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77.テルミン100年を記念して
テルミンを演奏して何年になるだろう。
シンセサイザーの生みの親であるボブ・モーグ博士が、1996年にEtherwaveという名で、コンパクトで存分な性能を備えたテルミンをbig Briarブランドから発売したのを聞きつけた。注文したのは、翌年あたりだろうか。製造番号は50番だった。
テルミンは、ソビエトのテルミン博士が100年前に発明した世界初の電子楽器である。当時ニューヨークでも話題となり
76.困難をよじのぼる
この連載のテーマのひとつが移動である。それがこのコロナ禍にあって移動を制限されている。じっとしているのも悪くはないが、どこかへ行きたいとうずうずするのは性分だろう。
ドイツのメルケル首相は、東ドイツ出身だけに、ベルリンの壁の崩壊でようやく勝ち取った「移動の自由」を、あえて政府が制限しなくてはならない苦悩を国民に寄り添う声で訴えていた。
ぼくは1988年に、世界史の変貌をこの目でみたくて、ド
75.コルネットのくしゃくしゃ
コルネットの修理に銀座に行った。コルネットはヤマハ製、ヒカシューがデビューした頃、購入したので、かれこれ40年近く経つだろうか。ベルがつぶれ、三ヵ所がへこみ、バルブ近くのハンダが弛んでいた。コロナのおかげで楽器の修理の時間ができたともいえる。
1989年の3月に、作曲家でピアニストの三宅榛名のイベント「飛行船日誌vol3 偶発バンド」に、ぼくは参加した。ゲストは他にトランペッターの日野皓正。こ
74.「天女の雪蹴り」にはじまる
裾野には我が家からクルマで約40分くらいで行けるのだけれど、行くのは初めてだった。今年の春に第一回大岡信賞を受賞したことで、静岡連詩の会という大岡信がはじめたイベントに参加することになった。
連詩とは複数人で短い詩をリレーのように連ねていく創作現代詩で、連歌・連句の美学を下敷きにしてはじまった。21回目だという。
大岡信の後を継いで、2009年から「さばき手」をつとめるのは、詩人の野村喜和夫
73. とんでもない声を遠隔で、5人はいまも歌っている。
Five Men Singing が帰ってくる。
だれにも望まれていないのに。
みんなが知っている声の怪物たち。
スーパーな声の共演がまた実現する。
ドイツ、オランダ、英国、カナダ、そして日本から回線でつながり、
この度はオンライン上で。
Five Men Singingは、2003年カナダのFIMAVに出演するために結成した。メンバーは、フィル・ミントン、ヤープ・ブロンク、デビッド・モス、
72.リスボンから雅なる
前号で、大垣のIAMASを舞台に、フランスやオーストラリアと回線をつなげて、音楽を共有するISDNコンサートをしたが、うまくいかなかったことを書いた。それは1996年のことである。24年も前のことだが、妙な興奮をしたものだ。世界を繋げることは、以前に較べて格段に容易になった。
いまは、光回線や5Gという規格で、大規模なデータ通信が可能になった。コンサートの題名にもなったISDN(アイエスディー
69.エストニアで天手古舞
さて、前号からの続きです。ヒカシューのメンバーはエストニアのタルトゥでの公演前に立ち往生。コロナ禍の政府対応がはじまったようなのだ。
スタッフのTiuuさんは、電話でいろいろ確認をしている。「なんだかパニックなのよ」政府から緊急事態宣言が出て全ての公演が禁止になるようだという。しかしそれは3月13日からということだったので、お客さんもまばらにやってきて、ギリギリ間に合ってライブを行うことにな