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チープリショート(まとめ)

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noteで紹介した私のショートストーリーをまとめました。 もしよろしければ、以前からのすべてを読み返してみてください。 ありがとうございます。
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記事一覧

『キミと衝動』

『キミと衝動』

バレンタイン、告白がんばれの気持ちを込めて!

キミと衝動

喉の奥が痛くなるくらいに
キミに会いたいと思う
この体が砕けてもいいくらいに
キミと会いたいと思う

誰に何かを言われてやったわけじゃない
本能に従っただけ
崖の上に咲く花を採りに
衝動で動いただけ

どうしてダメなのさと問うよ
今すぐペガサスに飛び乗って空を駆けてもいい
どうしてダメなのさと聞くよ
何度でも何度でも何度でも何度でも

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『カンノンボサツちゃん』

『カンノンボサツちゃん』

愛しいと抱きしめてしまう

カンノンボサツちゃんは、毎日の日課として瞑想をします。
これはマストです。
必ず雀の声がする朝4時に起きてから1時間のひとり時間を過ごします。
Titititititi。
なかなか雀たちの音量が大きいです。

自分の中の自分に問いかける、自分との対話の時間。
なんだか早口言葉のようですが、そのようなことをする時間を過ごします。
これをすることで、自分の良い部分や悪い部分

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『けっこんの唄』

『けっこんの唄』

このまま止まないかと思った雨が、
いつのまにか空に帰っていく。
晴れとともに虹がかかる。
ひとりで歩く夕方の帰り道。
いつしか影がふたつに増えて、
月の灯り頬に揺れる。
少し不安なことも
少し悲しいことも、
少し違和感のあることも
少し大変なことも、
すべてが必要なことで
すべてがつながっていく。
たとえばとなりに君がいるから、
前よりも無理がきくようになり、
たとえば道端に咲く花も
とても愛おし

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『うたた寝』

『うたた寝』

眠いのに、眠れない。
疲れているはずなのに、目がバッキバキ。
最近はそんなことが増えてきました。
昔から心配事があると眠れないタチではありましたが、
今は年齢的なことなのかもしれません。

眠るというのは、案外体力を使うのだそうですから。
なんだかさみしいですね。
年を重ねると、眠ることも許してもらえないのかと。。。

成長期の時には、休日に平気で12時間以上眠ることがありました。
朝ごはんもお昼

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『こどもどうぶつ会議』

『こどもどうぶつ会議』

「それでは会議を始めます。初めに議長のマコトくん、開会の言葉を
 お願いします」
司会はこの中で一番長老の亀さんが務めます。
参加者は各国のこども達とどうぶつさん達です。
アフリカから来たライオンさん、タイから来た象さん、メキシコから来たアリクイさんなど皆遠くからわざわざやってきました。
「えー、みなさまお忙しい中、またはるばる遠くからお集りいただきましてありがとうございます。本日は『悪い大人を消

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『奏でろ!カミナリさん』

『奏でろ!カミナリさん』

1 恋の雷

しばらく雨が降っていません。
真冬のある日。
鼻の奥の方がくっついてしまうほどの乾燥注意報が出て、
静電気で頭の毛が逆立ちます。
風景が、まるで凍っているように思えます。

カミナリさんはしばらくギターを弾いていません。
確かに雷がドンドコ鳴ったり雨がザーザー降ったりするのは、
あまり冬にイメージがありませんけれど。
きれいな空。
雲一つありませんが、どうしたものでしょう。
きっと洗

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『君のとなりで』

『君のとなりで』

もしもいやなことがあったなら
泣いてしまえばいい
もしも耐えられないほど
切なかったのなら

見る?見ない?それとも立ち向かう?
自分に正直に
すき?きらい?それともどうでもいい?
我慢しないように

踊れ歌えそれでよければ
僕はここにいる
嘆きのダンスでよければ
今夜つきあうよ

もしも悲しいことがあったなら
途方にくれてもいい
もしも忘れられないほど
苦しかったのなら

すき?きらい?どちらで

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『さよなら、ほっぺ』

『さよなら、ほっぺ』

雷とともに、
そのやわらかくてふっくらとした
ほっぺはやってきた
触ったら、涙がでた
これからもう、決して離さないと
誓った

ほっぺは、じっとこちらを見つめて
笑うようになった
会ったことはないけれど
きっと天使はこんなふうだろうと
思った

ほっぺは、話しはじめた
あーうー あーうー
きいたこともないそのメロディーに
心がとろけて温かくなる

ほっぺは、歩きはじめた
あっちに行ったりこっちに行

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『クリスマスの翌日』

『クリスマスの翌日』

12月25日が終わり、人々はお正月の準備に取り掛かります。
新しい年を迎えるワクワクで、世界中のすべてがスピードアップする気分です。
クリスマスはまた来年のお楽しみ。
もみの木は飾りを外されて、なんだか恥ずかしそうで少し寂しそうに見えます。

さて、サンタクロースは一年に一度の大仕事を終えて
久しぶりに朝寝坊をしてしまいました。

「ホーホッホー。朝の10時じゃないかあ。こりゃあ眠ってしまったなあ

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『い~い湯だな』

『い~い湯だな』

昔々、明治時代のお話。
まだ東京でも自然がたくさん残っていて、田んぼのあぜ道や畑や林や竹藪の道が普通にあった頃。
ある一人の大地主の男がおりました。
名前を、長三郎(ちょうざぶろう)と言いました。

今夜、村の長をしているこの長三郎は、夏祭りの内容を決めるための寄り合いに参加しました。
普段からお酒が大好きな長三郎。大義名分のもと、たいそうたくさんの美味しいお酒を飲んだのでした。
「今夜の空はきれ

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『すかしてんじゃねえよ』

『すかしてんじゃねえよ』

5年2組。
隣りの席の小森くんは、いつもお茶らけている。
何かといえば手を挙げて大きな声でくだらないことを発言する。
「先生、今朝でっかいウンコが出ました!だから給食一杯食べれます!」
ドッとクラスは笑うけれど、わたしはただただ呆れている。
目立ちたがり屋なのだろうが、本当に毎回しょうもないことを
授業を止めてまで言う。
それのどこが面白いのかわからないので、「無」の表情のままでいる。
そんなワタ

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『みどりの秘密』

『みどりの秘密』

わたしには秘密がある。
夫には結婚前に煙草はやめたと伝えてあるが、本当は違う。
イライラした時、特に同居の姑の嫌味や仕草が鼻につくとパート帰りに吸いに行く。
生活圏から少しだけ離れたコンビニの前。
煙草が嫌われ者になった最近では,
もう「吸い殻入れ」を置いてくれている所は少ないが、
ここだけはいまだに置いてくれている。
知り合いにあまり会わないので助かるし、目の前に公園があって保育園児たちが無邪気

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『アマビエカフェ』

『アマビエカフェ』

みなさん、すっかりご無沙汰しております。
「アマビエ」を覚えていますか?
ワタクシ、妖怪「アマビエ」でございます。
その節は大変お世話になりました。
一躍脚光を浴びまして、毎日大忙しでございました。

今どうしているかって?
暇しているのではないかって?
それなりに楽しんでいますよ。ほら、この通り。
ワタシはアマビエ公園の近くでカフェを営んでいる「アマビエ」です。
近くに美術館とか図書館とかもあっ

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『バナナに恋したタツノオトシゴ』

『バナナに恋したタツノオトシゴ』

キミと初めて会ったのは、
ボクが熱帯魚屋さんに来た今日だった。

眠っているキミを見て、
ボクの胸がチクチク痛んだ。
どうしたらこの水槽から出て、
寝ているキミを起してあげられるだろう。

キミの声を聞いてみたい。
キミと一緒に水槽で漂いたい。
キミの黄色を褒めてあげたい。
滑らかな曲線も、茶色いブツブツ模様も。

これを、恋というのだろうか。

すると、
ボクの隣の水槽の、ハコフグ君が言った。

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