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お菓子の箱の中

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しまっておく。 ほかのひとの。
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家の94%を開放して、1クラス分と暮らす話

家の94%を開放して、1クラス分と暮らす話

このnoteは、Rethink PROJECTから依頼をいただき、「#Rethinkしよう」をテーマに執筆したものです。

「雨降ってきたんで、入れときました アオより」

ある日、家に帰ると、私の部屋の前に、きれいにたたまれた洗濯物があった。上にはふせんが置いてあり、そう書いてあった。

アオ。
彼は、夫でも恋人でも、兄弟でもない。4つ年下の彼とは、同じ家に住み始めて、ちょうど一年が経つ。

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Mar de Cheesecake -まるでチーズケーキ

Mar de Cheesecake -まるでチーズケーキ

5分でできるから、いつでも冷蔵庫にクリームチーズを常備する。

材料 2人分 (調理時間:5分)
・キリのクリームチーズ…………4個(82g)
・チョイスのクッキー……………2枚
・メープルシロップ………………お好み

作り方
① クッキーを袋のまま、潰す。

② お皿にクッキーを盛り付ける。

③ ②の上にクリームチーズを2段重ねでのせる。

④ メープルシロップをかける。

出来上がり。

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十二度の歪みに酔い、山手線で冷める

 彼女の家の時計はいつも二分だけずれていて、だから彼女の家では毎時〇二分と三二分に鐘が鳴る。だいたい十度くらいずれた彼女の日々は、容赦なくわたしの暮らしにすべりこんでくる。

 「酔狂だね」
 耳元で掠れた、少し低い声がする。薄暗くだだっ広いホールの中に隣り合って座っていた。周囲を見渡してもほんの数人しかいない。若いカップルや女の子たちなんていなくて、小さい子どもを連れた家族と、おばあちゃんの団体

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夢と、就職と、高速道路の加速帯。

夢と、就職と、高速道路の加速帯。

ぼくはこれまで、大学卒業後に入った会社、および、
その後の専門学校卒業後で入った会社を、
1年待たずとして辞めてしまった。そして、
それからの9年間、静養のような生活をしながら、
今では、有難いことに縁あって
パートとして勤めている学習塾講師のお仕事、
今月末で3年目となるー。
というのを、きのうのnoteで書いたですが。

この9年間のあいだ、
いや、これは今になってもだけどね、
どうしてじぶん

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2019/3/17

昔のノートをめくっていたら谷川俊太郎さんの詩がでてきた。たしか図書館で見つけて忘れないようにと書き写したものだと思う。数年前に書いたものだから自分の字が今とは違う。自分の字なのに自分の字じゃないみたいで、なんだか変な感じがする。

久しぶりに読んだけれどやっぱり凄い。そしてここに描かれているのはきっと春の夕方の情景だと思う。春の夕方の気持ちが閉じ込められている。

このCMも春の夕方の気持ちがする

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愛をあるだけ、すべて

愛をあるだけ、すべて

2018年10月29日、子どもが産まれた。

振り返ると、とても充実した1年だった。何年後かに振り返った時に、いつの時代に戻りたいかと聞かれても、多分2018年は選ばない。軽くハイになっていたかもしれない。こんなに一年を長く感じたこともなかった。

僕は40歳くらいで死ぬと思っていた。希死念慮があるとかじゃなくて、漠然と、僕の人生がそこから先に存在していると想像できなかった。父親が四十代で突然死ん

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夜のまたたき

真夜中のバスの灯りは独特な色をしていると思う。あまりに静かで、水でも運んでいるみたいにひたひたと進んでゆくから、あの中に人が乗っているだなんて、なんだか嘘みたいな気がしてしまう。

道を行き交う車もほとんどないような夜遅い時間帯だった。町はひっそりと静かで、もうみんな眠っているんだと思いながら私はひとり歩いていた。たしか直前まで雨が降っていたのだと思う。アスファルトが黒く濡れて光っていて、雨上がり

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部屋から

部屋から

今月末、一泊二日の旅へ行きます。
そのために今、テスト勉強を頑張っている。

先日卒業式で、可愛がってくれた先輩たちとハグして別れを惜しんだ。
卒業式は嫌いです
大好きな先輩たちはみんな卒業してしまって、ついに私たちが一番上。

彼らのように仲良く、優しくいたい。

卒業式の後、淋しい淋しいと言いながらバンドの子達とサイゼリヤに行った。
「今度のミーティングでバンド兼任可にして、まだライブに出れて

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自分が薄まってゆく

自分が薄まってゆく

歳を重ねることは

何かを積み上げる作業に見えるけれど

じつは

自分を薄める作業かもしれない。

きみのこと

「価値観が違う人」なんて分類したら

なんだか安臭くて

趣が無いけれど、

価値観が違う人。

たとえば

年齢のうんと離れた友達

学歴が遠く及ばない友達

言葉がほとんど通じない友達

私の嫌いな女を「好きだ」という友達。

そういう異文化の友達と仲良くしてると

自分が拡張さ

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好きなものは誰かに伝えたくなる

好きなものは誰かに伝えたくなる

昼間の電車が好きだ。

まばらな乗客に、あたたかな日差しが差し込む車内。ほんのりとあたたまったイスに、心なしか間延びした車掌のアナウンス。こんな平和な空間にいると、ここだけ別の時間軸で進んでいるのではと、疑いたくなる。

車内は、やさしい時間がゆったりと流れ、じんわりとこもる、あたたかさが乗客の眠気をエスコートしていた。

ぼくがうつらうつらしていると、電車は駅に止まり、小さな男の子が母親と手をつ

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建築の(ちょっとずれた)面白い本を紹介してみる

建築の(ちょっとずれた)面白い本を紹介してみる

最近忙殺されていて思考が硬くなり気味です.ということで,変なことに思いを巡らせたいなと思いまして,キーボードを叩いてみている.

世の中には変わった本が山ほどありますが,例に漏れず建築界にも変わった本が山のようにあります.僕が読んだ建築の中でちょっと変わっているな〜,と思った本を簡単に紹介してみようと思います.

という訳で最初はこの本です.

『グッドバイ・ポストモダン』隈研吾

今や,日本人な

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星と飛行機

星と飛行機

「あっ、あぶない!」

しずくは、顔をそむけました。

しかし、しばらくしても、何も起こりません。

しずくは、おそるおそる再び夜空を見上げました。

夜空は、平和そのもので、しんと静まり返っています。

しずくの隣には、おじさんがいました。おじさんは、お母さんの弟です。

「おじさん、ずっと空見てた?」

しずくは、聞きました。

「あぁ、見てたよ」

おじさんは、夜空から目をそ

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壮大な遊び場だと思うようになっていた

壮大な遊び場だと思うようになっていた

『人生は壮大な遊び場』

そう考えるに至ったのが一年前ほどの前のこと
楽しくも、苦しくも、総括してみれば
壮大な遊び場で、人生劇場を演じ切ることができるのかどうか
ということなんだろうな、そんな気がした

考えてみれば、昔から父がそう言ってきたはず
それに気が付いたのが一年前だ、遅いな

割と最近のある夜
生きていれば
そりゃいろんなことが降りかかってくるから
苦しくて辛くて
どうにもならなくて布

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