「木そのものが、神様だから。」 そう言ったのは、ひとりの宮大工さんでした。 ただ、目の前の木と向き合って、どうかその個性を、生かしてあげられますようにと、手をか…
色とは、森羅万象そのものである。 萩焼を前にすると、いつもこのことばが思い浮かぶのです。ある特定の大地でもなく、空でもなく、もっと色々なかたちができあがる前、も…
朝は落花を踏み連れだって出かけ、 夕には飛鳥にしたがって共に家へかえる。 そんな家族と、友人と、大切な人と、いつか別れるときがきて、ひとりぼっちになったら、松虫…
今日、はらはらと舞い散る桜をみて、 「あぁ、空に知られぬ雪…」とこの歌を思いました。 花という、春に降る雪があり、 雪という、冬に舞う花がある。 花を見て、それは…
桜の木の下で、さめざめと泣いている人がいました。 不思議に思って訳をたずねてみると、「花が咲いたらまた少し別れが近づいてしまいます。どうして涙を流さずにいられま…
数年ぶりの寒波により、凍える日が続いておりますが、わが家の裏にたつ梅が、初めて年のうちに開花しました。 周りの木々は、まだ色づいた葉が落ちきらぬなか、紅白の梅が…
行き暮れて 木(こ)の下陰を 宿とせば 花や今宵の 主ならまし (意訳:行くうちに日が暮れて、この桜の木の下を宿とするならば、花が今夜の主となってくれるでしょう。) 平…
最も簡単なことは、最も難しい。 「南無阿弥陀仏と唱えるだけでよい」 一見とても簡単である。口に出して唱えるだけ? 昔教科書で、広く人々に馴染みやすく…、と読んだ…
白河上皇が熊野詣でに訪れた際、参道に咲く花をご覧になり、詠まれた歌。 先日はじめて紀の国、和歌山県を訪れました。 南紀白浜空港に降り立ち、私は思わず目一杯息を吸…
西行が桜を愛でながら口にした、小粋な呟き。 お能には、この続きがあります。 寝入った西行の夢に桜の精が登場し、 物言わぬ桜に罪はないと主張する物語。 そんなお能の…
春枕
2024年3月27日 01:39
「木そのものが、神様だから。」そう言ったのは、ひとりの宮大工さんでした。ただ、目の前の木と向き合って、どうかその個性を、生かしてあげられますようにと、手をかける姿は、祈りのように見えたのでした。木は生きているから。立ち木のときは生き抜くため、伐られてからはもう一度活かされて、生きようとする意思があるから。木に問いかければ答えてくれる、なんども問いかければ絆ができる。ただ一つの命の前
2024年3月18日 14:50
昨日うぐいすの声をきいた。今日はごうごうと嵐の音がする。春がきている嬉しさより、冬が遠のくさみしさの方が、すこし大きいけれど…おとで感じる季節のうつろい。この冬も、心に残るいろいろなことがあった。気をつけていってね。
2022年10月14日 01:37
色とは、森羅万象そのものである。萩焼を前にすると、いつもこのことばが思い浮かぶのです。ある特定の大地でもなく、空でもなく、もっと色々なかたちができあがる前、もしかしたら世界はこんな色だったのではないか、そう思わせてくれる色。造形すら色になる。色こそ、萩焼の魅力であると、わたしは思うのです。そんな萩焼の始祖であり、当代で十四世、四百年以上にわたり受け継がれている、坂高麗左衛門窯を訪問してきまし
2022年9月22日 01:05
朝は落花を踏み連れだって出かけ、夕には飛鳥にしたがって共に家へかえる。そんな家族と、友人と、大切な人と、いつか別れるときがきて、ひとりぼっちになったら、松虫の声をきいて、いつか待っていてくれた誰かを、誰かとすごした時間を、思いだせるかな。鳴き声がするほうに、あの人が待っているかもしれないから、行ってみよう。姿は見えなくても、待っているかもしれないから。長い間わすれて過ごしたとしても、
2022年9月20日 00:17
2022年3月29日 00:07
今日、はらはらと舞い散る桜をみて、「あぁ、空に知られぬ雪…」とこの歌を思いました。花という、春に降る雪があり、雪という、冬に舞う花がある。花を見て、それはただ花であるけれども、それはまた雪でもあり、そもそも花と雪の境目など曖昧なものだと思うのです。散る花びらを見て、花であり、また雪であると思うことで、花と雪をやわらかく糸でつないだ真ん中あたりへ…ふと意識が解放され、いずれの言葉
2022年2月11日 01:57
2022年1月17日 02:28
桜の木の下で、さめざめと泣いている人がいました。不思議に思って訳をたずねてみると、「花が咲いたらまた少し別れが近づいてしまいます。どうして涙を流さずにいられましょう…。」と言うのです。なるほど、もっともなことだと思い、「そのお話し詳しくお聞かせください。」と…。こんな光景が思い浮かびました。生きることは不条理であると思う。迎えた春はまもなく過ぎてしまい、いつとも知れぬ、わが身との別れ
2022年1月5日 14:08
2022年1月5日 14:06
2021年12月30日 00:27
数年ぶりの寒波により、凍える日が続いておりますが、わが家の裏にたつ梅が、初めて年のうちに開花しました。周りの木々は、まだ色づいた葉が落ちきらぬなか、紅白の梅がぽつらぽつらと咲く様子は、まるで季節が錯綜し、ゆらめいて、愛おしくも時があいまいになったような光景です。行ききらぬ秋、雪降らぬ冬、春の訪れと呼ぶにはまだ早く、時の流れがたわんだような梅の下で、花を見ながら心に浮かんだのは、年のうちに
2021年12月6日 00:31
行き暮れて 木(こ)の下陰を 宿とせば花や今宵の 主ならまし(意訳:行くうちに日が暮れて、この桜の木の下を宿とするならば、花が今夜の主となってくれるでしょう。)平忠度 平家物語国立能楽堂にて、塩津哲生さんがシテを演じられた「忠度」を観て参りました。最終場面では涙が止まらず、死生観をゆさぶられる体験となりました。人は死にたいして、恐怖や悲しみの更に奥深くには、本能的に土へ帰ってゆく
2021年8月3日 02:14
最も簡単なことは、最も難しい。「南無阿弥陀仏と唱えるだけでよい」一見とても簡単である。口に出して唱えるだけ?昔教科書で、広く人々に馴染みやすく…、と読んだなあと思いながら、先日ふとしたきっかけで、親鸞の本をぱらぱらと捲りながら、愕然としました。念仏を唱えるだけというのは、自らの運命を前にして、すべて身を任せて何もしないということではないでしょうか。宗派によらず、阿弥陀様ではなく、自然
2021年6月17日 01:47
白河上皇が熊野詣でに訪れた際、参道に咲く花をご覧になり、詠まれた歌。先日はじめて紀の国、和歌山県を訪れました。南紀白浜空港に降り立ち、私は思わず目一杯息を吸いながら、空を見上げました。白く柔らかな日差し、青い青い空。あぁ。ここには言葉にならない何かが宿っているのだなあと、込み上げる嬉しさと共に、確かに感じられたのでした。南国のそれとはどこか違う日差し。どんなに照りつけていても、あちら側
2021年6月12日 23:28
2021年5月27日 02:03
西行が桜を愛でながら口にした、小粋な呟き。お能には、この続きがあります。寝入った西行の夢に桜の精が登場し、物言わぬ桜に罪はないと主張する物語。そんなお能の演目 西行桜の桜の精を、今月、人間国宝能楽師、梅若実さんが演じられました。高齢により随分とお身体が弱られたご様子で、終始両手に持った杖でやっと身体を支えながらの、舞い、謡い。西行の夢が覚め、桜の精も消えるという最終場面。