高山康平

eiga を撮ります。文章も書きます。現在は何者でもありません。ただの街の片隅に吹き溜…

高山康平

eiga を撮ります。文章も書きます。現在は何者でもありません。ただの街の片隅に吹き溜まった風。もくじ https://note.mu/koheitakayama/n/nf9b06849314e

マガジン

  • 『演技と身体』

    東西の哲学、解剖学、脳神経学、古典芸能(能)の身体技法や芸論を参照しながら独自の演技論を展開しています。実践の場としてのワークショップも並行して実施していきますので、そちらも是非ご参加ください。 記事は順番に読む必要はありませんので、気になるものからご覧いただけます。

  • 食べ物と思考

    食べ物を通して考えたことを書き綴ります

  • 美しく老ゆ vol.1

    美しいものは美しく枯れてゆく

記事一覧

【聞き流す募集要項】演技を学問し実践する短期コミュニティ「ソマティック映像演技研究コモンズ」第二期 参加者募集

前回の記事『演技を学問し実践する短期コミュニティ「ソマティック映像演技研究コモンズ」第二期 参加者募集』ですが、ワークショップの募集要項としては長すぎる!難しく…

高山康平
3か月前
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演技を学問し実践する短期コミュニティ「ソマティック映像演技研究コモンズ」第二期 参加者募集

 この度、「ソマティック映像演技研究コモンズ」第二期の参加者を募集します。役者だけでなく演出家・プロデューサー・脚本家・その他技術職の方など、映画制作やコモンズ…

高山康平
3か月前
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『演技と身体』Vol.53 世阿弥『能作書(三道)』を読み解く

世阿弥『能作書(三道)』を読み解く『能作書』(あるいは『三道』)は、世阿弥の中期の書で、風姿花伝の第六 花修で述べられていた書き手の心得をさらに具体的に書き記し…

高山康平
4か月前
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『演技と身体』Vol.52 反応と応答

反応と応答反応の鮮度 最近、ふと考えたことを忘れないうちに書き留めておこうと思い書くものである。 演技の中で上手く反応することが大事なのは言うまでもない。よく反…

高山康平
4か月前
2

コーヒーの上澄と従属理論

コーヒーを飲んでいて、半分過ぎたくらいから飽きがくる。 ならば、最初から半分の量にすれば良いと思うが、そうしてみてもやはり半分飲むと美味しくなくなってくる。 つま…

高山康平
5か月前
1

情に棹さして流されたい

こう急に秋めいてくるとぼんやりしてしまう。ぼんやりついでに『エドワード・ヤンの恋愛時代』という1994年の映画を観に行ってきた。 経済発展に華やぐ台北で、智に働き意…

高山康平
8か月前
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ソロボウラーの自意識問題

昨日、ふと思い立って仕事帰りにボウリングに行ってみた。もちろんソロである。 一人でボウリングに行くにも良いことと悪いことがある。 良いことは、ずっと連続して投げ…

高山康平
8か月前
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『演技と身体』Vol.51 サブテキストの活用とクオリア

サブテキストの活用とクオリア『世界は時間でできている: ベルクソン時間哲学入門』(著:平井靖史)を読んでいるのだが、すこぶる面白い。まだ読み途中なのだが、演技に敷…

高山康平
1年前
6

【食べ物と思考】一汁一菜と脱成長

土井善晴さんの『一汁一菜で良いという提案』を読んだ。 土井さんはこの本で、日々の暮らしの食事はご飯と具だくさんの味噌汁があればそれでよいと提案をしている。 パッ…

高山康平
1年前
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【読書感想文】「自閉症だったわたしへ」ドナ・ウィリアムズ著

「自閉症だったわたしへ」ドナ・ウィリアムズ著 とても心を揺さぶられる作品だった。 この本は、自閉症の当事者である著者の半生が描かれた作品で、自閉症者の精神世界を…

高山康平
1年前
5

【食べ物と思考】アワビ 混合体の美学

先日、友人と伊豆旅行に行ってきた。 本当に楽しい旅行で、言葉に尽くせないのだが、強いて一つ取り上げるならアワビだろう。いや、アワビさんと呼ぼう。 泊まった旅館の…

高山康平
1年前
2

2023年の目標は「がんばらない」に決定

正月はせっかくの休みだからやりたいことやって生産的に過ごそうと思っていたけど、正月の方がそうはさせてくれなかった。 美味しい食べ物に元気な姪っ子たち、混雑する街…

高山康平
1年前
5

食の叙景詩 12月

食べ物を味わう時、すぐ簡単に言葉にはしたくない。 けど、おいしかったものの味は覚えておきたい。 口の中でよく味わっているとやがて景色が浮かんでくる。 食事はちょっ…

高山康平
1年前
4

『演技と身体』Vol.50 内臓一元論③ 内臓と身体意識

内臓一元論③内臓と身体意識前々回の記事では内臓感覚と感情の結びつきを確認した上で内臓が無意識の領域に属することを説明した。 また前回の記事では、内臓感覚を活性化…

高山康平
1年前
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『演技と身体』Vol.49 内臓一元論② 内臓でみんなうまくいく

内臓一元論② 内臓でみんなうまくいく前回の記事では改めて感情表現における内臓感覚の重要性を確認した上で、無意識や呼吸と内臓の関係を考察した。 今回はもう少し具体…

高山康平
1年前
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【読書感想文】『溺れるものと救われるもの』『くらしのアナキズム』

プリーモ・レーヴィ『溺れるものと救われるもの』と松村圭一郎『くらしのアナキズム』とを立て続けに読んだ。 この2冊を手にとったのは偶然なのだが、一方は国家的な虐殺…

高山康平
1年前
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【聞き流す募集要項】演技を学問し実践する短期コミュニティ「ソマティック映像演技研究コモンズ」第二期 参加者募集

前回の記事『演技を学問し実践する短期コミュニティ「ソマティック映像演技研究コモンズ」第二期 参加者募集』ですが、ワークショップの募集要項としては長すぎる!難しくてわからない!というご指摘をいただきました!!

そこで、【聞き流す募集要項】を作成しました!

募集要項の内容を音声で読み上げ、解説しております!
お散歩やランニング、筋トレや料理に掃除のお供に、聞き流しながら募集要項の内容をご確認いただ

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演技を学問し実践する短期コミュニティ「ソマティック映像演技研究コモンズ」第二期 参加者募集

演技を学問し実践する短期コミュニティ「ソマティック映像演技研究コモンズ」第二期 参加者募集

 この度、「ソマティック映像演技研究コモンズ」第二期の参加者を募集します。役者だけでなく演出家・プロデューサー・脚本家・その他技術職の方など、映画制作やコモンズに関心のある方は是非ご検討ください。
 週一回のワークショップを活動の中心としながら集まったメンバーの特性を元に映画制作の新しい可能性について考え実践していきます。
 以下、「ソマティック映像演技研究コモンズ」について説明していきます。

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『演技と身体』Vol.53 世阿弥『能作書(三道)』を読み解く

『演技と身体』Vol.53 世阿弥『能作書(三道)』を読み解く

世阿弥『能作書(三道)』を読み解く『能作書』(あるいは『三道』)は、世阿弥の中期の書で、風姿花伝の第六 花修で述べられていた書き手の心得をさらに具体的に書き記したものである。(花修の内容はVol.27世阿弥『風姿花伝』を読み解く② 実用編を参照)
主に書き手向けのものと思われるが、書き手だけでなく役者が留意すべきことも読み取れるのではないかと思う。基本的には能の場面展開を前提とした内容ではあるが一

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『演技と身体』Vol.52 反応と応答

『演技と身体』Vol.52 反応と応答

反応と応答反応の鮮度

最近、ふと考えたことを忘れないうちに書き留めておこうと思い書くものである。
演技の中で上手く反応することが大事なのは言うまでもない。よく反応するためには、相手をよく聴くこと、相手に十分な注意を払うこと。当然このようなことが思い浮かぶのだが、何かそれだけでは十分ではないような気もする。
というのも、相手に注意を払っている時、初めから自分が何に反応をするかを決め込んでしまってい

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コーヒーの上澄と従属理論

コーヒーを飲んでいて、半分過ぎたくらいから飽きがくる。
ならば、最初から半分の量にすれば良いと思うが、そうしてみてもやはり半分飲むと美味しくなくなってくる。
つまり、上澄が美味しいということだ。
最初の半分の美味しさは残りの半分に支えられている。
なんだか従属理論みたいだな、と思った。
残りの半分を苦い顔して飲み干す。

情に棹さして流されたい

こう急に秋めいてくるとぼんやりしてしまう。ぼんやりついでに『エドワード・ヤンの恋愛時代』という1994年の映画を観に行ってきた。
経済発展に華やぐ台北で、智に働き意地を通そうとしながらも結局は情に流されてしまう男女の群像劇だ。
映画館を出て新宿の街を歩いていて、人々が情に流されていた時代は終わってしまったのかもしれないとしんみり思った。
今はみんながみんな智に働こうとあくせくしているように見える。

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ソロボウラーの自意識問題

昨日、ふと思い立って仕事帰りにボウリングに行ってみた。もちろんソロである。

一人でボウリングに行くにも良いことと悪いことがある。
良いことは、ずっと連続して投げ続けることができるというところだ。昔から家族や友人とボウリングに行っても、終始自分が投げることばかりを考えていて、他人が投げている時間がじれったくて仕方がなかった。
他人がストライクを取ったらやっぱり「おお!」とか言ってハイタッチをするし

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『演技と身体』Vol.51 サブテキストの活用とクオリア

『演技と身体』Vol.51 サブテキストの活用とクオリア

サブテキストの活用とクオリア『世界は時間でできている: ベルクソン時間哲学入門』(著:平井靖史)を読んでいるのだが、すこぶる面白い。まだ読み途中なのだが、演技に敷衍できそうな重要な示唆があったので、思いついたままに書こうと思った次第である。

サブテキストの有効性と弊害

〈役の設定〉について僕は従来から、脚本に書かれていない設定は不要であるという立場を取ってきた。物語とは明らかに人生や生活の抜粋

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【食べ物と思考】一汁一菜と脱成長

土井善晴さんの『一汁一菜で良いという提案』を読んだ。

土井さんはこの本で、日々の暮らしの食事はご飯と具だくさんの味噌汁があればそれでよいと提案をしている。
パッと聞くと、ずいぶんズボラな提案だなと思うのだが、読んでみるとなかなか奥深い。

学校の家庭科の授業では「一汁三菜」と習ったが、あれは戦後に栄養学の考えを取り入れて作られた型であるらしく、日本食には元々主菜とか副菜とかいう区分はないのだそう

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【読書感想文】「自閉症だったわたしへ」ドナ・ウィリアムズ著

【読書感想文】「自閉症だったわたしへ」ドナ・ウィリアムズ著

「自閉症だったわたしへ」ドナ・ウィリアムズ著

とても心を揺さぶられる作品だった。
この本は、自閉症の当事者である著者の半生が描かれた作品で、自閉症者の精神世界を内側から描いた世界で初めての作品であった。
3歳の頃に本当の自分を箪笥に閉じ込めてから20年以上の時を超えて再び自分と再会するまでの間に彼女の精神がどのように働いていたのかが、細かく書かれているのだが、本書は元々は出版するつもりがなく、た

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【食べ物と思考】アワビ 混合体の美学

【食べ物と思考】アワビ 混合体の美学

先日、友人と伊豆旅行に行ってきた。
本当に楽しい旅行で、言葉に尽くせないのだが、強いて一つ取り上げるならアワビだろう。いや、アワビさんと呼ぼう。

泊まった旅館の晩ご飯にアワビさんの酒蒸しが出た。
小さな鍋に仰向けに寝かされたアワビさん。お酒を注がれるとくすぐったそう身体をよじらせる。健気なものである。まもなくそこが灼熱の地獄に変わるとも知らずに。
ちなみに死後落ちる地獄にも色々な種類があるらしい

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2023年の目標は「がんばらない」に決定

2023年の目標は「がんばらない」に決定

正月はせっかくの休みだからやりたいことやって生産的に過ごそうと思っていたけど、正月の方がそうはさせてくれなかった。
美味しい食べ物に元気な姪っ子たち、混雑する街並み。
そういえば去年もそんな感じだった。なんか逆に疲れが溜まった気すらする。
そこで今朝は久しぶりに瞑想をしてみた。
心の奥底に疼いていた感情の澱が浮き上がってきて少し苦しい。それが通り過ぎると、ややすっきりした気分と諦念のようなものが降

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食の叙景詩 12月

食べ物を味わう時、すぐ簡単に言葉にはしたくない。
けど、おいしかったものの味は覚えておきたい。
口の中でよく味わっているとやがて景色が浮かんでくる。
食事はちょっとした旅に変わる。
そんな12月の味わいの旅の記録。

①フヅクエ 下北沢店 で本を読みながら飲んだグリューワイン

月の明るい夜 広葉樹の浅い森
月影が木々の輪郭を撫で 肌合いが浮かび上がる
とりわけ大きな木が1本
耳を澄ますとカサカサ

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『演技と身体』Vol.50 内臓一元論③ 内臓と身体意識

『演技と身体』Vol.50 内臓一元論③ 内臓と身体意識

内臓一元論③内臓と身体意識前々回の記事では内臓感覚と感情の結びつきを確認した上で内臓が無意識の領域に属することを説明した。
また前回の記事では、内臓感覚を活性化させるための身体の使い方などについてお話した。
今回はより積極的な内臓への働きかけを考える。

内臓反応をいかに方向づけするか

内臓感覚が無意識の感覚なのだとすると、そこを意識的に動かすことは難しいし、狙った感情に簡単になれちゃうのもちょ

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『演技と身体』Vol.49 内臓一元論② 内臓でみんなうまくいく

『演技と身体』Vol.49 内臓一元論② 内臓でみんなうまくいく

内臓一元論② 内臓でみんなうまくいく前回の記事では改めて感情表現における内臓感覚の重要性を確認した上で、無意識や呼吸と内臓の関係を考察した。
今回はもう少し具体的に内臓感覚を研ぎ澄ます方法をまとめてみよう。

内臓中心に姿勢を考える

内臓の感受性が感情の豊かさと深く関連するならば、望ましい状態は物理的に余計な負荷や制限が内臓にかかっていないような状態である。一言にしてしまえば、姿勢正しく力みのな

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【読書感想文】『溺れるものと救われるもの』『くらしのアナキズム』

【読書感想文】『溺れるものと救われるもの』『くらしのアナキズム』

プリーモ・レーヴィ『溺れるものと救われるもの』と松村圭一郎『くらしのアナキズム』とを立て続けに読んだ。
この2冊を手にとったのは偶然なのだが、一方は国家的な虐殺を生き延びた経験の考察の書であり、他方は国家の存在そのものを問い直す書である。
2冊を読み通すと権力を志向してしまう人間の性について考えさせられる。

プリーモ・レーヴィは以前に『周期律』という非常に美しい短編集を読んだことがあった。自伝的

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