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つれづれつらつら

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『愛満ちて母になる』以外の徒然なる話
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記事一覧

七色飯

私たち母娘の関係がここまで悪化したのは、母が絶対に取ってはならない質を取ったせいだった。

たった一言で25年間かけて築いてきた彼女と私の関係はあっけなく崩壊した。

ことの発端は、本当に些細なこと。

いつだってそう、彼女と私の口喧嘩の原因は寝て起きれば忘れるようなくだらないこと。今回のきっかけは覚えているけど、わざわざ人様にご説明するようなことでもない。

何がしの用で母がかけてきた電話中、軽

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呪いのシチューレシピ

野菜を切る。じゃがいもと、玉ねぎと、ブロッコリー。
ボウルに切った野菜を放り込みながら、実家の母を思い出す。その方が見た目が美味しいからと、何でも具材は大きく切る人だ。その大口サイズに慣れている私がどんなにひと口サイズを心がけても、切ったそれらは大きめに仕上がってしまう。

別にお店に出すわけでも、誰かを招いてもてなすわけでもない。近所のスーパーで買った唐揚げをひとくちで頬張る恋人をキッチンのカウ

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言い訳しがちな天邪鬼

言い訳しがちな天邪鬼。

あなたは悪くないよ

そう言われるたびにものすごく悪いことしてる気持ちになっちゃって、普段心がけてる自己肯定感とかもうどっかいっちゃって。心の治安が悪くなる。天性の天邪鬼を発揮したわたしはかなり面倒な女だと思う。

素直に頼ってくれないと傷つくよ。

昨日言われた言葉は理解できるけど、ありがとうと受け取れないのだからわかるとできるは違うってほんと。

O型獅子座

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自分が踊る必要はない

自分が踊る必要はない

母は私に何でもかんでも与えてしまう人だった。

私のためなら時間も苦労も惜しまない。

お習字にピアノ、英語教室、日本舞踊、バレエ。
いわゆる『お嬢様』が嗜む習い事はひと通り経験させてくれた。

(先に断っておきますがうちは特別家柄がよいわけでも祖父から多額の遺産を受け取ったわけでもなく、ごく普通の一般家庭です。ていうかじぃさん健在。)

英語教室には一年近く通った記憶があるけど、同級生の男の子と

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未来を生きる人へ②

未来を生きる人へ②

2020/11/10 午後1時
足立区役所区議会棟8階

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また、政治家の前にいる。

荷物を下ろして一息着く間も無く、あちこちから名刺を差し出され、返すものがない私はただ笑顔で受け取るばかりだった。まさかここで会社名義のそれを出すわけにもいかない。

私はメディアの人間だ。

ひとしきり挨拶も済んで一同着席。

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共同生活に性善説は無理がある

共同生活に性善説は無理がある

掃除も洗濯もやれる人がやる。
お互いがお互いの負担軽減を目指す方針に憧れるけど、そんな性善説で成り立っているカップルって実際どのくらいいるのかな。
実践できている例は少ないのでは?

だってこれ、どちらか一方が自分の"面倒"を優先し続けたらバランスが保てないじゃんね。

相手は私への面倒より自分の手間をかけてくれるだろう、と信じ切れない私がいる。家事なんて必要がなきゃ極力やりたくない。自分のだらし

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母のおうち時間

母のおうち時間

今朝、母から電話があった。

暇で暇でどうしようもない。
あんたたち一体何して過ごしてるの?

とのこと。

ちなみに私はコロナウィルス大流行の影響を受けてかれこれひと月近く自宅待機中。つまり社用スマホ片手に家で過ごすことが仕事だ。とても暇である。
同棲中の恋人(ナチコ)の勤め先はギリギリまで粘っていたけど、先週遂に在宅勤務が言い渡され、今はふたりして1日中家にいる。

バタバタ働

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同性カップルの部屋探し

同性カップルの部屋探し

深いところから水面に浮き出るような穏やかさで目が覚めた。時刻は7時26分。寝返りを打って窓に背を向けるけど、どうやら頭がしっかり起きてしまったらしい。仕方なくあたたかな毛布を蹴って起き上がった。

引っ越してきて2週間になる。オーダーしたカーテンは今週末に届く予定だと、注文に対する丁寧なお礼つきのメールがきていた。

カウンターキッチンのシンクを覗き込んだら、正方形の白いお皿がさっと水でゆすがれた

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彼女を太らせたい

去年の11月から昨日まで、社会人一年目の恋人のために毎日弁当を詰めていた。長い研修期間を終え、今日から本配属の勤務地で働くことになった彼女。昼食は今後、会社単位で発注をかける総菜屋に頼むらしい。

前日の夜から仕込む弁当は正直面倒でサボりたいと思うこともあった(実際サボったこともあった)のに、いざ「もう作らなくていいよ」と言われると、急にさみしい。自分の気持ちに「欲張りだなぁ」と笑ってやりながら、

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ずるい女

交際相手と喧嘩した。
ものすごく些細なことで。

お互いに「相手はこのあと自分がどうするかわかっているだろう」という過信をしたせい。

自分から「こうすればよかったね」「ごめんね」を言った直後に、私っていつからこんなに素直な人になれたのかなぁとふと思う。彼女だって私に謝るべきなのに、さっき逃げるようにシャワーを浴びに行ったきり戻ってくる気配がない。そのことに腹を立てながら、一方で、はやくこの険悪な

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まだ見ぬ花に水をやる

私はいつだって10年後の自分に期待している。

誰と、どこで、何をしていますかと将来の自分にききたい気持ちは微塵もない。知らなくていい。ただ理想に美化された可能性を妄想しては口角があがる。

あれは3年前の夏休み、当時住んでいたボロアパートの窓からお天気花火(号砲花火のことをうちの実家はそう呼んだ)の音が聴こえて、ひとりでふらっと祭りの屋台を回りに出かけたことがあった。幹線道路を一部通行止めにして

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10年間を振り返る

ツイッターで見かけた #10年間を振り返る
思い返してみたら随分といろんなことがあったことがわかり、楽しくなったのでうわっと書き出してみた。

ただの思い出話なのでなんら面白みはありませんが人間観察がお好きな方は餌にしてください。

14歳

中学2年生。田舎のギャルとヤンキーの合いの子みたいな見た目で成績は上の下という、なににおいても中途半端な中学生だった。人生初の恋人であった同い年の男の子と

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奈良、飛鳥の記憶

奈良、飛鳥の記憶

幼い頃にふたりで眺めた石舞台。
親子が共有する飛鳥の景色。

私が物心ついた頃から父は仕事一筋だった。

鉄鋼所を営む彼の帰宅はいつも日付をこえたあと。土日どころかゴールデンウィークもお盆もなく、ほとんど年中無休で働いていた。普段より早く起きた日の朝、数分間だけ会える実の父親を私は「また来てね」と言って見送った。
あの瞬間の父の気持ちがどんなだったのか、それを想像するとひどく申し訳ない気持ちになる

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