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とんかつマガジン20211101~

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心不全で入院中に始めたnoteをまとめています。
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記事一覧

(小説)ドレッドヘアーの人 インタビュー

(小説)ドレッドヘアーの人 インタビュー

──本日はよろしくお願いいたします。

ドレッドヘアーの人(以下「ド」):こちらこそよろしくお願いいたします。

──まずドレッドヘアーにしたきっかけは?

ド:「ここに1枚の写真があります。これは今から45年前、わたしが3歳の時の写真です。当時の髪型は坊っちゃん刈りでした。見ての通りサラサラストレートだったんですよ。わたしのお気に入りの1枚です。ところがある日、父はわたしの頭をバリカンで丸刈りに

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肛門科に行きました(including:重金属食べちゃいました)

肛門科に行きました(including:重金属食べちゃいました)

(【すみません】肛門と便の話しか書いてありません)

 さてわたしは野菜が苦手だ。物心ついたときには身体が野菜を受け付けず、チャルメラや緑のたぬきの粉末スープに入っている小ネギさえ吐き出す有り様。大人になるにしたがって徐々に食べられるようになったが、やっぱり苦手意識は拭えない。
で、先日また心臓が止まりそうになって入院(3年ぶり2回目)したんですが、入院食がやっぱり野菜中心だったけどいい加減もう結

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DUB WAR(フラワーマン14日間連続春のDUB祭り)

DUB WAR(フラワーマン14日間連続春のDUB祭り)

 さてわたしは両肺の肺炎及び心不全で入院しましたが、治療でステロイドや各種抗生物質をたくさんドーピングしたからか、はたまた41℃の体温と83%の血中酸素飽和度のせいだったのか、まず、病室の天井の照明や火災報知機やスピーカーやブリーズライン(空調吹き出し口)の位置がサイケデリックに動き回り始めました。
『見知らぬ、天井』なんて言ってる場合ではなく、昔のDVDデッキのデモ画面よろしく天井のいろんな物が

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心不全 2/いきなり心不全の逆襲

心不全 2/いきなり心不全の逆襲

2021年10月31日、わたしは心不全で倒れた。自分の命が消え行く感覚に直面した時、誰かに伝えなければ永遠に失われてしまうストーリーの事が残念でならず、わたしはその記述を始めるのだが、ストーリーは記述の最中も新しく生まれ続ける。例えば──

第一章 セスのパットナム

 
2024年3月21日深夜、先日やったDJのことをnoteに書いていた。書いている最中わたしがどういう状態だったかというと、ふつ

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大失敗という名のDJ、大炎上という名の力士

大失敗という名のDJ、大炎上という名の力士

 さて先日DJをやりました。馴染みのクラブですが真面目なのでちゃんと開店25分前に行って店長さんや店員さんや演者の皆さんに「おはようございます(芸事では夜でも朝の挨拶というアンリトゥン・ルールがある。)今日はよろしくお願いいたします。」と挨拶して回っていたところ、DJブースの機材やスピーカーがまるまる最新型にリニューアルされている事に気がつきました。えっ!パッと見使い方が分からない!で、店員さんに

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ミロ 飲んじゃいました

ミロ 飲んじゃいました

 いつもペットボトルに入ったミロ(飲み物)を飲んでいる作業員がいる。50代の彼は掃除部門、わたしは鉄骨部門で仕事しているため一緒に作業することはなかったのだがつい先日、なぜか大工部門のヤバい仕事を丸投げされたわたしは朝礼で言った。
「エレベーターの完成検査の日程に関わる重要な作業です。急ではありますが、どなた様でも結構ですのでどうかわたしと残業をして下さい。」
すると、ミロ(飲み物)が言った。

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ゲームコーナーに行こう

ゲームコーナーに行こう

 心の中にゲームコーナーがある。

洗練されたいわゆるアミューズメントパークではなく、無駄に広くてスカスカなゲームコーナー。忙しく殺伐とした現実に追い詰められた時、わたしは心のゲームコーナーへと向かう。

18歳の夏休み、親友と呼べる友もなく、迫りくる将来(スラッシュ・メタル志望)に漠然とした不安を抱きながら無為に毎日を過ごしていた。
時折バイクで外出した。「友達と遊んで来る。」
当然友達はいない

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そんな服を着ていたら鉄砲で撃たれてしまう

そんな服を着ていたら鉄砲で撃たれてしまう

 クリスマスにはでっかいおもちゃをプレゼント!わたしは息子の趣味嗜好を反映させ、でっかいトミカ整備工場を選びました。喜んでくれてよかった。ガッツリブルーカラーなのは父ゆえか。妻にはノースフェイスのでっかいブーツをプレゼント。よく似合っているよ…さてわたしが3歳の時のクリスマスの朝、枕元にあったのはトリガーを引くとマシン・ガン・サウンドと共に薬莢がポコ・ポコ飛び出るでっかいM-16ライフル。父はわた

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飢餓海峡(Famine sector)7 裸のランチ

飢餓海峡(Famine sector)7 裸のランチ

 超大型現場の中には食堂が設置されることが多いし、それ専門の業者さんもいる。作業員しか知らない味がそこにはある。もし超大型現場に食堂がなかったら?昼休みになると1000人からの作業軍団が大挙して周辺のコンビニや飲食店に押し寄せパニックになることは想像に難くない。実際「昼休みに現場から出るの禁止」というルールを設けた現場もかつてあった。その現場の近くにあるラーメン屋さんがラーメンよりチャーハンについ

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心不全から2年

心不全から2年

 2年前の10月31日の朝、日曜日であったがあまりにも背中の痛みがひどいので、休日診療してくれる駅前クリニックに行った。初めて行くそのクリニックは電車を乗り継ぎ駅を出てすぐの建物。1階には模型屋さんがあり、ショーウインドウに飾られた数々の立派なガンダムにしばし見とれる。その2階にあるのがクリニックだ。さて、いつまでもガンダムを見ていたい処だが、そろそろお医者さんにいい薬をもらってチャーシューメンを

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サイバー作業員 キレられる

サイバー作業員 キレられる

 作業員同士のケンカは嫌なものだ。身内ならまだしも、業者x業者のケンカは長く深い遺恨を残し現場の進捗にも悪影響を及ぼす。
ある現場で内装ボード屋さんが電気工事屋さんにキレた。理由は単に邪魔だったからだそうだ。ボード屋さんは工事が遅れていて気が立っていた。電気屋さんは黙って引き下がったが、次の日の朝、ボード屋さんのエアタッカー(空気圧ででかいホッチキスを撃ってボードを取り付ける道具)用のコンプレッサ

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病床で危篤の作業員が詰所にいた!

病床で危篤の作業員が詰所にいた!

 朝礼後、詰所(作業員休憩所)に若手のA君が疲れた顔をしてたたずんでいたので、わたしは彼を和ますため面白い話をしようとして近づいた。
「どう?最近なんか面白い事あっポロ」
わたしの前歯がいきなりポロリと取れた。 (完)

──歯医者へ──

結局、義歯を入れるために前歯をもう一本抜いたので、完全に前歯がなくなってしまいました。
唇の裏側が口に吸い込まれてすごく気になる。なんか食事も味気ない。「寿司

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実話 とんかつの母③(最終回)

実話 とんかつの母③(最終回)

 しかし、不毛と思われた土地に植え付けられた「前衛の芽」は長い時間をかけ開花し、「茨城県北芸術祭 KENPOKU ART2016」の為にやくしまるえつこ氏がリリースした公式テーマソング「わたしは人類」が、オーストリアで開催されているメディアアート界のオスカー賞「Ars Electronica・STARTS Prize」に於いて日本人として初のグランプリを受賞した。(2017年)

これは地元にとっ

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実話 とんかつの母②

実話 とんかつの母②

──クリスト(1935~2020)。ブルガリア王国出身、アメリカ国籍の芸術家。彼の作品は「梱包」を主とする。家を、美術館を、橋を、海岸を梱包し「芸術とは何か?」と我々に問いかける。

そんなクリストが1980年代半ばのある日、日本をロケハンしていた。
「(想像)次はどこを梱包しようかな~ アッ!ここだ!!」

 その頃わたしはすっかり大きくなって10歳。当時はファミコンが大ブームだ。「ファミコン買

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