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彼女はフランシスアルバートを味わったのか
彼女は僕が出会った中で最も酒が強い女だった。
とにかく強い酒を好み、それを最後の一口まで味わう彼女とある夜にバーカウンターで隣合わせたのを覚えている。
僕がジントニックとギムレットを味わう間に、彼女はロングアイランドアイスティーからはじまり、マンハッタン、アースクェック、スレッジハンマーを味わい尽くし、一息ついた後にフランシスアルバートをオーダーした。
少し酔った様子の彼女は、そのグラスを傾
今夜、すべてのバーで
1度だけしか行くことがなくとも素晴らしいバーがあれば、何度も行きたくなる大好きなバーもある。
同じく1度だけしか読んでいない素晴らしい小説もあれば、何度も読み返したくなる小説がある。
中島らもの『今夜、すべてのバーで』は自分にとってそんな小説だ。
小説を再読することの良さは、物語を通じて以前読んだときの自分との変化に気付けることだろう。
初めてこの小説を読んだときの自分は、酒を飲むことだけ