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【書評】『自由研究には向かない殺人』『優等生は探偵に向かない』ホリー・ジャクソン(小説)
(作品の内容を含みますので、少しでもネタバレしたくない方は
ぜひ作品を読んでからお越しください)
真実を知ることは痛みを伴う。
時に大きな代償を払うことになる。
本書の主人公、高校生のピップ(ピッパ・フィッツ=アモービ)は、自分の住む町、
イギリスはリトル・キルトンで起きたある事件に疑いを持ち、調べ始める。
彼女は正義感が強く元気いっぱいで恐れ知らず、と言うかかなりむこうみずで
怪しいと思っ
【一首評】第35回歌壇賞受賞作・次席・候補作品より
『歌壇』(本阿弥書店)にて2024年2月号~4月号までの3ヵ月間、作品評を担当させていただきました。
最終回はちょうど歌壇賞の発表号にあたり、受賞作や次席、候補作品からも何首か評を書かせていただいたのですが、
文字数の関係もあり、残念ながらすべての作品に触れることができませんでした。
そこで今回、一首ずつにはなりますが、掲載された連作すべての評を書いてみたいと思います。
(作品評で取り上げた連作に
【書評】『日々に木々ときどき風が吹いてきて』川上まなみ歌集
まず街の静かなことを書いてゆく日記始めの夜やわらかく
歌集の巻頭歌。日記始めであると共に、歌集のオープニングでもある。
「夜がやわらかい」という捉え方が作者自身の柔軟性をも表すようだ。
これから始まる一冊の、その全体のトーンを表現するような一首で、冒頭の歌としてとても素敵だと思う。
この歌集は、教師として働く職場詠や、恋人との関係性が表れる歌、家族の歌など、等身大の生活を静かなトーンで詠う。
【書評?】『街とその不確かな壁』村上春樹(小説)
(作品の内容を含みますので、少しでもネタバレしたくない方は
ぜひ作品を読んでからお越しください)
まず君に伝えておいた方がいいだろうと思うのは、
僕が今、村上春樹の小説『街とその不確かな壁』を読み終えたばかりで、
彼の文体の癖が少々この手紙に影響しているだろうということだ。
最後のページを閉じたのはほんとうについさっきのことで、
まだ彼の文体が僕を内側からほのかな星の光のように温めてくれている。