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転職体験記 シリコンバレーのベンチャー企業に その12 帯同家族の出迎え 当たり前過ぎて意識しなくなっていること

 時は昭和のバブル時代真っ只中。

 車を買い、アパートも用意して家族を待つだけになった私生活。ベンチャー企業での仕事も立ち上がり現地の運転免許証も取得。仕上げは帯同家族の出迎えです。

 渡米が決まる直前の真冬に実父が倒れ、1ヶ月弱の闘病で他界するという中、抜擢人事で内定者の先輩と入れ替わる形で急遽渡米が確定しました。日本海側の秘密工場から一旦本社付になり都区内の自宅に転居。その引越では米国向けの身の回り品と長期保管場所としての低温倉庫向けに引越荷物は振り分け済みでした。 
 実父の突然の他界は想定外。そもそも長男なのに家督を弟に譲っていたのて墓の購入からのスタート。数カ所の候補から選定し、凝ったデザイン性の高い広々した墓を用意して、その施工中、勿論納骨前に私は慌ただしく渡米しました。

 その後家族は自宅で1ヶ月間過ごし、ゴールデンウイーク前半で渡米ということになったのでした。JALさんのビジネスクラスでの呼び寄せファミリーパックを人事部が手配してくれていたのですが、キャビンアテンダントさんの手際が悪く、思いの外吾妹には不評でした。そんな事もありサンフランシスコ国際空港到着時には少し疲れ気味でした。
 その上私がリンカーンタウンカーで出迎えたものですから、目立ち過ぎと呆れられてしまいました。

空港で出迎え呆れられたリンカーンタウンカー

 とは言え、取り敢えず気を取り直して貰い、自宅アパートで軽く仮眠して…市内ドライブということに。
 先ずは移動手段確保ということで、車屋さん巡りをしました。
 吾妹が本当に乗りたい車はポルシェなのですが、当然渡米直後なので自動車保険の引受ができなく断念。
 結構四輪駆動の車等にも興味が有るのでSAMURAIと(サムライ)いう名前で評判の高かったジムニーを見に行きました。ふ~んという反応。その後も道すがら自動車販売店に有る在庫車を眺めつつのドライブ。
 CORVETTE、Mustang、Camaroと何れも自動車保険の問題で選択肢落ち… それでもスポーティな車をご所望ということで、自宅裏の多分シリコンバレーでも最大級のフォードの販売店に行きました。
 サングラスの似合うカッコいい私より少し若め、20代後半の方が対応して下さいました。
 MAZDAのJUNOS(ユーノス)は日本では190として、2000cc弱のエンジンを載せて販売されて居ました。これをアメリカではFordのブランドの240として2400ccの大きなエンジンを搭載した形で販売されて居ました。これはスポーツカーの中に入らないので保険は大丈夫とのこと。しかしこれもまたふ~んという反応。

 そこで、やおらそのカッコいいお兄さんがだったらと、多分そのFordのお店では最も高価な部類の展示車を吾妹に見せました。
 私も国内で一度だけ運転した事のあるサンダーバード。元々はセダン風の高級車だけど2ドアという特殊なカテゴリーの車でした。日本でもクラウンの2ドアハードトップがそのカテゴリーとして中古車市場には残って居ました。まぁ絶滅危惧種。
 米国でもサンダーバードという名前ではありますが、見た目はスポーツカー。しかもスーパークーペという特殊なグレード。5速のマニュアル車。早速試乗するという吾妹は、まぁこれなら良いかと。
 私も試乗したのですが、何とも素晴らしい加速感。メーターを眺めると何やら小さなメーターが有り、加速時にはタコメーターとは異なる、最もレスポンスの高い反応をしていました。ターボメーターですかと訊ねると、何と…
 スーパーチャージャー付きの3800ccのエンジンを搭載した5速のマニュアル車なのでした。

 流石セールス。ピタリと吾妹の要求に合った車を用意したのでした。
 それでも電動サンルーフが欲しいと吾妹。勿論販売店オプションで1週間程度の作業で取付可能とのこと。ということでその場で成約。リンカーンタウンカーで契約の手順は手慣れて居ましたので今回は30分程度で全て完了。
 しかも今はアメ車が売れず夏休みに向けての大キャペーン中。販売店ではなくFord本体の2年間リースのキャンペーンがフリーメンテナンスオプション等も着いてくるとの説明。リースが終わってから買い取った方が絶対に得という話。
 それでいきましょうということで、何と渡米直後に吾妹はスポーティな高級車を成約したのでした。

 自宅から徒歩で行ける便利さも有り、吾妹に取っては米国生活のGoodSTARTということになりました。
 JALさんの不手際もこれで帳消しという感じでした。

つづく

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経緯

 シリコンバレーにある高速半導体メモリを開発·製造している会社に転職となったのです。
 形式的には鉄鋼会社の米国駐在員で、鉄鋼会社の社員としての給与を貰い、その米国ベンチャーの社員としても給与を貰い、日米の年金保険料はダブルで払い、税金は日米の給与と駐在員手当(住居費、自動車購入費、交通費など)も含めた全収入に対して米国の税金を支払うという形でした。 渡米に際しては先ずは米国大使館でのビザの取得。形式的に半導体技術開発のエンジニアという建付けでの渡米でしたので、取得したビザは、H-1B。ビザ取得に際しての大使館での面接、その後の手続きとそれなりに面倒でした。


 その2は渡航前の明るく楽しいひと時の話。

 その3は、予防接種の重要性と就労ビザのご利益の話でした。

 その4からは現地での流れ。

 レンタカー、ホテル、外食で仮に生活を立ち上げ、仕事が可能な体制に。そして銀行口座開設、年金、健康保険の手続きをして入社した会社の社員としての基礎的な手続きを完結させました。

 その5は仮生活からの脱却です。
 今ならスマートフォン手配は必須ですが、当時は携帯電話すら無く会社支給のポケットベルという時代でした。

 ということで、先ずは空港で借りたレンタカーは高いので、急いで自動車を購入ということに…。レクサスLS400は狭くて保留。
 戯れにシボレーカマロを見に行ってプレミアがついていたのに驚くといった感じ…

 その6もその続き。

アメリカでは車は極めて重要なアイテム

 折角アメリカに駐在するのだからアメリカ人に成り切って楽しもうと私自身車好きだしね。日曜日昼下がり道に迷い、Lincoln Mercury販売店に入って道を尋ねがてら車も…

 米国での自動車購入の実況中継です。

メキシコ系販売員の丁寧な対応で、不人気なアメ車のフルサイズセダンの最高級グレードの車、リンカーンタウンカーを選びレクサスとは別格とその場で契約を決めました。
 アメリカ専用に作られ、熟成し続けられただけ有って、この国には最適解ということで…。

 その7もその続編、契約手続きの実況中継です。
日本では味わえないレアな体験なので…

 渡米して間もないので自動車保険は基本的にコンサバな車しか掛けられません。勿論リンカーンタウンカーなら文句なし。
 ということで販売店で契約書3セットを読み合わせ。各項目ごとに読み上げて私が理解したらイニシャルを書いて各詳細項目までも説明済みということを記録に残し、1セットが終わると同じ契約書3枚にそれぞれイニシャルではなくフルのサインをすると言う作業。その後詳細な車の操作方法の説明と同様の確認作業。流石リンカーン。
·トランクからの緊急脱出装置
 (トランクの中に閉じ込められても内側から自力で脱出可能)
なんて装備まで…。アメリカの高級車らしい。
 ナンバープレートが出来上がるまで仮ライセンスの紙をフロントガラスに貼ってその場で乗って帰れるのがアメリカ流。合理的なんです。
 これで自分自身用の車の件はおしまいなんですが、ちと奮発した感じ。でも、予定通り35年後の今でも使っているので良いか… 

 仮生活からの脱却のお次は…
その8は、住む場所の話。ホテルからアパートへ。

 私は初めての駐在なので大人しく人事が用意したアパートから部屋を選ぶと言うスタンダードな流れを選びました。しかし、駐在慣れした方や気の利いた方は、駐在員手当を活用して不動産を買って、帰国時に売却して売却益を得たり、そのまま賃貸に出す何て兵(つわもの)も…

 人事が用意したアパートはこんな感じ…


 アパートの管理棟が敷地のど真ん中に有り、塔の下は大きなホールになっています。ラウンジの様な感じ。居住者の親交を目的に月一回週末ブランチが振る舞われると言うまぁアメリカらしいオ・モ・テ・ナ・シ。
 建物の左がオフィス。右はジムでセキュリティの問題で夜中は閉まります。建物の前にプールが有り、塔の真ん前がジャグジー。夜間はプールの中の水中照明が点灯してとても美しい…

 中庭もいくつか用意されていて、噴水も有りとても落ち着いた雰囲気…

 敷地内の散歩が楽しくなるような小径の景色…

 で、私は…

 部屋は異型の広いリビングと子どもと私達用の2ベットルームを選びました。兎も角アメリカらしい、ならでは感の有る間取りにしました。表紙の間取り。

 もちろんお風呂はバスタブとシャワーが一緒になっていて、石けんのお風呂に入って、シャワーで仕上げるタイプ。それを各人が楽しむという何ともアメリカンなタイプ。
 
 パティオも広いし、1700ドル程度と割高だったけど選んでしまいました。

 その10は、住む場所の話の続編。

 住居は大事なので少しだけ家族も揃って住み出した後の話も雑然とした感じでご紹介しました。

 デッキでのバーベキュー。
 バーベキューが下手で上の階のイラン系の方がベランダから赤外線で焼けばきれいに中まで火が通るとのアドバイス。生まれて初めての中東の方との会話でした。

 小鳥の餌箱をパティオの一番奥の門の前の樹に…。
 リス(chipmunk)もそのへんを彷徨(うろつ)いていました。

 建物の半地下が全て駐車場と倉庫。正倉院のように高床式になっているので風通しが良くとても過ごしやすいアパートでした。何と冷房は無く、ヒータのみ。真夏も涼しく高原の様な気候でした。

 ご近所さんからFurnished(家具付き)は割高と言われ、契約を変更。家賃を約半額強の月額990ドルに。

 郊外のハイウェイはガラガラヘビに遭遇。


 部屋のカーペットは、床から突き出している鋭利な釘で留めてあるので裸足は避けた方が無難でした。

 自然豊かなので蟻が出ます。

 アパートメンテナンスの屋根洗浄でパティオが水浸しに。基本的にアメリカのアパートでは天日干しするというのは想定外。洗濯機室で乾燥までしちゃいます。

 機械物が故障するのは想定内。洗濯機や乾燥機、プールの浄水装置や夜間照明のライト等も。もまぁそんなもんですという感じで皆さん大人の対応でした。

 また、ゴミは少し離れた場所にある普通自動車がすっぽり入る位大きな大型トラックの荷台の様な金属製の箱に分別せすいれる感じ。分別なんかしない。

 とまぁこんな感じの日常がシリコンバレーのアパートには有りました。

 その10はオフィスの雰囲気を。
 シリコンバレーのベンチャーでの仕事は、呆気ない程簡単に立ち上がりました。唯一ドキュメント管理にトリックが有って、行間のノウハウを言葉に起こす作業に少し時間が必要でしたが。エンジニア同士の人間関係構築も手慣れてましたので特に問題有りませんでした。まぁ、私達は彼らの仕事を増やす事は有っても減らす事は無いので。寧ろ株式公開が早まり彼らの人生の上がりが早まる…

 残すは国際免許証から現地の運転免許証への切替。
簡単な筆記試験と実地試験のみでの取得。各州毎のローカルルール等も有りましたが、事前に情報を小まめに集めて対策すれば特に問題は有りませんでした。
 寧ろ、生活には運転は必須なので例えば飲酒運転のエピソード等運転に関する話題は尽きませんでした。

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つづく






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