差別を無くそうとする人たちにモヤモヤすることがあること。そして、「差別をなくそうとする人=反差別の人」に反対するのは、このモヤモヤが大きくなった「お前たち
「差別はいけない」とみんないうけれど。 綿野恵太
準備運動が必要な本がある。綿野恵太による「『差別はいけない』とみんないうけれど。」が出版されたのは2019年の夏。当時ちょっと目を通したけれど、しっくりこなくて読むのをやめてしまった。
あれから2年、何だか読めそうな気がして、手に取った。内容はだいたい飲み込めたと思う。きっと準備運動が済んでいたから。
この本は、色んな人の理論(ピース)を並び替えて整理している。だからピース自体を知ってい