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ぺんすけの読書記録

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たまに本以外のレビューも入ってきます。
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「ウィステリアと三人の女たち」(川上 未映子著)

「ウィステリアと三人の女たち」(川上 未映子著)

前の記事でも書いたのですが、ここのところプログラミングの勉強に取り組んでいるのと、Duolingo(英語)も始めたりして、読書の時間があまり取れていませんでした。でも連休のあいだに時間ができて一冊読めたので、一ヶ月ぶりに読書感想文を投稿してみようと思います。

これで川上未映子さんの本を読むのは4冊目になりますが、これまで読んできた本と同様、登場人物のほとんどが女性です。この短編集ではその傾向が特

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「愛の夢とか」(川上 未映子著)

「愛の夢とか」(川上 未映子著)

「夏物語」「すべて真夜中の恋人たち」に続いて、私にとって三冊目の川上未映子さんです。いつ読んでも、心の一番深いところまで沁みわたってくるような言葉。ずいぶん昔に、村上春樹と河合隼雄(この二人は私のなかでセットになっています)に傾倒していた頃の感覚を、ずいぶん久しぶりに思い出させてくれるような作家さんです。

私は、短編集よりも長編小説のほうが読みやすいと思っています。なぜかというと、短編でも良いス

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「ぎょらん」(町田 そのこ著)

「ぎょらん」(町田 そのこ著)

ようやく今月一冊目の読了です。ここのところ副業で会社を作ったりしていて、単純にあまり読書の時間が取れないのもあるんですが、数字をいじっていると違った頭の使いかたをしているのか、本を読むスピードがガタ落ちしてるんですよね。それでもというか、だからこそ、読書は貴重なリフレッシュの時間になっている気がします。

町田そのこさんの本は、年始に「52ヘルツのクジラたち」を読んで以来です。それを読んだときに映

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「東京都同情塔」(九段理江 著)

「東京都同情塔」(九段理江 著)

ようやくサンデル教授の哲学書も読み終わったので、小説の読書を再開です。あぁなんて小説は読みやすいのだろう・・・笑 芥川賞のレビューを読んですぐに書店から買ってきて、ずっと見えるところに置いてあるくらいには楽しみにしていました。

ただこの装丁、書店に積まれたたくさんの本の中にあるとちょっと見つけづらいんですよね。「東京都同情塔」という字が見えにくいフォントで書かれているせいなのか、水色という色が他

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「これからの「正義」の話をしよう」(マイケル・サンデル 著)

「これからの「正義」の話をしよう」(マイケル・サンデル 著)

前の投稿から1ヶ月近くあいてしまいました。仕事のほうが忙しかったのもあるのですが、実はこの本がなかなか読み進められなかったというのもあります。物語に入り込んでしまえば知らぬ間にページをめくっている小説と違って、哲学書というのは読み進めるのになかなか体力が要りますね。

多くの人と同じように、私がはじめてサンデル教授のことを知ったのは、2010年春にNHKで放映された「ハーバード白熱教室」がきっかけ

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「さようなら、私」(小川糸 著)

「さようなら、私」(小川糸 著)

最近、小さな付箋がたくさん入っているしおりを使うようになりました。これが思った以上に良い。もともと記憶力があまり良いほうではないので、読んだそばから忘れていってしまうんです・・・。下手をすると同じ本なのに、終盤を読んでいる頃にははじめの方の話を忘れてしまっていたりする笑 同じ本を再読することはあまりないんですけど、それでも自分が心を動かされたところが後から振り返られる状態になっている、というのは安

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「すべて真夜中の恋人たち」(川上未映子 著)

「すべて真夜中の恋人たち」(川上未映子 著)

「夏物語」を読んでから、私のなかでちょっとした川上未映子ブームが起きています。もともとそんなに本を読むほうでもないので、今まで同じ人の作品を立て続けに読んだことがあるのは村上春樹と河合隼雄くらいなのですが、川上未映子さんもその一角に入ってくるかもしれないと思っています。

一回目に読み終わって、これはもう一回読まないといけない気がしました。恋愛小説のようでいて、通奏低音のように別のテーマが進行して

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「52ヘルツのクジラたち」(町田そのこ 著)

「52ヘルツのクジラたち」(町田そのこ 著)

以前から気になっていた本なのですが、文庫本になっているのを見つけたので購入してみました。裏表紙のあらすじには

とあり、孤独な二人が出会って穏やかに愛を温め合うようなストーリーを想像して読み始めました。出だしこそ同世代との出会いがあったりして明るい展開の予感がするのですが、読み進めるごとにその期待は見事に裏切られます。「生きるぼくら」(原田マハ)序盤にあったいじめの描写もきつかったですが、この本で

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「針と糸」(小川糸 著)

「針と糸」(小川糸 著)

この前の「夏物語」でエネルギーを使い果たしてしまったので笑、ちょっとエッセイでも読んでみようかなと思いました。小説を読むのって重要な伏線を読み落とさないようにしないといけないし、話がつながっているのでまあまあ脳内のメモリを消費する知的作業なんですよね。まあそれが楽しいんですけど。それに比べてエッセイは読み終わった部分は忘れてしまっても大丈夫っていう安心感がある。体感的に小説の3分の1くらいのエネル

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「ファミレスを享受せよ」にずっと居たい

「ファミレスを享受せよ」にずっと居たい

ここのところずっと、自分に合ったゲームがないなあと思っていました。最近はスプラ3をやることが多いのですが、まあまあ疲れるし1時間もやるとコンタクトがカピカピになってしまいます。歳のせいもあるんだろうなとか思いつつ、なんかもっと自然に入り込めるようなゲームってないのかなあと。

そんな時に偶然見つけたのが、「ファミレスを享受せよ」という1,500円のゲームです。

説明を読んでも、どんなゲームなのか

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「夏物語」(川上未映子 著)

まず不思議な装丁です。一見して女性の身体であることは分かるんだけど、どの部分なのか判然としない、ふくらみもない。最小限の線で描かれた、それ以外の要素を持たない存在としての女性。

この小説に出てくる女性はみなそれぞれに魅力的です。第一部で哀れな姿をさらしつづける巻子が、最後にとうとう言葉を発した緑子に語りかける場面。

これを読んで、なぜか私は巻子の「生きものとしての力」を感じずにはいられなかった

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「正欲」(朝井リョウ 著)

「正欲」(朝井リョウ 著)

「自分が想像できる "多様性" だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」ーーー。以前から本屋で目にして読みたいと思っていた本です。今週末に映画が公開されるということで、その前に読んでおくことにしました。

まずこの小説はいろんな警句にあふれていて、読んでいて油断することができません。登場人物たちが抱えている泥のようなものはあまりにも暗く、読者が安易に共感することをはっきりと拒否し

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「やめるときも、すこやかなるときも」(窪美澄 著)

「やめるときも、すこやかなるときも」(窪美澄 著)

在宅ワークがメインになって通勤の頻度が減ったのはありがたいことなんですが、本を読む時間が確保できないのが悩みの種です。この本も、1ヶ月くらいかけてようやく読み終えました。

このレビューを書く段階になって、この小説がドラマ化されていたことを知りました。ていうか小説自体は2017年の作品なんですね。6年ものあいだ全くこの作品を知らずにいて、何かの拍子に出会えるというのも、文庫本の醍醐味かなあと思いま

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この夏にみた映画の話 (2)

この夏にみた映画の話 (2)

(1本目:君たちはどう生きるか からの続き)

2本目はこちら。

RRR

いやこれ去年の映画でしょって言われそうですが、細々とまだ映画館での上映も続いてるんです。夏の終わり頃に、ちょっと場末感のある映画館に行って観てきました。

インド映画って ムトゥ 踊るマハラジャ(1998年 日本公開) の頃から気になってたんですけどなかなか観る機会がなく、私にとっては初体験のインド映画となりました。

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