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先端技術

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30年の企業経営の経験から、様々な”ニッチな先端技術”に注目し私見を記しています。
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2015年4月の記事一覧

三次元鏡面加工

ステンレスの板に鏡面という種類がある。

鍋などがピカピカになっているのは、ステンレスの板に鏡面という種類がある。鍋などがピカピカになっているのは、鏡面と言えるが、粗度によって400番や800番などの呼称がある。通常400番なら相当美しい鏡で、顔の映りもなかなかである。カ-ブミラーも以前はガラスだったが、今はステンレスが多い。平らな板を鏡面に加工する技術は発達しているが、三次元の複雑な形状となると

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監視カメラの威力

監視カメラの威力

監視カメラの進歩が凄まじい。

かつてイギリスでテロ実行犯をカメラが特定したニュースがあって、監視社会なのだと思ったが、実は日本は既にそれ以上の監視社会に入ってしまっているそうだ。カメラの台数なども想像を超えたもので、もはや日本人はどこでもいつでも監視されている。イギリスは400万台が稼働中と言われるが、日本は2010年時点で推定300万台、その後少なくとも年間38万台のペースで増えている。

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技術は中小製造業の飯の種

技術は中小製造業の飯の種

自著のご案内です。『技術は中小製造業の飯の種』

少し前に、弊社の”技術”を軸にした社史をまとめ、それを元に話をする機会があった。会場に集まった方々の大部分は理、工、医の分野でそれぞれに立派な実績を積んできた皆さんだった。(中略)

彼らの技術と私の考える技術は、レベルという観点からすると全く比較にすらならないようだった。しかし、そうは言ってもローテクも技術のうちで、ローテクで食べている人も大勢い

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水中耕耘機

水中耕耘機

水中耕耘機が作られた。

背景はアサリの成長を妨げる雑海草を除去する作業の負担を無くすためである。今まではすべて人手に頼って大変な作業だった。オペレーターは船上の画面を見ながら操作するので、安全で効率が良く年寄りでも可能だ。北海道の篠田興業というところが4年かけて開発した。ただ、いまのところは機械のコストが高く、ベンツ並みの値段である。(篠田興業HPから参考記事☞)

これで思ったが、サンゴ礁を食

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マザーマシンが売れている

マザーマシンが売れている

工作機械業界が潤っている。2014年は1兆4千億円の受注予想である。これはリーマンショック後の最高水準に達する勢いだ。

思い出すのは平成の初めごろ、工作機械の受注が5千億まで萎み、「もう1兆円の水準を抜くことはない」と悲観していたことである。9月単月で見ると、内需492億円外需864億円と海外需要の大きさが顕著である。「ものづくり」の勢いがもはや国内にはあまりないこと、海外で製造業が発達している

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生ゴミの室内処理

生ゴミの室内処理

生ゴミの始末はどこの家でも切実な問題である。

町内のゴミすて場は厳格に守られていて、ゴミを出す日と時間も厳しい制限がある。週に2回程度では間に合わず、梅雨どきなどは部屋の中に保管してある生ゴミの臭いにも悩まされる。

この生ゴミを室内で処理できて、しかも臭わないそうだ。微生物で生ゴミを処理して水とCO2に分解する装置がすでにあって、次第に大型化しているが、クラレが開発したものは「ポバール樹脂」で

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富士ファルマバレー

富士ファルマバレー

地元静岡県の1位品目は少なくなってきた、と思っていたら、富士山麓ファルマバレープロジェクト(あまり聞かない言葉だった)の集積は非常に大きなもので、静岡県の医薬品・医療機器の生産金額が1兆円で全国1位だそうだ。

その背景には静岡がんセンターの存在(先端的治療センターで現在も引き続き拡張中)がある。私の周りにもここで手術を受けて生還した人がちらほらいる。企業ではテルモが富士宮市にあるが設備の更新に注

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バラ積みピッキングロボット

日本の工場の自動化率はずいぶん進んでいると思ったら、まだ5%程度だそうだ。

加工や検査の自動化は進化しているが、部品を並べたり、運んだりして専門装置間をつなぐ部分はまだまだである。

ロボットでは無理で、人間しかできない仕事が沢山残っている。たとえば、ごちゃまぜになって運ばれてきた部品の中から必要なものをすくいだして組み立てる作業は、おもちゃ箱の中から欲しいものを取り出すような高度な判断力と器用

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2015はクモ糸の量産元年

2015はクモ糸の量産元年

クモの糸の強度は鋼鉄の340倍という。

伸びがあって切れず、餌の昆虫をからめとる繊維は実に不思議なものである。これを人工的に作れないか?という夢を持った慶応大学湘南キャンパス(SFC)の若い研究者がついにやり遂げた。

やっとできた人工の糸は2cmほどで、単なるゴミとしか思われなかったが、今年は量産を始める。その規模は毎月1トンである。量産というなら、たくさんの蜘を摑まえてきて飼育するかと思った

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藻類から燃料

藻類からバイオマス燃料を抽出して、2030年には航空機燃料を作り出す。

東大が抽出技術を、東京ガスがメタン発酵の研究を分担して、光合成で石油に近い炭化水素を生成する微細藻類「ポツリオコッカス・ブラウニー」を培養液の中で濃縮、加熱後水分を残したまま溶媒で抽出して90%の炭化水素を得た。単位当たりの投入エネルギーは従来の1/2.抽出残渣を醗酵させてメタンガスを取る。ただし、現在は1Lあたり109円と

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ブーメラン

アメリカがイラク派遣部隊に配備したセンサーに「ブーメラン」という珍しい物がある。

これは車に取り付けたアンテナのようなマイク(7本)で集音して敵の発射位置を特定する装置である。弾が発射された衝撃音と弾がかすめて行く時の(30m以内の)音波の二つをマイクが拾って、CPが1秒で処理すると「発砲、2時の方角、距離120m、高さ6m」という声と画面とが教えてくれる。そこで逃げるなり反撃するなりして2次攻

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無人ヘリ

無人ヘリ

無人ヘリの開発はますます加速している。スイス連邦工科大が開発した無人ヘリの動画は、あまりのことに驚嘆するばかりだった。

人間が小型無人ヘリとボール投げ(キャッチボール)したり、ヘリが自分でお手玉で遊ぶ姿、ヘリの群舞などあきれてしまう。障害物を避けるプログラムが仕込んであるから、ヘリ同士が衝突することはない。勿論、ボーと見ている障害物(ここでは人間の意味)にぶつかる心配はない。だいたい1時間程度飛

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新断熱材

(専門分野である建築資材についての私見です)

産業技術総合研究所ナノシステム研究部門は、熱伝導率0.016W/メートルKと真空断熱の0.01W/メートルKに近い断熱材を開発した(名古屋のイノアックコーポレーションとの共同開発)。

空隙率90%以上のシリカエアゲルとポリプロピレン(PP)の複合材。シリカエアゲルはもろく、力を加えるとボロボロと崩れてしまったが、複合材はPPで表面を覆われており、

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義肢世界一

世界一の義肢メーカーはドイツのオットーボック・ヘルスケア社である。マイクロプロセッサーを搭載して制御機能を発揮する。背景には高齢化で糖尿病患者が増加し、合併症で下肢切断に至るケースが多いからである。恐ろしい話だが日本の近未来を見せられる気がする。飽食の時代の、偏った運動しかしない日本人は、糖尿病の予備軍で一杯だ。必ずしも太った人がかかる病でもなく、痩せていても発病する。高カロリーの美食に耽り、肉体

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