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スペインの人間味

スペインの人間味

昨日、仕事から帰宅すると、郵便受けに白い封筒が届いていた。消印には、スペインの郵便局のマーク。

昨年11月にスペイン語検定DELEのC1級を受けた。DELEはスペインの機関が実施している検定で、日本も含め世界中で試験が行われている。私は過去にもっと下の級を取得していたが、すべて日本で受験した。海外での受験ははじめてだった。

DELEはやけに時間がかかる。結果発表は試験の3ヶ月後。合格なら紙媒体

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ラベンダーの町のミニ牛追い

ラベンダーの町のミニ牛追い

近所にラベンダーが咲いていて、いい香りで…という話を人にしたら、ラベンダー畑で有名な町があるから連れて行ってくれるという。
それで、行ってきた。

スペイン、カスティーリャ・イ・ラマンチャ州、ブリウエガ(Brihuega)。
想像を超える広大な面積が、一面、紫色。色の濃い品種で、鮮やかだった。
真昼の時間帯は日差しが強すぎて干からびるので、夕方(と言っても、午後8時。サマータイムもあり、日暮れが遅

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花と卵

花と卵

仕事で送別の場面があり、花束を注文した。本当は自分で買いに行きたかったが、店に行く時間がなかった。そこで、花屋のウェブサイトの写真を見ながら電話でデザインを指定し、他の人に取りに行ってもらった。
私は花の色合いが気になっていたので、届いた花束を見て、淡いピンクと紫のきれいな取り合わせに満足した。
が、いざ、それを渡す段になって、ふと花束に目をやると、なんと花が古い。ガーベラに似た花が、見るからにし

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去年と今年

去年と今年

マドリードで過ごす二度目のクリスマス。
1年前は、なにかと目新しかった。コロナでまだ行動が制限されていたものの、イルミネーションを見に行ったり、トゥロンやロスコン、パネトーネ(どれもこの時期のお菓子)を食べてみたり、宝くじの抽選日の大騒ぎに感心したりした。東方三博士のパレードも見物した。

きらめくイルミネーションには今年もわくわくするし、ロスコンも食べたし(トゥロンとパネトーネはそれほど好みでな

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3度目のバルセロナ

3度目のバルセロナ

スペインでの生活が残り1ヶ月を切った。
帰国のための調整で忙しかったり、寒かったりで、年始のポルトガル旅行以来、遠出せずに2ヶ月近く過ぎた。けれど、最後にどこかに行こうと夫と相談し、選んだ行き先はバルセロナ。訪ねるのはこの2年で3回目。繰り返し、戻っていきたくなる街。

魅力はなんだろう。
まず、スペインの中では多様性が豊か。観光地にいろんな人がいるのは当たり前だけれど、そのへんの公園やなんでもな

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いくら人を見ても泥棒と思えない

いくら人を見ても泥棒と思えない

5月のはじめ、4日間の休暇を取った。
その間に、社用iPhoneのケーブルが私の席からなくなった。
周囲に尋ねると、同僚の1人が「どうしても必要で借りた。返す時は、デスクの上に置いておいた」と言った。
でも、私が出勤した時にはデスクの上にはなかった。

デスク下のあまり目につかない所にいつも置いていたものを、“上”に残さないでくれ!と思った。

物品管理の担当者に相談したが、「紛失は弁済」という冷

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ウクライナでの戦争

ウクライナでの戦争

仕事から帰って、昨日は珍しくテレビをつけた。すでに夕飯を済ませた子どもとチョコレートを食べながら、ニュースチャンネルでバイデン大統領の会見の中継を見た。

質疑応答に入って、ABCの記者が質問した。
「この状態はいつ、どのように終わりますか、ロシアはウクライナを超えて侵攻するでしょうか、核を使用するでしょうか」
テレビに映ったバイデン大統領は、勢いよく並べられる問いを聞きながら、にこにこと笑った。

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三博士の贈り物

三博士の贈り物

1月5日、午後6時半。仕事を終えて、地下鉄の駅へ向かっていた。辺りは暗く、しかも雨が降っているのに、家族連れが数組、私を追い越していく。なぜか、脚立を担いでいる人もいる。

マドリードで一番の大通り、カステジャーナ通りまでたどり着いて、脚立の使い道がわかった。
東方三博士のパレード(Cabalgata de Reyes)があるのだ。家族連れは見物客だった。パレードはまだ出発したばかりで、私がいると

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仮説/請求書/地下鉄のチェリスト

仮説/請求書/地下鉄のチェリスト

2022.1.10
道の少し先を、中学生くらいの女の子たちが歩いていく。4人並んでおしゃべりしながら、学校に行くところだろうか。4人のうち3人は、VANSのリュックサックを背負っている。そのうち2人は、同じデザインの色違い。そして、4人ともスニーカーはNIKE。
一緒に歩いている人たちは同じような格好をしている、というのが10年以上前からの私の仮説なのだが、スペインでも時々、事例が見つかる。

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簡単に仲良くなれるわけではないけれど

簡単に仲良くなれるわけではないけれど

3人いる社用車の運転手のうち、ミゲルは私と年齢が一つしか違わない。
以前、私が助手席に乗り込んだら、いい感じのラテンポップスが流れていた。それを彼が止めたので、私は「なんで止めるの?」と言った。以来、彼は乗客が私1人だと音楽をかける。

ある時、仕事の終わりが深夜になった日、そういう場合にはよくあるように、普段より会話が弾んで、好きな音楽の話になった。それぞれの好きな曲を交互にかけていった。
私は

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同じ色の

同じ色の

日曜日の夜、夫と映画を見た帰り、旧市街のオペラ駅から地下鉄に乗った。
ふと目を上げた時、向かいの席に座った男の子に目が止まった。

あまり色落ちのない黒のデニムジャケット。その下には、ファーの襟がついたグレーのニット。細身の黒いパンツに、黒いエナメルのレースアップシューズ。その間にのぞく足首は、薄手の黒いストッキングに包まれている。すね毛が少し透けている。
そして、きれいなピンク色のマスクをして、

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サンタクロースっているんでしょうか

サンタクロースっているんでしょうか

小学1年生のクラスの保護者のWhatsAppグループで、こんなメッセージの共有があった。

ネズミのペレスは、子供の抜けた乳歯をお金と交換してくれるネズミ。枕の下に入れておいた歯が、朝になると硬貨に変わっている、というやつ。
東方三博士は、1月6日に子供たちにプレゼントを持ってきてくれる。スペインでは伝統的にはサンタクロースではなく三博士だったのが、最近は両方からもらえたりするらしい。

つまり、

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抽選日の興奮と、静かなイヴ

抽選日の興奮と、静かなイヴ

毎日、マドリードのど真ん中に通勤している。
いつも通る道で、その日の朝は、民家の塀の向こうから不思議な歌が聞こえてきた。
なんだろう?と考えて、その日は12月22日だと思い当たった。クリスマス宝くじ(la Lotería de Navidad)の抽選日だ。子どもたちが独特の歌のような節をつけて、当選番号を読み上げる。

年一回の、一大関心事らしい。
なにしろ、11月ごろから至るところでくじが売られ

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マドリードから、冬のシチリアへ

マドリードから、冬のシチリアへ

シチリアを旅行した。
マドリードからパレルモへ、ライアン・エアの直行便で2時間と少し。パスポートコントロールもなく、現状としては、EUのCOVID証明書があれば国内線の感覚で行ける。
目的は、映画『ゴッド・ファーザー』ゆかりの地を訪ねることと、シラクサの遺跡めぐり。

飛行機はほぼ満席だった。スペインは連休だったので、旅行客が多い。機長のアナウンスに合いの手を入れたり、パレルモに着陸すると拍手が起

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