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#202 「成功体験」のダークサイドを知らずにマネジメントすると失敗する

「成功体験」と聞いてどんなイメージが浮かぶでしょうか?
そのイメージはポジティブでしょうか?ネガティブでしょうか?…
もちろんどちらもあるのですが、マネジメントの観点からメモ。


1、「成功体験」は腐る?

☑️「成功体験」で、できなかったことを乗り越えられて自信が持てた。
☑️「成功体験」に囚われて状況の変化に対応できない。

どちらも違和感なく読めるのではないでしょうか?

つまり、「成功体験」には両面性があると言えます。

同じことなのに、なぜ両面性があるのでしょう?

先ほどの文章に主語を補ってみましょう。

☑️ 新人が「成功体験」で、できなかったことを乗り越えられて自信が持てた。
☑️ 上司が「成功体験」に囚われて状況の変化に対応できない。

いかがでしょう?

新人と上司、何が違うかと言えば、業務を経験している期間です。

つまり、「成功体験」は、時間が経つと腐ってしまうようです…


2、なぜ「成功体験」は時間が経つと腐る?

腐ると決めつけてしまっていますが、いくつか例を挙げてみます。

ブロックバスター(DVDレンタル業)
ブロックバスターは2002年時点で売上高は55億ドル、顧客数4,000万人、店舗は6,000店だった。2003年時点で市場シェアは45%と競合企業の3倍近かった。2004年においても売上高はまだ6%伸びており、重役たちは「ブロックバスターでの店舗体験」について鼻高々に語った。
ところがそのわずか4年後の2010年9月23日に同社は破産申請している。
(「両利きの経営」より)
シアーズ・ローバック(アメリカの小売業)
シアーズは1970年に売上高が約300億ドル、従業員は40万人以上と小売業で絶大な力を誇っていた。米国最大手というだけでなく、当時2位のJCペニーの4倍の規模である。全米世帯の過半数が同社のクレジットカードを持ち、米国人の3人に2人が3ヶ月に1度はシアーズの店で買い物をするような状況だ。
それが2000年のランキングでは、シアーズはかろうじて13位に名前があるが、順位は下がるばかり。
(「両利きの経営」より)
第二次世界大戦
零戦はパイロットの練度の高さ(操縦技能、射撃精度等)を極限まで高め、フィリピンの米軍を攻撃する比島航空撃滅戦や、マレー・シンガポール航空戦で活躍し、大戦初期には優秀機の名声を博します。
これに対し、米軍は、新型機のF6Fで空戦性能を諦めて、スピードと防弾性、重武装を重視し、「相手の戦闘機に直撃しなくても近くをかすめるだけで爆発する」、VT信管を開発、「命中精度を極限まで追求しなくても勝ててしまう」戦略をとったことで劣勢に立たされます。
(「失敗の本質」より)

企業の例に加えて、戦争まで持ち出してしまいましたが、いずれも、かなりの「成功体験」揃いです。
それが、数年のうちに破綻の道へ…

いずれも、「成功体験」に囚われ状況の変化に対応できなかった、いわゆる「サクセストラップ」が大きな原因の一つと分析されています。

つまり、「成功体験」が時間が経つと腐ってしまうのは、「サクセストラップ」によるものと言えます。


3、「サクセストラップ」とは?

では、「サクセストラップ」とはどんなものなのか?
「両利きの経営」では以下のように説明されています。

公式なコントロールシステムの調整(構造や指標など組織的ハードウェア)と、社会的なコントロールシステム(規範、価値観、行動など組織的ソフトウェア)は、戦略をうまく実践する上で極めて重要だ。しかし、そのせいで組織的な惰性も醸成され、明らかに脅威に直面しているのに変革が難しくなってしまう。

こうした「サクセストラップ」に陥らないために、企業経営はどうすべきか、というのを豊富な実例とともに説明がされているのが「両利きの経営」なのですが、我々個人レベル、特に管理職と言われる人は、この「サクセストラップ」はありえるのではないでしょうか?

「こうすればうまくいく」、というのは、経験で蓄積される部分が多いでしょう。

問題は、「こうすれば」が単なる「体験の再現」に留まる場合です。

上司が「俺が新規開拓していた頃は1日50件は回ったぞ!」

というような場合がまさにこの「体験の再現」に留まる場合です。

「DVDレンタルは、実店舗がいいんだ。郵送でDVDレンタルなんてニッチだ。ネットでDVDレンタルなんてさらにニッチだ。」
「シアーズは競争に備えたりしない。ナンバーワンはシアーズ。ナンバー2も、ナンバー3も、ナンバー4もシアーズだ。自社の売り上げを4等分しても 2番手の競合よりまだ大きいのだから。」
「兵の練度の極限までの追求が、精神主義と混在することで、のちの日本軍の軍事技術・戦略の軽視にもつながった。」

このように、「成功体験」は、その体験の繰り返し、拡大再生産には強みを発揮しますが、周りの環境があまり変化しないことが前提です。

しかも、「成功体験」の中にいる限り、周りの環境の変化を軽視する傾向が強く出ます。

こうした、「成功体験」のダークサイドを把握しないまま、管理職としてマネジメントすることは、大変なマイナスです。

厄介なのは、「成功体験」は、実例からも分かる通り、その中にいるときには気づかないという特性があることです。

まさに「トラップ」と言えるのではないでしょうか。


4、まとめ

自戒を込めたメモでしたがいかがでしたでしょうか?

昨年からの感染症、あえてメリットを探すとすると、通常であれば、数年かけて起こる変化が短期間に起こった(起こっている)ということです。

もちろん、急激な変化は大変ですが、逆に、過去の「成功体験」など何の役にも立たないと皆が共通認識を持てるという点ではメリットです。

部下が上司に「そんな状況ではないですよね」と言ってもおかしくはない、ということです。

もちろん、上司自身がそう思うべきですが。

「成功体験」のダークサイドを認識して、チームメンバーには「成功体験」の光の部分を経験してもらえるよう、心がけていきたいと思います。



最後までお読みいただきありがとうございました。

何か参考になるところがあれば嬉しいです。


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