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イラスト、文章、短歌。ここ東京

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  • 【エッセイ】たぶん、わたしのはなし。

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  • 【短編小説】東京他人物語

    短編小説です

記事一覧

たぶん、わたしのはなし。 Vol.2 「ど感情・ど情緒人間のウチ、からだでするコミュニケーションに思いを馳せてみる。とりわけハ…

少し前、とあることで落ち込んだ。「我慢すればよかったかもしれないけど、わたしはわたしだから、わたしには嘘つけないし。でも、言葉にしない、という選択肢もあったよな…

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8日前
1

たぶん、わたしのはなし。 Vol.4 「フェミのはじまりは、野良の偉オジ」

セクシュアリティ診断、というものをした。診断の結果、私の心の性は「シスジェンダー女性」で、ふるまう性は「ノンバイナリー」、性的嗜好は「ヘテロセクシュアル」、恋愛…

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2週間前
29

たぶん、わたしのはなし。 Vol.3 「社会人ってなんなのさ。就職活動と2つの会社で学んだこと〜派遣社編〜」

正社員時代、「デザインの勉強をしたい、デザインの学校に行こう」と思い立ち、会社を辞めようと決心したのは、確か年末頃だった。ただ、イラストを学びたいのか、デザイン…

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3週間前
29

2024年4月1日 私は私に失礼だけど、私はいつも大丈夫です

入社日だった。昨夜は早く寝よう早く寝ようと思っていたのに、3時間も眠れなかった。新しい環境にそわそわと、何だか落ち着かなかったのかもしれない。眠れない時、本を読…

chihayuri
1か月前
10

たぶん、わたしのはなし。 Vol.3 「社会人ってなんなのさ。就職活動と2つの会社で学んだこと〜正社員編〜」

その会社に入社した決め手は、「ホワイトそう」「大きい会社だから」という安直な理由だった。先回の最後の方で書いたことだけど、就職活動がうまくいかなかった私は、「仕…

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1か月前
18

たぶん、わたしのはなし。 Vol.3 「社会人ってなんなのさ。就職活動と2つの会社で学んだこと〜就活編〜」

私は現在、派遣社員として働いている。仕事内容は、デザインやイラストなど、クリエイティブ系でもなんでもなく、事務職である。会社もデザイン系でもなんでもない。程遠い…

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1か月前
10

東京他人物語「Tについて」

働き疲れて起きれなかったある土曜日。私を起こさないように、静かにシャワーを浴びて、静かに家を出ていった。昼頃起きたら、「頑張ってるよ、偉いよ。たくさん寝て、気が…

chihayuri
2か月前
10

東京他人物語「あたしの日記」

そちらのほうが十分変なのに、「きみ、変だよ」と言われた。「現代(いま)の人だね」、「地元に友達いないでしょ」とも。「毎日日記を書いている」とその人は言い、今日は…

chihayuri
3か月前
3

たぶん、わたしのはなし。 Vol.2 「ど感情・ど情緒人間のウチ、からだでするコミュニケーションに思いを馳せてみる。とりわけハ…

少し前、とあることで落ち込んだ。「我慢すればよかったかもしれないけど、わたしはわたしだから、わたしには嘘つけないし。でも、言葉にしない、という選択肢もあったよな…

chihayuri
3か月前
17

2024/1/7 ねむりたりない

朝起きたら、と言っても9:30頃で、なんで目覚めたかというと、クロネコヤマトが呼び鈴を鳴らしたからだ。母親が丁寧にぎっしりと詰めた、「冷凍」と「常温」の荷物。まだね…

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4か月前
9

たぶん、わたしのはなし。 Vol.1 「テレパシーで交信できないなら、face to faceでいくしかないのだ」 

シャワーを浴び終わり、髪を乾かそうと思ったら、「あと2分50秒で2024年だよ!」とリビングから声がして、あわてて家族のもとに向かった。濡れた髪のまま、一応手拍子しな…

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4か月前
12

東京他人物語「梅雨。ボーイについて」

「行き先を決めないで、テキトーにそこらへん、ドライブしよう」格別に、今日、ボーイの調子はいい。残り少ないセブンスターに火をつける。ヴィーン。窓を開ける。換気の意…

chihayuri
11か月前
12

東京他人物語「最寄りのラーメン780円」

二人で一度だけ行った、最寄りのラーメン屋。特に思い入れもないはずだけど、しばらく店には入れなかった。地下鉄に乗っているとき、彼はいつも大きい声で喋る。私はいつも…

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1年前
5

東京他人物語「27クラブに入れずにあいつは今年三十になる」

トレインスポッティングに憧れて、わざとオールスターを汚して履いていた。女の人は多分いっぱいいるけれど、セブンスターからは浮気したことがないらしい。部屋が汚いのに…

chihayuri
1年前
3

東京他人物語 「私は東京にみずうみを持っている」

上京のタイミングは、就職だった。 地元の企業は一つも、受けなかった。 やっと、自分の人生を手に入れたと思った。 自分は、割り切って、何事も取り組める人間だと思って…

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1年前
7

東京他人物語 「天使のねがお」

三週間に一度会えればいいほうで、たいてい場所は俺の家。部屋番号だって知っているはずなのに、駅に迎えに来て、と言う。彼女は多分、サークルの友達の、友達だったはず。…

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1年前
3

たぶん、わたしのはなし。 Vol.2 「ど感情・ど情緒人間のウチ、からだでするコミュニケーションに思いを馳せてみる。とりわけハグについて」

少し前、とあることで落ち込んだ。「我慢すればよかったかもしれないけど、わたしはわたしだから、わたしには嘘つけないし。でも、言葉にしない、という選択肢もあったよな。はぁ、ほんと無理...。」みたいな状態に陥ったのである。でも結局、この件は嘘をつかずに、相手に伝えてよかったことだった(Vol.1 テレパシーで交信できないなら、face to faceでいくしかないのだ、を参照)。

そんな時、友人から

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たぶん、わたしのはなし。 Vol.4 「フェミのはじまりは、野良の偉オジ」

たぶん、わたしのはなし。 Vol.4 「フェミのはじまりは、野良の偉オジ」

セクシュアリティ診断、というものをした。診断の結果、私の心の性は「シスジェンダー女性」で、ふるまう性は「ノンバイナリー」、性的嗜好は「ヘテロセクシュアル」、恋愛思考は「ヘテロロマンティック」だった。噛み砕いていうと、私は心の性と体の性が同じ。ただ「女性らしいと思われたりしない外見や言動をしたい」と思っている。そして、性的魅力を感じる相手は異性、かつ、私は異性を好きになる、という意味だ。生まれた頃か

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たぶん、わたしのはなし。 Vol.3 「社会人ってなんなのさ。就職活動と2つの会社で学んだこと〜派遣社編〜」

たぶん、わたしのはなし。 Vol.3 「社会人ってなんなのさ。就職活動と2つの会社で学んだこと〜派遣社編〜」

正社員時代、「デザインの勉強をしたい、デザインの学校に行こう」と思い立ち、会社を辞めようと決心したのは、確か年末頃だった。ただ、イラストを学びたいのか、デザインを学びたいのか、明確にわからず、自分はどの学校の、どの学科に行けばいいのかと、迷っていた。会社を辞めて、すぐ何かしらの専門学校に入ることもできたけど、お金がかかるし、入ってから「なんだこれ!間違えた!」みたいなことは、もうしたくない。じっく

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2024年4月1日 私は私に失礼だけど、私はいつも大丈夫です

入社日だった。昨夜は早く寝よう早く寝ようと思っていたのに、3時間も眠れなかった。新しい環境にそわそわと、何だか落ち着かなかったのかもしれない。眠れない時、本を読んだりしようとするのだけど、結局はネットの海を泳ぎすぎてしまう。昨日はそのせいで、また余計なことを知った。私はそんな風には笑えないし、そんな愛らしさは無い。同じ本を読んでいるところが、私を一番苦しめた。上手にあがってくれない口角とか、のっぺ

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たぶん、わたしのはなし。 Vol.3 「社会人ってなんなのさ。就職活動と2つの会社で学んだこと〜正社員編〜」

たぶん、わたしのはなし。 Vol.3 「社会人ってなんなのさ。就職活動と2つの会社で学んだこと〜正社員編〜」

その会社に入社した決め手は、「ホワイトそう」「大きい会社だから」という安直な理由だった。先回の最後の方で書いたことだけど、就職活動がうまくいかなかった私は、「仕事」というものの立ち位置を一歩下げて「楽な仕事をして、空いた時間を趣味(絵など)に充てよう」と考え方を転換した。あと当時の私は、今の私とは価値観がかなり違くって、昔の自分の考え方はとても勿体無いなと思っている。なんというか、「見えている世界

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たぶん、わたしのはなし。 Vol.3 「社会人ってなんなのさ。就職活動と2つの会社で学んだこと〜就活編〜」

たぶん、わたしのはなし。 Vol.3 「社会人ってなんなのさ。就職活動と2つの会社で学んだこと〜就活編〜」

私は現在、派遣社員として働いている。仕事内容は、デザインやイラストなど、クリエイティブ系でもなんでもなく、事務職である。会社もデザイン系でもなんでもない。程遠い業界にいる。「お金を稼ぐ」ということだけを仕事の目的とするならば、事務職は私にとって天職で、正直かなり向いていると思う。派遣法で、「派遣社員は、原則同じ就労先で最長3年までしか働けない」と定められていて、私はあと3日でその満期を迎える。こう

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東京他人物語「Tについて」

働き疲れて起きれなかったある土曜日。私を起こさないように、静かにシャワーを浴びて、静かに家を出ていった。昼頃起きたら、「頑張ってるよ、偉いよ。たくさん寝て、気が向いたら絵も描いて。」とLINEが来ていた。洗濯籠を覗くと、うちで一番ボロボロのタオルが、ビシャビシャに横たわっている。真夜中にママチャリで2ケツしたら、パトカーに注意された。商店街で買ったパンを、バス停のベンチで食べたりした。そういう時、

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東京他人物語「あたしの日記」

そちらのほうが十分変なのに、「きみ、変だよ」と言われた。「現代(いま)の人だね」、「地元に友達いないでしょ」とも。「毎日日記を書いている」とその人は言い、今日は「私のことを日記に書く」らしい。「方言はあるの?」と聞かれて、うーんあまりないなと思いながら、まあ強いて言えばこういうのはある、と伝えたら、「へ〜いいね、今度言ってもらおう〜」とか言われた。汚い街の終電間際、そんなことを言われても。

たぶん、わたしのはなし。 Vol.2 「ど感情・ど情緒人間のウチ、からだでするコミュニケーションに思いを馳せてみる。とりわけハグについて」

たぶん、わたしのはなし。 Vol.2 「ど感情・ど情緒人間のウチ、からだでするコミュニケーションに思いを馳せてみる。とりわけハグについて」

少し前、とあることで落ち込んだ。「我慢すればよかったかもしれないけど、わたしはわたしだから、わたしには嘘つけないし。でも、言葉にしない、という選択肢もあったよな。はぁ、ほんと無理...。」みたいな状態に陥ったのである。でも結局、この件は嘘をつかずに、相手に伝えてよかったことだった(Vol.1 テレパシーで交信できないなら、face to faceでいくしかないのだ、を参照)。

そんな時、友人から

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2024/1/7 ねむりたりない

朝起きたら、と言っても9:30頃で、なんで目覚めたかというと、クロネコヤマトが呼び鈴を鳴らしたからだ。母親が丁寧にぎっしりと詰めた、「冷凍」と「常温」の荷物。まだねむりたりなくて、「冷凍」の方だけ段ボールから食品を取り出し、せっせと冷凍庫に詰めた。頼んでいなかったのに、私の好きな冷凍のチョコレートケーキが三切れ入ってた。実家に帰った時、私は面白半分で「私は長女なのに、一番意味がわからないことをして

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たぶん、わたしのはなし。 Vol.1 「テレパシーで交信できないなら、face to faceでいくしかないのだ」 

たぶん、わたしのはなし。 Vol.1 「テレパシーで交信できないなら、face to faceでいくしかないのだ」 

シャワーを浴び終わり、髪を乾かそうと思ったら、「あと2分50秒で2024年だよ!」とリビングから声がして、あわてて家族のもとに向かった。濡れた髪のまま、一応手拍子しながら、カウントダウンする。特におめでたい感じでもなく、なんとなく2024年が始まった。正直日付が変わるだけじゃんとも思う。

2023年の私は多分、今まで生きてきた中で一番忙しかったと思う。仕事して、生活して、学校行って、課題して、自

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東京他人物語「梅雨。ボーイについて」

「行き先を決めないで、テキトーにそこらへん、ドライブしよう」格別に、今日、ボーイの調子はいい。残り少ないセブンスターに火をつける。ヴィーン。窓を開ける。換気の意味がないくらい、車内は既に煙草臭い。カーブする時、ガタガタと不穏な音を立てる。決して居心地は良くない、オンボロ車。だけど隣に乗せてもらえることが、とても嬉しかった。

国道沿いのショッピングモールで、少しの買い物を済ませ、14時頃昼ご飯を食

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東京他人物語「最寄りのラーメン780円」

二人で一度だけ行った、最寄りのラーメン屋。特に思い入れもないはずだけど、しばらく店には入れなかった。地下鉄に乗っているとき、彼はいつも大きい声で喋る。私はいつも少し恥ずかしかったけど、年甲斐もない無邪気さに救われていたんだなと、今更気付く。もう遅い。あれから半年ほど経って、なんとなくラーメン屋に行った。前に注文したラーメンと、おなじものを頼んだ。こんな味だっけなとも思うけど、やっぱり美味しかった。

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東京他人物語「27クラブに入れずにあいつは今年三十になる」

トレインスポッティングに憧れて、わざとオールスターを汚して履いていた。女の人は多分いっぱいいるけれど、セブンスターからは浮気したことがないらしい。部屋が汚いのに、お気に入りのシャツはクリーニングに出している。私はそのシャツの色が世界で一番好き。「お前やっぱ変だな」と言われる話も、「そういう風に考えるのは偉いね」と聴いてくれた。小ぶりな耳が好き。休みには、7万のチャリを乗り回してるらしい。一向に既読

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東京他人物語 「私は東京にみずうみを持っている」

上京のタイミングは、就職だった。
地元の企業は一つも、受けなかった。
やっと、自分の人生を手に入れたと思った。

自分は、割り切って、何事も取り組める人間だと思っていた。
けれど、それは間違っていた。
あきらめていたことを、やろうと思った。
新卒で入った会社を一年で辞めた。
何かを自分からやめるのは、これが初めてだった。

ポジティブで、正当な理由なはずなのに、不安でどうしようもない夜があった。

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東京他人物語 「天使のねがお」

三週間に一度会えればいいほうで、たいてい場所は俺の家。部屋番号だって知っているはずなのに、駅に迎えに来て、と言う。彼女は多分、サークルの友達の、友達だったはず。まあ忘れたし、まあそんなことはどうでもいい。緑の板ガムが好きで、いつもふにゃふにゃ噛んでいたから、待ち合わせはミントの香りがした。506号室。6畳1K築5年の俺の部屋は、決して汚くは無いけれど、これといった特徴のない殺風景な部屋だった。彼女

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