水沢

本と映画と音楽がすきな平成生まれの私のささいでとりとめのない愛しい日常。東京で先生やっ…

水沢

本と映画と音楽がすきな平成生まれの私のささいでとりとめのない愛しい日常。東京で先生やってます。不定期更新

記事一覧

しあわせのうつくしき日

4月某日 GWに入り世間が浮き立つ中、私も例に漏れず久しぶりの休暇にほっと肩の荷を下ろした頃。 戦友とも言うべき、会社の同僚が会社の先輩と結婚式を挙げた。 夫婦とはも…

水沢
10日前
2

あたらしいからだ

新年あけましてなんとか、というには少し遅すぎるこのタイミング。 怒涛のような2022年だった。久しぶりにnoteを開いて出来事を記すにはあまりにも周りの変化が大きすぎた…

水沢
1年前
3

わたしが帰る場所

「いつしか高知に戻ったとき、東京に帰らなきゃと思うのかな」 恐らくそんな風に考えたのが、今から約1年とちょっと前だったように思う。そして私はいま、アンパンマンの…

水沢
3年前
8

今日はきのうの続きだけれど

突然ですが、 私はとてもみつはしちかこさんの「今日はきのうの続きだけれど」という詩が好きだ。特にこの詩を、今日のように冷えた冬の朝は繰り返し頭の中で反芻するくら…

水沢
3年前
4

嗚呼、懐かしきわたしの

ふとした瞬間に昔のことを思い出す。 それは匂いだとか、音だとか、あるいは昔食べたお菓子の味だたか、それは否応なしに私の記憶を揺さぶるのだ。 気がつけば仕事を始め…

水沢
3年前
10

ただしい生活

朝、カーテンの隙間から漏れる光で薄目を開ける。否応なしに新しい日の始まりを教えてくる光を無視するように、私は布団をかぶり、ベッドに転がるぬいぐるみを抱きしめる。…

水沢
3年前
10

映画を愛する私たちへ

ゴールデンウィークも残りあと2日ほど。来る仕事がやや憂鬱になりながらも、購入したての新しいテレビで映画を貪る日々を過ごしている。 冷えたビールと軽いおつまみ。半…

水沢
4年前
14

食べて生きて呼吸する

東京に来てから1ヶ月が経った。 修論が終わってからというもの、コロナで不安な日々を過ごしながらなんとか引越しを終えて、母たちとの別れもそこそこにあっという間に一…

水沢
4年前
11

私の街、私の暮らし

4月から新社会人になると同時に、初の一人暮らし、そして上京。 先日無事修論を出し終え、休む間もなく家族を連れて東京へ家探しに向かった(実際回ったのは母と2人だけど…

水沢
4年前
12

クリスマス後記

令和最初のクリスマスが過ぎた。23日が祝日じゃなくなって、平成生まれの私はとても変な感じがした。 クリスマス。予定だったらバイトに明け暮れるつもりだったのに、先週…

水沢
4年前
9

おでんとたこ焼き

近頃随分と冷え込んできた。ひどい冷え性の私は毎晩、両手両足を布団の中で擦り合わせては震えて眠る。花粉は辛いけれど、既に暖かい春が恋しくて仕方ない。つくづく冬に生…

水沢
4年前
6

愛の重さについて

今年最後の3連休が終わった。 修士論文の中間発表会とゼミ発表とバイトを終えた私はくたくたで、日曜日は一日中布団の中で眠りこけてしまった。せっかく会員になっている…

水沢
4年前
8

きっと秋のせい

毎年この時期になるとフジファブリックの赤黄色の金木犀が頭の中を流れる。金木犀ってなんだからトイレの芳香剤の匂いみたいで好きになれないのよね、という私にあのひとは…

水沢
4年前
8

変わりゆくもの

気が付いたらおとなになっていた、というのが最近の感想である。おとな、と言っても中味がどうというわけではなく、年齢が充分「大人」と呼ぶのに達しているのだということ…

水沢
4年前
5

桜桃忌にちなんで

随分と前回の投稿から時間が空いてしまった。 本当はマメに更新したかったのだけれど、迫りくる修論提出に向けて近頃は論文を読んだり書いたりとしていたのだ。これでも一…

水沢
5年前
6

平成だとか令和だとか

何かと騒ぎたがる世間にイマイチついていけない。 思えば人間「最初」だの「最後」だの、やたら好きなものだ。生きていれば何にも始まりがあり、終わりはつきもの。むしろ…

水沢
5年前
5
しあわせのうつくしき日

しあわせのうつくしき日

4月某日
GWに入り世間が浮き立つ中、私も例に漏れず久しぶりの休暇にほっと肩の荷を下ろした頃。
戦友とも言うべき、会社の同僚が会社の先輩と結婚式を挙げた。
夫婦とはもう数年来仲が良く、互いの家を行き来し合う仲で、学生以降、ここまで自分の心を許せる他人がいるのかと驚くばかり。

天気は快晴。
少しずつ夏へと向かおうとする空と、新緑の匂いがあたり一面に立ち込める。

友人のうつくしき真っ白のドレスが眩

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あたらしいからだ

あたらしいからだ

新年あけましてなんとか、というには少し遅すぎるこのタイミング。
怒涛のような2022年だった。久しぶりにnoteを開いて出来事を記すにはあまりにも周りの変化が大きすぎた。

とりあえず年末、仕事がピークに忙しいさなか、高熱を出し今では珍しくもなんともなくなったウイルスに悲しきかな、感染。
幸いにも軽症で済んだものの、まだなんだか体力が戻らず、ひとつひとつの動作がぎこちない。

そして長年お付き合い

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わたしが帰る場所

わたしが帰る場所

「いつしか高知に戻ったとき、東京に帰らなきゃと思うのかな」

恐らくそんな風に考えたのが、今から約1年とちょっと前だったように思う。そして私はいま、アンパンマンの安っぽい車内メロディを聞きながら、田んぼが続く道を片目にこの記事を書いている。

「お父さんの肺にね、影が見つかって落ち込んじゃってて、あまりご飯を食べないのよ」

今年の3月、電話口で母の少し低い声が耳元に響いた。猛威を振るう、新型のウ

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今日はきのうの続きだけれど

今日はきのうの続きだけれど

突然ですが、

私はとてもみつはしちかこさんの「今日はきのうの続きだけれど」という詩が好きだ。特にこの詩を、今日のように冷えた冬の朝は繰り返し頭の中で反芻するくらいには。

ご挨拶が遅れましたが、明けましておめでとうございます。気がつけば1月ももうすぐ半ば、昨日の続きを繰り返して、いつの間にか過ぎていた2020年。2021年は元旦の仕事からスタートし、ようやく落ち着き、フラフラの体もようやく回復し

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嗚呼、懐かしきわたしの

嗚呼、懐かしきわたしの

ふとした瞬間に昔のことを思い出す。

それは匂いだとか、音だとか、あるいは昔食べたお菓子の味だたか、それは否応なしに私の記憶を揺さぶるのだ。

気がつけば仕事を始めて4ヶ月。研究に明け暮れていた頃の記憶もはやぼんやりと(これは早すぎ?)する私の眼前に、かつて読んだ小説が暴力のように飛び込んできた。

山田詠美の小説をたまたま授業で取り扱うことになり、懐かしさとともに思い出したくない記憶の端々が顔を

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ただしい生活

ただしい生活

朝、カーテンの隙間から漏れる光で薄目を開ける。否応なしに新しい日の始まりを教えてくる光を無視するように、私は布団をかぶり、ベッドに転がるぬいぐるみを抱きしめる。うるさいスマホのアラームを何度も消して、また目を瞑る。

新しい生活様式、なんてテレビではやっているけれど、なれない仕事にプライベートを忙殺されてる毎日には無縁な気がする。休みの日は昼過ぎまで眠り、最後の力を振り絞って洗濯機を回し、掃除機を

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映画を愛する私たちへ

映画を愛する私たちへ

ゴールデンウィークも残りあと2日ほど。来る仕事がやや憂鬱になりながらも、購入したての新しいテレビで映画を貪る日々を過ごしている。

冷えたビールと軽いおつまみ。半分酔っ払い気分で見る映画はここが現実なのか夢なのかその境目をどこか曖昧にしているような気がする。見たい映画と読みたい本。日々に忙殺されて忘れかけていたけれど、私って意外と好奇心旺盛なのかも、なんて思ったり。

今日は映画好きにはあまりにも

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食べて生きて呼吸する

食べて生きて呼吸する

東京に来てから1ヶ月が経った。

修論が終わってからというもの、コロナで不安な日々を過ごしながらなんとか引越しを終えて、母たちとの別れもそこそこにあっという間に一人暮らしが始まった。

大学院の修了式は中止、せっかく頂いた賞も授賞式が無くなり、無機質なダンボールに包まれた表彰状があっけなく送られてきただけだった。ならば入社式は、と思ったけれどいくつか研修を終えた後、中止の連絡が入ってきた。そうして

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私の街、私の暮らし

私の街、私の暮らし

4月から新社会人になると同時に、初の一人暮らし、そして上京。

先日無事修論を出し終え、休む間もなく家族を連れて東京へ家探しに向かった(実際回ったのは母と2人だけど、父と兄は観光のためについてきた笑)。

元々住みたい所が決まっていた私にとって場所は譲れない。しかしその分家賃もお高いもので。バストイレ別が良いなんて新卒の給料で贅沢なんて言ってられない。泣く泣くユニットバスで妥協し、築年数はやや古め

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クリスマス後記

クリスマス後記

令和最初のクリスマスが過ぎた。23日が祝日じゃなくなって、平成生まれの私はとても変な感じがした。

クリスマス。予定だったらバイトに明け暮れるつもりだったのに、先週から体調を崩してしまい、諦めて病院に行ったら生まれて初めてインフルエンザA型と診断された。

大学の授業も行けず、色々任されている仕事も多かったので色んなところにすぐ連絡しては頭を下げ、全然いいのよ、M子ちゃんこういう時くらいはゆっくり

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おでんとたこ焼き

近頃随分と冷え込んできた。ひどい冷え性の私は毎晩、両手両足を布団の中で擦り合わせては震えて眠る。花粉は辛いけれど、既に暖かい春が恋しくて仕方ない。つくづく冬に生きるのに向かない女だと痛感する。

こんな寒い時期に思い出すのは、何故か幼いころの父との記憶ばかりである。以前noteに父とパフェを食べに行った話を書いたが、おでんとたこ焼きも非常に思い出に残っている食べ物である。

小学生の頃、自営業の両

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愛の重さについて

愛の重さについて

今年最後の3連休が終わった。

修士論文の中間発表会とゼミ発表とバイトを終えた私はくたくたで、日曜日は一日中布団の中で眠りこけてしまった。せっかく会員になっているというのにアマプラは音楽を聞くためのアプリになってしまっていて、もったいないなぁとぼんやりアプリを開いて見始めた映画がリュック・ベッソンの『アンジェラ』だった。

28歳(たしか)のアメリカ人の主人公は人が良く、悪いギャングに騙され多額の

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きっと秋のせい

きっと秋のせい

毎年この時期になるとフジファブリックの赤黄色の金木犀が頭の中を流れる。金木犀ってなんだからトイレの芳香剤の匂いみたいで好きになれないのよね、という私にあのひとは笑う。鼻をツンとつくような匂いを嗅ぐと、否応無しに秋が来たのだと体に知らせてくるから。

昨日は久しぶりに泣いてしまった。今年あと一回でも会えたらいいな、というのが最近の私たちの会話だから。もしかすると会えるかもしれない、となった昨日は慌て

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変わりゆくもの

気が付いたらおとなになっていた、というのが最近の感想である。おとな、と言っても中味がどうというわけではなく、年齢が充分「大人」と呼ぶのに達しているのだということに、ふとした瞬間に自覚するのだ。

直接的、あるいは間接的に同級生の結婚を知ることが最近増えてきた。今週末は大阪で同じゼミだった子の結婚式に参列する。ご祝儀はいくら、ドレスに髪飾りに美容室…と慌ただしく準備をしながら、そうか、もうそんな年に

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桜桃忌にちなんで

随分と前回の投稿から時間が空いてしまった。

本当はマメに更新したかったのだけれど、迫りくる修論提出に向けて近頃は論文を読んだり書いたりとしていたのだ。これでも一応は大学院生の隅っこを走っているのである。

そんな私の現在の専門はアメリカ文学。フィッツジェラルド、ヘミングウェイといったモダニズムを生きたロスジェネの作家たちへ関心がある。動乱の時代を駆け抜け、人々をシビアな目線で描いたヘミングウェイ

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平成だとか令和だとか

平成だとか令和だとか

何かと騒ぎたがる世間にイマイチついていけない。

思えば人間「最初」だの「最後」だの、やたら好きなものだ。生きていれば何にも始まりがあり、終わりはつきもの。むしろ終わらない始まりなんてこの世にあるのだろうか。

2019年になってから、すべて2019年最初の、になるし、あるいは年の瀬になれば2019年最後の、になってしまう。そして一度として同じ年は繰り返されない。いわば人生はすべてが「最初」で「最

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