マガジンのカバー画像

歴史の望遠鏡

26
この世の理不尽や不合理を疑問に思うこと。実は多くの場合、そこには人間の歴史がある。そこに生きた人々の怨念と情愛がある。
運営しているクリエイター

記事一覧

銃と宗教とお茶

銃と宗教とお茶

前回の「国家」でややこめんどくさいことを言いまして、やっとモンゴル帝国がなんでこの世から消えちゃったかいう準備が整いました。

近年、社会主義の崩壊とともにモンゴルも近代化が進んでいるようですが、ちょっと前までは、街は汚物が散乱し、マンホールに孤児があふれかえる、なんかもう世界に冠たる乞食帝国だったのです。

この状況は、モンゴル帝国の終焉と歴史的につながっています。

彼らから最強の騎馬民族の地

もっとみる
国家

国家

現在、世界最強の国はどこかといえば、そりゃもうアメリカです。
第2次世界大戦前からそうだった。その前はイギリス・大英帝国でしょうか、スペインという時もあったのでしょう。

文明が発達した国が武力も優れているというのは現代においては当然の常識ですが、これは実は人類の長い歴史の中でも珍しい時代だと言えます。

近世以前はそれこそ、野蛮人のほうが強かった。
フン族やら、バイキング、ゲルマン、東の方には倭

もっとみる
清和源氏

清和源氏

※こちらの記事は下記の続きです。よろしければ先にお読みください。

実は義経=チンギス・ハーン説には続きがあって、清王朝の皇帝は源氏の子孫だというものです。
清の祖はアイシンギョロ・ヌルハチ。。これ何ですか?ってくらいへんな名前ですが、字は愛新覚羅努児哈赤、名字は【あいしんかくら】のほうが通りがいいでしょうか、ラストエンペラー溥儀の祖先。要は北方の異民族ですね。

その興りは16世紀。豊臣秀吉の

もっとみる
殺戮創造性

殺戮創造性

第二次世界大戦の史観みたいなことにこれから入るのかと思いきや、なんとなくドイツの兵器はおもしろいのが多いのでそれを書きたくなりました。

やっぱり、スタンダードな武器を大量に作るアメリカに対抗するため質に走ったのか、はたまた超絶の人殺しクリエイティブ能力がゲルマン民族には備わっているのか、ドイツの武器というのはすごい、ちょっと創造性がハンパではないわけです。

私が好きなのは、移動地雷ゴリアテ。神

もっとみる
バズーカだけじゃなく

バズーカだけじゃなく

バズーカ砲という兵器があり、
これは第2次世界大戦中アメリカとドイツでほぼ同時に実用化されました。特徴は普通の弾丸とちがって当たった瞬間に中から高熱ガスが飛び出し、それが相手の装甲を貫くのです。また発射時の反動がないこと(ロケットみたいなもんで)で無反動砲とも言われます。あれは後ろに立ってるとまずいんですね。炎というか爆風をもろにかぶります。
大きい破壊力だけど無反動ということで手持ちOK。小さく

もっとみる
たてものウォッチャー(2)

たてものウォッチャー(2)

史上最大の木造建築物。
他ならぬ、出雲大社でして以前は高さが16丈といいますから、48m以上あったらしい。今でも十分どデカい(冒頭写真参照)ですが、その倍以上はあったそうです。

平安中期に当時の貴族の子弟たちの教科書として出された『口遊【くちずさみ】』という書物の中に「雲太【うんた】、和二【わに】、京三【きょうさん】」という記述があります。建物の大きさに言及しているといわれてます。一番大きい雲太

もっとみる
たった一人で扉を開ける(2)

たった一人で扉を開ける(2)

「人類は未来にタイムトラベルを実現させるのではないか。」歴史の中には、そう思わずにはいられないほどの異常人が何人か登場します。ロシアのピョートル大帝、清の康熙帝、アイユーブ朝のサラディンなど、驚異のマルチタレントで時代を一気に進める様は未来を知っているもののようです。
日本史においてはひとり、織田信長で、その意識を伺うにあまりに現代人に近い。
桶狭間の戦いや長篠の戦いが有名ですが、戦国武将などは彼

もっとみる
たてものウォッチャー(1)

たてものウォッチャー(1)

「何フェチですか?」
と聞かれ、建物フェチです。と答えた私。
そんなのあるのかどうなのか。。
ともあれ世の中で建物ほど鑑賞に値するものはそうない。
大きさ・カタチ・色・素材、、、。
設計という始点と終点のないストーリーにくらくら酔うわけです。
そういう見方で建物を観る人が私だけでないことは、昔の建築家の多くが芸術家を兼任することでもわかるとおり、これは感動商売の部類です。

見事な曲線を描く熊本城

もっとみる
たった一人で扉を開ける(1)

たった一人で扉を開ける(1)

日本でいつからちゃんとお金が使われだしたか。考えてみますと多分、室町時代じゃないですかね。
「明銭」というのがありましたよね。
清盛の時代は宋銭でも貿易商人や一部の貴族に「お金」は浸透していたのですが、商品経済が発達してきて、民衆レベルで商品取引の対価が必要になってきた。明のお金でもなんでも必要に迫られて、使っちゃえという感じだと思います。実はそれより700年も前に日本では「和同開珎」というお金が

もっとみる
コミュニケーター

コミュニケーター

今でこそ、マスコミなんていうとえらい感じで、カタカナ商売の最右翼なわけですが、そんなの最近で、広告代理店なんか戦前はヤクザに等しいというか、とにかく全うな商売ではなかったわけです。
これが、もっと昔になるとベースになる状況が著しく違う。
まずマスコミがない。
「日本書記」なんていうのは元は一冊ですよ。出版とは違って一冊づつ写していくしかないから誰でも読めるものではない。詔勅(天皇の公式発表)を出す

もっとみる
宗教改革(2)

宗教改革(2)

そして前述の信長。この人は宗教権力をまるで信じてなかった。当時としては非常に珍しいタイプの人で、それゆえ扱いも他の敵と一緒、いや兵卒にいたるまで信仰をもっている分さらに苛烈な攻撃を行い、比叡山延暦寺で3千人、伊勢長島、加賀、石山本願寺などでさらなる大量殺戮を行います。

おかげで清盛、信長とも「仏敵」と言われ、いらない敵を作り、いい死に方をしてないですから「仏罰」が下ったなどと世間から評されたりし

もっとみる
宗教改革(1)

宗教改革(1)

比叡山延暦寺にバイクでいったことがあります。とにかく山全体が寺なわけで、その中心といわれる根本中堂にいたる道もなにやらハイキングコース風で、道の脇に延暦寺の祖、最澄の絵物語みたいなのが描かれています。そして、人々はそれを見ながら寺々を巡るという、とってもディスニーランドに近い無駄のない楽しみ方ができるわけです。
(とはいえ、その絵は相当に懐かしいタッチで描かれてますが、、。)
根本中堂に入ると目に

もっとみる
いい加減と適当(2)

いい加減と適当(2)

日本文化の根幹「いい加減」と「適当」は政治・行政の舞台でも遺憾なく発揮されます。
大宝律令(701年・飛鳥時代)をはじめとするいわゆる律令は中国から輸入されたもので、またもや日本人にとっては借り物なわけです。なんとなく「孫にも衣装」な感じの心地悪さがあったんじゃないでしょうか。

これ、何の話かといいますと、いわゆる武士がどういう理由で生まれ、どうやって貴族から政権をとったかという話です。
戻りま

もっとみる
いい加減と適当(1)

いい加減と適当(1)

日本人は細やかなくせして、契約とかレギュレーションみたいなものにいい加減だと言われますね。商売しようとする相手を性悪説でみることに慣れてないのかどうなのかわかりませんが、そういう様々な要因ありつつ、日本文化の根幹には明らかに「いい加減」と「適当」から生まれたと思えるふしのものがいくつかあります。
クリスマスと正月両方祝うなんてのはまさにそうですし、神社と寺の集合体みたいなのが多いのも本来考えられな

もっとみる