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キノコと硫黄の話 -Mushroom and Sufur-
キノコの美味しい季節ですね。キノコ狩りが好きな人も多いのではないでしょうか。今日は、キノコと硫黄(Sulfur, S)のお話をしようと思います。
硫黄は自然界では非常にありふれた元素です。植物由来のメチオニンやシステインは人体への供給源となっていますが、硫黄は体内ではケラチンなどのタンパク質でジスルフィド結合の架橋を形成しタンパク質の高次構造を決定しています。ではキノコはどのような使い方をしてい
風邪ってそもそも何?-What's Common Cold Syndrome?-
季節も移ろい、春から新緑の時期に差し掛かってきました。そんな季節の変わり目はどうにも体調を崩しやすいもので、皆様はいかがお過ごしでしょうか。特に気温の高低差が日によって変わると体温の調節も難しいものです。
筆者はというと、家庭内で風邪が流行しており例に漏れず自分も罹患してしまいました。咳やら痰やら頭痛やら、なんとも忌々しい限りです。
ところで、私達は日常的に「風邪」と呼んでいる疾病、病原の名前
ネコの耳が落ちる春 -Sitotoxism & Photosensitivity-
桜も満開から散りはじめ、春も本番が到来しています。
春が旬な食べ物も多いですが、魚介類でいえば春告魚の桜鯛や鰆、メバルなどがあります。
ところで、「春先のアワビの内臓を食べさせるとネコの耳が落ちる」という言い伝えはご存知でしょうか?
今日は、光過敏症を発症する食中毒についてお話します。
Introduction
先の言い伝えですが、江戸時代中期に編纂された書籍に記載があるような古いものだそ
科学と技術と科学技術の倫理-Science, Technology and Ethics-
2024年3月11日、第96回アカデミー賞でクリストファー・ノーラン監督「オッペンハイマー」が作品賞を含む7冠を受賞したことが話題となりました。
この映画は第二次世界大戦中のアメリカで原子爆弾の開発計画「マンハッタン・プロジェクト」を指揮したロバート・オッペンハイマーを題材としたもので、世界的に話題となりました。
オッペンハイマーは理論物理学者であり、「原爆の父」とも呼ばれている天才科学者とされ
花粉症の科学-Human Race vs. Pollinosis-
季節はもう春真っ只中というようになってまいりました。
天気が良ければお散歩をし、桜があれば花見をするなど乙なものというようなシーズンです。
しかし困ったことに、その活動に水をさして来るのが「花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)」。悩まされている人も多いのではないでしょうか。
実際、花粉症は国内で約3,000万人、スギ花粉症に関してはほぼ国民の3人に1人が罹患する日本で最も多いアレルギー疾患であり、現在
桜小話 -Sakura/Cherry blossoms-
春は出会いの季節でもあり別れの季節でもあるとされています。この記事を執筆している3月には、多くの学校で卒業式という別れと旅立ちが、また4月に入ればまた入学式という出会いが待っています。
その様子を静観しながらも花吹雪で幻想的に彩るのが桜であり、日本の伝統的な風景であります。
今日は、桜に関する小話をお話しようと思います。
1.桜の表記
本記事では、『桜』と表記させていただきますが、時折ニュー
震災と木-Disaster Prevention Functionality of Trees-
Introduction
2011年3月11日14時46分、三陸沖の宮城県牡鹿半島の東南東130km付近で、深さ約24kmを震源とする地震が発生しました。マグニチュードは9.0、最大震度は7であったとされています。現在、この震災を東日本大震災と呼び、長きにわたり復興に尽力されています。
2024年1月1日16時10分、石川県能登半島で、深さ約16kmを震源とする地震が発生しました。マグニチュー
プラスチックあれこれ-Current Status of Alternative Plastics-
コンビニに行くと、レジ袋をどうするかを尋ねられます。2020年にレジ袋が有料化されてからしばらく経ちますが、有料化されようが量が多ければ普通に購入しているような姿が散見されます。
ユニクロや無印良品に行くと紙袋が置いてあり、マクドナルドでは紙製のストローが使用されています。
しかし、現代の生活においてプラスチックに代わるものというのは中々無いもので、現在ではそのプラスチックをどのようなもので製造す
きつねと傘ときのこと-Standard Japanese Name-
山を歩いていると、ふと目を下に向けるとキノコが生えていることがあります。図鑑を広げてみると似たような見た目のキノコが並ぶけれども、名前を見ると「◯◯タケ」という名前ばかりだけれども特に法則性もなく、中には「サルノコシカケ(猿の腰かけ)」なんてものもあります。調べようとしても調べ方が分からなくて諦めるなんてこともしばしば。
今日は、キノコと変わった標準和名についてのお話していこうと思います。
標
木が死ぬということ-Biological and Ecological Dynamics in Forest Environments-
街路樹を見ると、たまに伐採されて切り株だけになっているものがあることがあります。きっと枯れたから切られたのでしょう。
人が亡くなった場合、お葬式がありお墓に入ります。火葬だったり土葬だったり宗派によって異なると思います。
では、木はどうなるのでしょうか?街路樹は木材になったり薪やチップとして燃やされるかも知れません。
では、森の木々はどうでしょうか?実は、森の木々は死の先があります。
今日は、樹
謎多きクラゲ毒-Mysteries of Cnidarian Venom-
湘南の海岸を歩いていると、烏帽子岩に似た水色の小さいビニール袋のようなものが転がっていることがあります。
不思議な風体からつい触ってしましたい気持ちになりますが、気をつけないとそのまま病院送りになることがあるので絶対に触れないようにしましょう。
今日は、クラゲの毒についてお話していこうと思います。
湘南の海岸には、春頃から夏にかけてカツオノエボシ(Physalia physalis)というクラ
麻薬の間違い探し-Structure Diversity and Control Act of Narcotics-
突然ですが問題です。
次の画像はある物質とその類縁体の3次元構造です。それぞれどこが違っているでしょうか?
1はparahexyl(パラへキシル)、2はtetrahydrocannabinol (THC)、3はhexahydrocannabihexol(HHCH)です。
2は天然のもので、1と3は合成化合物です。
1と2は、麻薬に指定されています。
今日は、大麻の化学と関連法規についてお話をし
からだに良い脂肪酸ってなに?-Stereochemistry and metabolism of Fatty acid-
近年、健康に関する研究が進み、その過程で脂質にも種類があり健康効果についての情報が溢れています。
特に、トランス脂肪酸というのは憎き仇のようにされ、オメガ3脂肪酸が救世主のように扱われています。
ところで、そもそも同じ"脂肪酸"とつきますが何が違うのでしょうか?
今日は脂肪酸とはなんなのかというお話をしようと思います。
かなり有機化学と生化学に寄った内容になるのでご注意下さい。
Introd
菌根菌概論~アーバスキュラ菌根編~-Introduction to Mycorrhiza I: AM fungi-
「菌根菌は、土壌中から吸収したリン酸や窒素の一部をソルガムやトウモロコシへ与える代わりに、その生育や増殖に必須となる、光合成産物由来の糖や脂質をこれらの作物から受け取っている。ソルガムやトウモロコシは、菌根菌を根に定着させる過程の初期において、化合物Sを土壌中に分泌し、周囲の菌根菌の菌糸を根に誘引する。」
東京大学の2020年入学試験(生物)の試験から抜粋したものです。
ここにもう必要な話は全て
眠れぬ夜にはハンドスピナー-Hypnotics and Psychotropic-
2016年、米国で発売され日本でも2017年に輸入され大ブームとなったハンドスピナー。今ではすっかり見かけません。
化学物質にはそんなハンドスピナーに似た物質が存在します。
今日は、睡眠薬とその構造についてお話していこうと思います。
ハンドスピナーに似ているというのは、Fig.1の物質、バルビツール酸とその類縁体です。
(本記事では、わかりやすさを重視して化合物名はカタカナでの表記にしています
複雑な香りの世界-Complexity of fragrance components and signals-
ある植物の花の匂いを嗅いだとき、いい香りだと感じるかも知れません。次に別の植物の花の匂いを嗅いだとき、なんか臭い気がするなと感じるかも知れません。
しかし、もしかしたらその匂いには同じ成分が構成されているかも知れません。同じ物質なのになんでいい匂いだったり嫌な匂いだったりするのでしょうか?
今日は香りの相互作用についてお話をします。
マメコガネ(Pipilia japonica)という甲虫がいま