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アートとラップ、アート・ラップの再検討(Earl Sweatshirtとbilly woodsを例に)
はじめに
私たちの生きる現代が獲得したものは、言うことの疚しさだった。
現代という「最新」の時代は、全ての時代にまして物質的な可能性が開かれるのと同時に、「最も経験した時代」として概念的な不可能性が現出する時代でもあった。
例えば思考と存在の統一の崩壊、動物倫理という破壊的な論理的正当性、自由意志が存在しないという事実の確認―そういった不可能さ、不条理が押し上げられ、現前されていくだけの時代。
Lil Uzi Vert「Eternal Atake」という特異点~2022年USヒップホップにおける場所と身体、モチーフ、幽霊について~
はじめに
ラップ・ミュージックにあったのは「わたし探し」という実存的な問いではなく、とりわけ強固なわたしを形作ることであった。しかし、ふとした瞬間に立ち現れる実存の叫び、その多くの場合に当てはまるニヒリズムは、現代のラップ・ミュージックまで引き継がれる本質的なものの一つとみなすことが出来るだろう。
またそうした方法は広く「エモラップ」によって大きく刷新されたが、それすら新たになりつつあると同時に
引き裂かれた破壊的リリシスト、JID(JID「The Forever Story」全曲解説)
はじめにJIDはラップスキルとソングライティングというシンプルで最も重大な二つの技術において、間違いなく最も優れたラッパーの一人だ。
1989年、7人兄弟の末っ子としてアトランタに生を受けたJIDは、両親のファンクやソウルのレコード(特にSly and the Family StoneとD'Angeloの名前を挙げている)で音楽に出会い、そこから同郷のOutkast、T.I.、Goodie Mo
青春と闘争、あるいはredveil(redveil「learn 2 swim」全曲解説)
はじめに今回redveilの新譜「learn 2 swim」について語る上で、まずは簡単にredveilの来歴と前作「Niagara」に触れながら、redveilの周辺を探っていこうと思う。
redveil(以下veil)は、アメリカ東海岸に位置し、ワシントンDCにほど近いメリーランド州プリンスジョージズ郡で生まれ育った。
プリンスジョージズ郡、いわゆるPG countyは、国内で最もアフリカ系
ダークでアイロニカルなリアリスト、Vince Staples(Vince Staples「RAMONA PARK BROKE MY HEART」全曲解説)
はじめにVince Staplesはそのデビューミックステープ「Shyne Coldchain Vol. 1」から今作「RAMONA PARK BROKE MY HEART」に至るまで、常にそのフッド、ロングビーチと共に在り続けた。
同時にStaplesは、"人に見られたり話しかけられたりするのは好きじゃない"と述べ、カメラに映ることもステージに上がることも、パーティーに参加することも脚光を浴びる
最悪な世界と解しがたい信仰について(Denzel Curry「Melt My Eyez See Your Future」全曲解説)
はじめにDenzel Curryはこのアルバムで、"今世界で起こっていること"、人生そのものを表現しようとした。
そのためこのアルバムは、基本的にある程度陰鬱に進行し、世界がどれほど最悪なのか、自身の精神状態がどれほど危ういのか、かつそこから逃れようとする信仰を知的でユーモラスに、そして多様に表現している。
まず、世界が穢れていることは個人の極性によらない事実である。それを感得しない人間は単に視
「Let It Be」「Runaway」「Alright」という内的闘争の帰結、"かるみ"について
はじめに今回は、The Beatles「Let It Be」、Kanye West「Runaway」、Kendrick Lamar「Alright」という3つの楽曲を中心に、ドストエフスキー 、ビリー・ジョエル、ブルーハーツ、夏目漱石、太宰治、ピカソ、スタンリー・キューブリック等にも通ずる"かるみ"について、芸術家が導き出す人生に対する解答がほとんどその一意に定まること、そしてそれが過度に感性的、
もっとみる神は過ちを犯さないのか(Conway the Machine「God Don't Make Mistakes」全曲解説)
はじめにまず、当アルバムのタイトル「God Don't Make Mistakes」について、少々脱線しながら話していきたい。
そのためには、2020年、自身のレベールDrumwork、Griseldaの両レベールからリリースされたソロデビューアルバム「From King To A GOD」に触れなければならない。
「From King To A GOD」(以下FKTAG)は、「God Don't
Hiphopと反ワクチン、黒人コミュニティと陰謀論の親和性
先日、Neil YoungがSpotifyにワクチンに関するデマの拡散(Joe Roganのポッドキャスト)を辞めさせるよう公開書簡を送り、さもなければ自分の楽曲の配信をやめると言った。
そしてSpotifyは「今までコロナ関連のポッドキャストエピソードを2万件以上削除してきた。」と十分にデマや誤情報に関する措置をとってきたという態度を示した上で、この要望を(敬意を持って…らしい)拒否し、Youn