林霙

東京在住 小説・詩・ショートエッセイを書いています 書きつづけること いろいろなことに…

林霙

東京在住 小説・詩・ショートエッセイを書いています 書きつづけること いろいろなことに関心を持ちつづけること を大切にしていきたいと思います わずかでも皆さんの心のうちに残るものがあれば幸せです

マガジン

  • わたしのお気に入り

    クリエイターさんのすてきな記事に魅せられます

  • ふと 口にしたひとり言や呟きも あるときは詩のことばとなって 浮かんでは 消えていきます 書き留めておきたい そんな愛着があるのです

  • ショートエッセイ はなやぐ本たち

    出会いの必然性は 本にもありそうな気がします知らない町のはじめての書店や 通いなれた本屋さんでその日 その時 その場所で すてきな本に出合える幸せですそんな出会いを書いていきたいと思います

  • 小説「風の華」

    窓をあければ華は空を飛べるように思う癖があった。ずいぶん幼い日の思い出だった。小学生になったばかりの小さな記憶が・・・

  • ショートエッセイ 今日のねごと明日のねがいごと

    たかが寝言 されど?寝言 寝言って意外に本音がでていたり 自分の希望とか願いも 口にしているかもしれません

記事一覧

詩⑬「かなしみとして」

それでは また と言われたきがした さかのぼる 記憶に みつめてる みつめられていた まぼろし 悲しみ それでは いつか と答えたきがした みにくい 姿の わたし …

林霙
8か月前
14

詩⑫「おもいちがい」

昨日までの雨は どこかへいってしまった そんな晴れた日に わたしの出会った花が 微笑んでみえたのは 思いちがいだろうか いやなことを忘れてしまうくらい 空がきれいすぎ…

林霙
8か月前
10

詩⑪「はらはらと」

坂道をのぼっていくと いつのまにか丘の上にいた わたしの目の前に 町が広がっていた 知っていたはずの 町に風が吹いていた 木が葉をおとしている わたしの心の中に 巣くっ…

林霙
8か月前
8

ショートエッセイ はなやぐ本たち⑦マリー・ローランサン「夜の手帖」

「あなたの目の前を過ぎていった  その日の埃と思い出  白い花瓶の中の葉むら  涙にくもった  壁のアラベスク模様」 (大島辰雄訳 マリー・ローランサン「夜の手帖」…

林霙
8か月前
5

詩⑩「雨のしずく」

雨のしずくに 映っている 世界は ひとつじゃない 町も わたしも 知らないことって まだまだ たくさんある きっと

林霙
8か月前
5

詩⑨「まっさら」

まっさおな空に 昼の星ひとつ 落ちていった なにかがおわって 空はまっさら なんにもない 空ばかり どこまでも

林霙
8か月前
3

詩⑧「夏の日の花」

就職活動で  歩き回った だけの うまくいかない夏 暑いからと 頭も心も さえないからと 言い訳してる うかない顔で 立ち止まった 街角に 咲いていた夏の花 暑くても…

林霙
8か月前
5

詩⑦「ものがたり」

早朝 めがさめると 枕元に 母が立っていた もちろん 足はある 時計は五時を少し回ったところだ 枕元で 母がいう わたし 会社にいかなくていいんだよね 十年以上まえ…

林霙
9か月前
5

ショートエッセイ はなやぐ本たち⑥「セァラ・ティーズデール詩集」

「海、私が死にも打ち勝てると思うのは海のためだ。 一刻とはいえ心燃え立つのも海のためだ。 打ち伸ばした銀の波が、 砕けるばかりなのに砕けないのをみるからだ。」 (加…

林霙
9か月前
4

詩⑥「夏の道」

夏の道 浸みゆく水の 広がる果てを夢み 遠くで枕木を叩きつづけながら ふるさとの列車は小さくなっていった 子どもの頃の記憶の片鱗を 一つひとつ重ね合わせては 誰もい…

林霙
9か月前
5

小説「風の華」第一章(1)

 ぼんやりとした雲が、青空を覆っていた。  華は、翠と長い坂道を登っていた。  潤の住んでいるマンションは、丘の上にあるらしかった。九月の風が、どこか秋の近づくの…

林霙
9か月前
4

詩⑤「歳月」

湖のうえを 光が滑りはじめる すると 誰かが 小声でささやきだす 幻たち おまえたちは知っているのだろう 残された点し火を 目指した日を 風が描いた波間に ゆらめい…

林霙
9か月前
8

ショートエッセイ はなやぐ本たち⑤ルネ・ヴィヴィアン詩集「菫の花の片隅で」

「私は流謫の身で、時は重くのしかかる。  光り輝く真昼の美しい太陽もむなしく!  夜になればいつも、再び苦い沈黙にうち沈み、  私は禍いのうちでもこの上なく重いそ…

林霙
9か月前
6

小説「風の華」序章(4)

 校舎の裏庭は静かだ。たまに園芸部の生徒たちが来て、小さな畑を耕したり、苗を植えたりしているのを見るくらいだ。  華は、潤が来るのを待っていた。 「人の口に戸は立…

林霙
9か月前
4

ショートエッセイ 今日のねごと明日のねがいごと④「神社」

神社にお参りに行くと 境内は清々として気持ちの良いものです 大きな木が何本もあったりして 風に鳴る枝葉の音も軽やかです 鳥や虫の音も涼やかにきこえてきます 街に家や…

林霙
9か月前
4

ショートエッセイ 好きな絵にかこまれて暮らしたい④「剪紙」

中国の切り絵「剪紙」は 祖母の家の玄関に飾ってあったのを見たのが最初でした 祖母は 剪紙を習っていたらしく 部屋にたくさん飾られていましたが 玄関のは 特に縁起の…

林霙
9か月前
3
詩⑬「かなしみとして」

詩⑬「かなしみとして」

それでは また と言われたきがした
さかのぼる 記憶に みつめてる
みつめられていた まぼろし 悲しみ

それでは いつか と答えたきがした
みにくい 姿の わたし
表情にでていた きずついた こころ

あれから かわいた風の やんだころ 
悲しみを かなしみとして 語れるようになって
ようやくきづいた きみの やさしさ

詩⑫「おもいちがい」

詩⑫「おもいちがい」

昨日までの雨は
どこかへいってしまった
そんな晴れた日に
わたしの出会った花が
微笑んでみえたのは
思いちがいだろうか
いやなことを忘れてしまうくらい
空がきれいすぎるからだろうか

詩⑪「はらはらと」

詩⑪「はらはらと」

坂道をのぼっていくと
いつのまにか丘の上にいた
わたしの目の前に
町が広がっていた
知っていたはずの
町に風が吹いていた
木が葉をおとしている
わたしの心の中に
巣くっていた孤独も
おとしてしまいたい
はらはらと

ショートエッセイ はなやぐ本たち⑦マリー・ローランサン「夜の手帖」

ショートエッセイ はなやぐ本たち⑦マリー・ローランサン「夜の手帖」

「あなたの目の前を過ぎていった
 その日の埃と思い出
 白い花瓶の中の葉むら
 涙にくもった
 壁のアラベスク模様」
(大島辰雄訳 マリー・ローランサン「夜の手帖」より)

はかない幻の花をみているような詩の世界は、ローランサンの絵そのもの。
読みながら夢の世界に浸ることのできる詩文集です。
じっさい、夜寝る前に読むと、よく眠ることができました。

詩⑩「雨のしずく」

詩⑩「雨のしずく」

雨のしずくに
映っている
世界は
ひとつじゃない
町も
わたしも
知らないことって
まだまだ
たくさんある
きっと

詩⑨「まっさら」

詩⑨「まっさら」

まっさおな空に
昼の星ひとつ
落ちていった
なにかがおわって
空はまっさら
なんにもない
空ばかり
どこまでも

詩⑧「夏の日の花」

詩⑧「夏の日の花」

就職活動で 
歩き回った だけの
うまくいかない夏

暑いからと
頭も心も さえないからと
言い訳してる

うかない顔で
立ち止まった 街角に
咲いていた夏の花

暑くても
陽光を浴びながら
輝いている夏もあるのだなあ

感心していたら
急に花が
わたしの方を向いた

風のなかで 花は言った
太陽に背を向けるな
水を飲め
背筋をのばせ

すると 不思議なことだ
わたしにも 
気持ちのよい風が 吹い

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詩⑦「ものがたり」

詩⑦「ものがたり」

早朝 めがさめると
枕元に 母が立っていた
もちろん 足はある
時計は五時を少し回ったところだ

枕元で 母がいう
わたし 会社にいかなくていいんだよね
十年以上まえに 亡くなった父の会社のことらしい
心細そうに 母がいう
会社あったっけ
ないよ 
いかなくて いんだよね
いかなくていいよ

床をこするような足音が
薄闇の廊下にきえていき
やがて 静かになった
わたしは 眠れなくなった
夜間せんも

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ショートエッセイ はなやぐ本たち⑥「セァラ・ティーズデール詩集」

ショートエッセイ はなやぐ本たち⑥「セァラ・ティーズデール詩集」

「海、私が死にも打ち勝てると思うのは海のためだ。
一刻とはいえ心燃え立つのも海のためだ。
打ち伸ばした銀の波が、
砕けるばかりなのに砕けないのをみるからだ。」
(加藤菊雄訳 セァラ・ティーズデール「美しく気高い海」)

以前、韓流ドラマ「冬のソナタ」で使われた詩の作者ですが、恋愛詩とともに悲しみや美へのあこがれなど、芸術性の高い詩集だと思っています。避けることのできない運命の嵐の中で、一人超然して

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詩⑥「夏の道」

詩⑥「夏の道」

夏の道

浸みゆく水の
広がる果てを夢み
遠くで枕木を叩きつづけながら
ふるさとの列車は小さくなっていった

子どもの頃の記憶の片鱗を
一つひとつ重ね合わせては
誰もいない田圃の轍を
今日も歩いている

ふと 誰かに呼びかけられ
おもわず振り返ってみても
そこにいたはずの人の姿は
影となって風にきえてしまう
草いきれを身に帯びたまま

今では すっかり舗装された道の
裂け目からのぞいた草花に陰る

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小説「風の華」第一章(1)

小説「風の華」第一章(1)

 ぼんやりとした雲が、青空を覆っていた。
 華は、翠と長い坂道を登っていた。
 潤の住んでいるマンションは、丘の上にあるらしかった。九月の風が、どこか秋の近づくのを感じさせる。
「え、潤と翠さんが、親戚?」
 翠が潤のいとこであることを、彼女から伝えられた時、華は驚いた。
さらに、驚いたのは、潤が自分の家族のことで、かなり悩んでいる、と聞かされたことだ。
「潤君のお母さん、病気なんだって。一人で介

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詩⑤「歳月」

詩⑤「歳月」

湖のうえを
光が滑りはじめる
すると 誰かが 小声でささやきだす

幻たち
おまえたちは知っているのだろう

残された点し火を 目指した日を
風が描いた波間に ゆらめいていた森影を

やがて 櫂の響きが
近づいてくる

不確かな歳月を
乗せながら

ショートエッセイ はなやぐ本たち⑤ルネ・ヴィヴィアン詩集「菫の花の片隅で」

ショートエッセイ はなやぐ本たち⑤ルネ・ヴィヴィアン詩集「菫の花の片隅で」

「私は流謫の身で、時は重くのしかかる。
 光り輝く真昼の美しい太陽もむなしく!

 夜になればいつも、再び苦い沈黙にうち沈み、
 私は禍いのうちでもこの上なく重いそれを嘆く。不在を。」
(中島淑恵訳 ルネ・ヴィヴィアン「不在」)

詩集全体を通して 
恋愛をテーマにした詩が多く見られますが 
情熱と甘美さのうちに 
詩人の悲しみの深さを感じさせられます
「不在」は特に好きな作品です
詩は 大切なな

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小説「風の華」序章(4)

小説「風の華」序章(4)

 校舎の裏庭は静かだ。たまに園芸部の生徒たちが来て、小さな畑を耕したり、苗を植えたりしているのを見るくらいだ。
 華は、潤が来るのを待っていた。
「人の口に戸は立てられぬぞ」
 そんなセリフをどこかで聞いた気がする。
 潤と翠が二人きりで歩いていたという話は、一日であっという間にクラスメイトたちに広がってしまった。
 この際、二人のことなどどうでもいい。
(なんで、わたしまで巻き込まれなければなら

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ショートエッセイ 今日のねごと明日のねがいごと④「神社」

ショートエッセイ 今日のねごと明日のねがいごと④「神社」

神社にお参りに行くと
境内は清々として気持ちの良いものです
大きな木が何本もあったりして
風に鳴る枝葉の音も軽やかです
鳥や虫の音も涼やかにきこえてきます
街に家やビルが増えても
神社の緑は 昔から変わらないのでしょう
何百年も前から 豊かで美しい緑は
訪れる人や 地域の人を癒してきたことでしょう
鎮守の森
まさに そのとおりだと思います

ショートエッセイ 好きな絵にかこまれて暮らしたい④「剪紙」

ショートエッセイ 好きな絵にかこまれて暮らしたい④「剪紙」

中国の切り絵「剪紙」は 祖母の家の玄関に飾ってあったのを見たのが最初でした
祖母は 剪紙を習っていたらしく 部屋にたくさん飾られていましたが
玄関のは 特に縁起のよいものらしく 大きな額に飾られた「福」のデザインでした。
祖母自身も 福顔の笑顔がすてきな人でした
「剪紙」をながめるたび 祖母のことを思い出します